【よい眠り】のためにやるべきこと、やってはいけないこと
いい眠りにつくには、意識的に眠れるような行動をして、睡眠を妨げる無意識の行為をやめること。それだけで、睡眠力は格段に上がる!よい眠りにつくコツを専門家に教えてもらった。
就寝から4時間以内に深い睡眠をとるのが大切
眠りには体を休息させる「レム睡眠」と、脳を休める「ノンレム睡眠」があり、就寝中は、レム睡眠→ノンレム睡眠というサイクルが繰り返されている。
「ノンレム睡眠の中で、もっとも深く脳が休息しているステージを“深睡眠”といいます。これは、眠り始めから4時間以内に発生し、この眠りの間はより深く、体や脳を休められます」(睡眠や呼吸器専門のクリニック『RESM新横浜』院長・白濱隆太郎さん・以下同)
その効果は絶大で、就寝から4時間以内に深睡眠が充分とれれば、疲労の80%は回復するといわれている。つまり、睡眠の悩みを抱える人は、この深睡眠がしっかりとれていない可能性が高いのだ。
→“早寝早起き““1日8時間”…思い込みが不眠の原因!?意識改革で正しい眠り方を
深睡眠2つのポイント
「深睡眠を得るには、2つのポイントがあります。
1つ目は、内臓など内部の体温である“深部体温”。
これは朝上昇し、夜にかけて低くなる。体は深部体温が下がると眠くなるという仕組みを持っています。
2つ目は、交感神経と副交感神経から成り立つ“自律神経”。
入眠しやすい状態に導くには、夕方から夜にかけて交感神経の働きを少しずつ鎮め、休息やリラックス時に活発になる副交感神経を優位にしていけばいいのです」
深部体温と自律神経をよい状態にするために、次の8つを心がけよう。
OK:湯船に首までつかる
冬は40℃くらいの湯に首までつかろう。「首から肩にかけて通っている頸動脈などの太い血管が温まるため、効率よく深部体温を上げられます。また、首や肩のコリがほぐれ、血流の改善にもつながります」。
1回の入浴でトータル15分程度、湯につかるといい。炭酸入浴剤は体を効率よく温めてくれるので、時間のない時にもおすすめだ。寝る1時間半前に入浴すれば、ベッドに入るころには深部体温がスムーズに下がり、入眠しやすくなる。
OK:風呂上がりに"腕を回すだけ体操"を
【1】手を軽く握り、わきを開き、両ひじをできるだけ持ち上げる。
【2】肩甲骨を背中の中心に寄せるイメージで、両腕を後ろに向かってそのままゆっくりと回す。この動作を風呂上がりなどに5~6回繰り返す。
「腕と肩甲骨には深部体温を上げる褐色脂肪細胞が多く存在するため、ストレッチの刺激で深部体温を上げられます」。ただし、腕が上がりにくいなど違和感があったら無理をしないこと。ストレッチを行う際には「これをやったら眠れる」という意識付けをすると、より眠りに入りやすい。
OK:寝る寸前にする"足首曲げ深呼吸"
布団の中で寝る寸前に行うストレッチ。
【1】ゆっくり1、2、3と心の中で数えながら鼻から大きく息を吸い、足首をグーッと手前に曲げる。
【2】心の中でゆっくり5つ数えながら、口からフ~ッと静かに息を吐き、足首を元の位置に戻す。これを1分間繰り返す。
「足首に力を入れて緩める動作を繰り返すと、ふくらはぎの血流が増え、熱を体外に逃がす働き(熱放散)が活発になり、深部体温がスムーズに下がります」。また、ゆっくりとした呼吸は副交感神経を優位にする。
OK:ゆったりと深い呼吸を
副交感神経を優位にするには、"鼻から吸って口から吐く"やり方で、ゆっくりと深呼吸をするのが唯一の方法。簡単なのでぜひ取り入れたい。
「ただ、呼吸だけの時間を設けてもなかなか続きません。寝る前に好きな音楽を聴きながらストレッチをしたり、雑誌を読むなどリラックスしたタイミングで行うと習慣になりやすいでしょう」。
睡眠は緩やかな坂を下るように、ゆったりとした準備が功を奏す。
OK:頭のメモはアウトプットを
「あ、○○さんに連絡しなきゃ」「そうそう、あれを忘れちゃいけない」「あのメールに返信しておかないと」などと頭の中が“明日のメモ”でいっぱいだと脳が休まらず、眠気が飛んでしまう。
「あれもこれもと頭に浮かぶ時は1回起きて、手帳や付箋に書き込んで情報をアウトプットしましょう。すると、スッキリして格段に眠りやすくなります。睡眠時には仕事や用事は忘れて、ボーッと楽しいことを考えましょう」。
NG:防寒のために靴下を履くのは逆効果
寒いからと靴下を履いて寝る人がいるが、それは安眠の妨げになる。
「眠たくなると手足が熱くなるのは、血液を手や足などの末端部分に集め、それを外気によって冷やすことで深部体温を下げるという体のメカニズム。靴下などで手足を覆ってしまうと、熱を放散できず、眠気が起きにくいうえ、寝苦しさも感じます」。
長袖・長ズボンのパジャマは、冷えやこむら返りの予防になるのでおすすめ。素材は水分吸収のよい綿がおすすめだ。
NG:平日のネットサーフィンはほどほどに
スマホを眺めるとブルーライトによってメラトニンの分泌が妨げられるだけではなく、ニュースなどに興味がわき、交感神経が活発になって寝付けなくなる。「あるニュースが気になったのに、その下にある別の話題も気になって…と際限がない。ネットは次々に見たくなるネタの宝庫なのですが、今読まなくてもいいことがほとんど。貴重な睡眠時間を費やしていいのか、と考えてみましょう」。
週末のゆったりした時のネットサーフィンは否定しないが、忙しい平日には避けた方が安眠できる。
NG:午後3時以降の昼寝
15~20分程度の昼寝は日中のパフォーマンスを高め、夜のうたた寝防止に効果がある。だが、午後3時以降に30分以上ウトウトしてしまうと不眠につながる。
「コップに水がたまるように、眠気もたまっていきます。しかし、日中に昼寝やうたた寝をしてしまうと、夜になって眠気が不足してしまい、眠りにくくなるのです」。
また、昼寝で深く眠ると日中に深部体温が下がってしまい、ボーッとするなど日中の活動に支障をきたす。
それでも眠れないなら薬に頼ろう!
睡眠薬と聞くと依存症になったり、睡眠薬なしでは眠れなくなるのでは、という不安がつきまとうが、「適切な用量を正しい方法で使っている限り、依存症になる心配はない」と、日本大学医学部精神医学系主任教授の内山真さんは言う。
だが、のみ続けて、効かなくなることはないのだろうか?
「薬が効かなくなるいちばんの原因は生活習慣です。睡眠を阻害するような生活を送っていても、薬をのめば眠れて当然と考える人がいますが、決してそんなことはありません。薬はあくまで眠りをサポートするものなのです」
睡眠薬は内科でも処方してもらえるが、体内時計に働くものや、覚醒する神経のスイッチを切るようなタイプの薬も新しく発売されている。眠れないなら、自力でなんとかしようとするだけではなく、睡眠外来などの専門医に相談する方法もある。
教えてくれた人
白濱隆太郎さん/睡眠や呼吸器専門のクリニック『RESM新横浜』院長
イラスト/スヤマミヅホ
※女性セブン2019年2月21日号
●高反発マットレスはよりよい眠りに好影響!「睡眠負債」提唱らの共同研究結果