介護老人保健施設(老健)とは?費用や入所基準、メリット・デメリットを解説【社会福祉士監修】
「介護老人保健施設」(老健)は、介護が必要なかたが病気やケガで入院し退院した後、一定期間入所し在宅復帰を目指しリハビリなどを行う公的な施設です。入所条件、特徴や活用法などを解説。実際の入所者の声やメリット・デメリットも紹介します(監修/社会福祉士・ライトさん)。
介護老人保健施設とは?
「介護老人保健施設」は、略して「老健(ロウケン)」とも呼ばれる公的な施設。病気やケガなどで入院し、退院してすぐに自宅で生活することが難しい高齢者が、一定期間入所して在宅復帰を目指すための施設です。
「介護老人保健施設」(以下「老健」)は、介護認定の要介護1以上のかたが入所対象となっており、介護サービスを受けたり、医師の指示のもと看護や介護ケアや、リハビリなどを行ったりします。
入所できる期間は、原則として3~6か月。短期入所(ショートステイ)や通所リハビリを行っている施設もあります。
「老健」はこんな人におすすめ!
「老健」は、病院から退院してすぐ自宅での生活に不安を感じているかたにおすすめです。医師や看護師など手厚い医療体制や専門スタッフによるリハビリなどにより、在宅復帰を目指します。
また、公的な施設のため、比較的リーズナブルに利用することができます。
・施設の利用料金を抑えたい人
・退院後の生活に不安を感じている人
・手厚い医療ケアを受けたい人 など
「老健」の入所条件
「老健」は、要介護1以上の自宅での生活が難しい65才以上が対象です。
40才以上64才以下のかたでも、特定疾病により要介護認定を受けていれば入所対象となります。
なお、「老健」は住民票がある自治体以外でも申し込むことができます。
入所期間は、原則として3か月、最長でも6か月が目安となっています。
施設の方針により違いはありますが、入所3か月後に審査があり、継続が認められた場合は最長6か月までいることができます。
基本的に自宅に帰ることを目標とした施設のため、6か月を過ぎて帰宅が難しい場合は、他の介護施設や病院などに移ることが必要となりますが、実際には、「老健」の平均滞在日数は299日(平成25年度)※1となっており、6か月を超えて滞在するケースも。
また、「老健」退所後の状況※でもっとも多いのは「病院」で36.6%、次いで多いのが「家庭」で33.1%となっています。
※1厚生労働省「介護老人保健施設」第183回(R2.8.27)。
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000672494.pdf
■介護老人保健施設 退所者の状況
医療機関…36.6%
家庭…33.1%
死亡…12.0%
介護老人福祉施設…8.2%
その他…4.2%
介護老人保健施設…2.5%
その他の社会福祉施設…2.3%
不詳…1.2%
「老健」のサービス内容
「老健」で提供されるサービスは、主に介護サービス、看護・医療ケア、機能訓練です。医師が常勤しているので、特別養護老人ホーム(以下、特養)などに比べると医療ケアが充実しています。
また、認知症のかたも入所が可能で、認知症ケアに特化した施設もあります。軽度の認知症のかたから利用できる「認知症短期集中リハビリテーション」を実施している施設もありますので、施設に相談してみるといいでしょう。
・介護サービス
食事、入浴、排泄ケア等、介護が必要なかたの状態に合わせた介護サービスが提供されます。
・看護、医療ケア
介護士・看護師のほか、医師が常駐しているため、他の施設よりも医療ケアが充実しています。インシュリン注射・たんの吸引・経管栄養などの医療ケアに対応している施設もあります。
ただし、医師や看護師は24時間常駐でない場合もあるため、夜間の対応などは施設に確認しておきましょう。
・リハビリ(機能訓練)
理学療法士や作業療法士などの専門スタッフの指導下で、運動機能や日常生活の動作などの改善を目的としたリハビリが行われます。計画書に基づき個別にメニューが組まれ、そのかたに合った機能訓練をします。
看取りも対応している?
入所できる期間は原則最長で6か月となっているため、入所期間に病気が進行したり、重篤な状態になったりした場合は、病院などへ移ることになります。
ただし、医師の判断のもと、痛みなどを和らげ穏やかな最期を迎えるための「ターミナルケア」を実施し、看取りまで行う施設もあります。
「老健」の設備
・居室
「老健」は4人部屋の多床室が一般的で、個室や2人・4人部屋、ユニット型タイプの施設もあります。
4人以下の多床室の1人あたりの居室面積は8㎡(約5畳)以上、ユニット型個室などの個室は10.65㎡以上と定められています。
また、居室にトイレがない場合は、同じフロアにトイレが設置されています。
備え付けの物は施設や居室タイプによって違いますが、4人部屋の場合、主にリクライニングベッド、ナースコール、エアコン、カーテン、棚、共同で利用する洗面所などがあります。
また、必要に応じて床上センサーマットが利用できます。
居室以外にも以下のような共有スペースの設置が義務づけられています。
・リビング
リビングでは共同で食事をしたり、談話をしたりレクリエーションなどをします。
・浴室
浴室は、一般的なお風呂のほか、入浴介助が必要なかたのための機械浴などを備えています。
・機能訓練室
各種訓練機器が完備されています。理学療法士又は作業療法士の指導下における運動機能やADL(日常生活動作)の改善などを中心としたリハビリを行います。
・診察室
医師が常勤しているので、診察室があります。
「老健」の人員基準
「老健」では以下の基準で医師や職員が配置されています。
・看護師または介護職員:入所者3人に対し1人
・医師:常勤1人以上。入所者100人に対し1人以上
・薬剤師:実情に応じた適当数(300人に1を標準とする)
・理学療法士、作業療法士または言語聴覚士:100人に対しいずれか1人以上
・栄養士:入所定員100人の場合、1人以上
・介護支援専門員:1以上(100人に1人を標準とする)
※参考/厚生労働省「介護老人保健施設」(第144回(H29.8.4)「介護老人保健施設の基準」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174012.pdf
「老健」の費用と内訳
・入居一時金:0円
老健は入居一時金がかからないので、民間の有料老人ホームよりリーズナブルです。
・月額利用費:約6万円~17万円前後
居室や収入、要介護度によって変わります。
【内訳】
・介護サービス費:介護保険が適用となるため、そのかたの収入や要介護度によって、費用は異なります。
・実費負担:居住費、食費、理美容代、日用品費など。おむつ代はかかりません。
厚労省の資料※によると、要介護度別の月額利用料の平均額は、約28,000円~約35,000円前後。要介護4の利用者が27.8%と最も多くなっています。
また、実費負担分※については、1か月の居住費は、多床室や個室など部屋のタイプにもよって異なりますが、約1万~約6万円と幅があります。また、食費は約4万2000円となっています。
※2厚生労働省「施設サービス別にみた要介護状態区分別受給者数の割合」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/21/dl/06.pdf
※3厚生労働省「令和元年度改定における食費・居住費の基準費用額の対応」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000698298.pdf
食費や居住費を安く抑える制度も
食費や居住費など実費負担分については、「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)制度」を利用することで「食費」と「居住費」を安く抑えることができます。
→「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)制度」介護施設の食費が6万円も安くなるのはどんな人?|知らないと損する介護保険の話
「老健」と「特養」は何が違うの?
「老健」と「特養」の大きな違いは、入所期間や医療体制です。
「老健」も「特養」も在宅復帰を目指す施設という点は共通ですが、「特養」は原則として長期で入所でき、入所条件が要介護3以上と介護度の高いかたが多く、最期まで過ごす施設として選ぶのが一般的。
一方、「老健」は短期入所が原則なので、リハビリなどを終えて自宅で過ごせると判断された場合は退所の必要があります。
また、「老健」は、「特養」よりも医療体制や機能訓練(リハビリ)のサポート体制が手厚いのが特徴です。
→特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や入居条件、申し込み方法「早く入居するコツ」も解説
「老健」への入所までの流れ
Step1:介護認定を受ける
Step2:要介護度1以上であれば、以下のいずれかで入所を申し込む
・「老健」に直接申し込む
・在宅介護の場合は、ケアマネジャーに相談して申し込む
・入院中の場合は、病院の医療ソーシャルワーカーに相談して申し込む
Step3:面談
Step4:書類提出
Step5:入所判定
Step6:契約して入所
「老健」の活用法と注意ポイント
親の介護経験があるR60記者が取材をもとに「老健」の活用方法をまとめたのでご紹介する。
・介護者の休養も兼ねて「ショートステイ」を活用
「老健」は短期間の利用(ショートステイ)が可能なので、在宅介護中のかたが一時的に入所することもできます。在宅介護で疲弊しないように上手に活用するのがおすすめ。
「認知症の母を在宅介護していてふと自分自身が疲れて行き詰まっていました。ケアマネジャーに相談して母を『老健』に1週間ほど入所させていただきました。1週間は介護を思い切ってお休みしてリフレッシュ。たまった家事や自分の用事を済ますことができました」(東京都・50代女性)
※ショートステイは連続して30日まで利用でき、部屋のタイプや所得などによって利用料金は変動します。
・退院後のリハビリやデイケアを活用
退院していきなり自宅に戻るのは危険なことも。老健は無理なく日常生活が送れるようにリハビリ機能回復や訓練をする場として活用できる。
「入院していた母に退院許可が出たので本人の強い希望で自宅に帰りました。しかし、入院生活で足腰が弱っていたため、家の中で2度の転倒。在宅介護がさらに大変になってしまいました。
後から『老健』の存在を知ったのですが、病院からすぐに自宅に戻るのではなく、『老健』で歩行練習などのリハビリをすればよかったと後悔しています」(神奈川県・60代女性)
「老健」は通所リハビリ(デイケア)も実施しているので、在宅介護の場合は併用するという活用方法も。ケアマネに相談してデイケアでリハビリ訓練を受けることを検討するといいでしょう。
・薬が理由で老健の入所を断られるケースも
「老健」で注意すべきなのは、医療行為は医療保険ではなく介護保険内のものなので、重い病気や検査などする場合は、退所を余儀なくされるケースも。
また、医療費は包括払いなので、入所中は高額な薬は処方されないなどのデメリットがあります。
「80代の母が入院先の病院から『老健』へ入所相談をした際、これまで服用している薬がその『老健』では処方できないという理由で入所を断られました」(東京都・50代女性)
このように服用していた薬が原因で入所できないというケースも。医療行為や薬の服用について、入所前に相談することが大切です。
※プライバシーに配慮し一部表現を変えています。
監修者
社会福祉士・ライトさん
【監修】
地域包括支援センターの社会福祉士として勤務。Instagram「ライト@介護保険のスペシャリスト」として情報を発信し、2万人を超えるフォロワーに支持されている。介護保険サービスの活用から、高齢者施設の解説など、スライドを駆使しながらわかりやすく伝えている。Instagramでの2年間の集大成として『世界一わかりやすい介護保険サービスの教科書』と『世界一わかりやすい介護保険サービスの解説動画』を2023年9月2日に販売。https://www.instagram.com/light_kaigo/?hl=ja
取材・文/本上夕貴 構成/編集部 イラスト/イメージマート
「老健」のメリット・デメリット
「老健」のメリット・デメリットについて、介護職員として特養勤務経験があり、著書に『大往生したいなら老人ホーム選びは他人にまかせるな!』(光文社新書)がある作家の岡本類さんに聞いた記事から、ピックアップして紹介する。
・「老健」の実情 「特養」待ちの人で溢れている!?
特養と同じく介護保険が適用され、比較的安価に入所できる老健。本来の目的は自宅に戻るためのリハビリ施設だが、実際には「特養」待ちの人で溢れているという。介護に関する著書も多い作家の本岡類さんは、こう語る。
「原則入所は6か月程度なんですが、施設によっては2年以上入所しているという人も。
また、老健同士を行ったり来たりすることで、2年、3年と自宅に戻らず特養待ちをする人もいるのが現状。ただし、あくまで長期入所を目的とした施設ではないので、入れば安心というわけにはいきません」(本岡さん)
・メリット
安い費用で入所可能。そもそも病院から自宅に戻るための介護施設なので、機能訓練も受けられる。介護費用なども費用に含まれているため、余分なお金がかからない。
・デメリット
原則6か月程度の利用で、長期入所できない。入所期間中は老健の常勤医の指示に従うため、普段のかかりつけ医に診てもらえないことも。
初出/女性セブン
→オリジナル記事「老健、ケアハウス、サ高住どれが入りやすい?利点、欠点は?専門家が解説」