サ高住「サービス付き高齢者向け住宅」とは?費用や入居条件、サービスを解説【専門家監修】
サービス付き高齢者向け住宅は、「サ高住」とも呼ばれる高齢者向けの住まいのこと。この記事では、「サ高住」の読み方、入居条件、種類、特徴などについて解説。老人ホームと何が違うの? という素朴な疑問や、実際の入居者が明かすメリット・デメリットなど「サ高住」の基本をわかりやすく、丁寧にご紹介します(監修/社会福祉士・ライトさん)。
サービス付き高齢者向け住宅とは?「サ高住」の読み方は?
「サービス付き高齢者向け住宅」(以下「サ高住」)は、高齢者が安全に暮らせるバリアフリーの賃貸住宅のこと。
「サ高住」は「さこうじゅう」と読みます。「サービス付き高齢者向け住宅」の略称で、「サ付き」とも呼ばれることもあります。
「サ高住」は、一般の住宅と同じように自由度の高い生活ができ、安否確認や生活相談などのサービスが受けられます。
厚生労働省※によると「食事やひとり暮らしの不安などを感じている高齢者のかたにとって、必要な支援を受けながら、ご本人らしい暮らしを実現できる住まい」となっています。
※令和3年度 厚生労働省 老人保健健康増進等事業「サービス付き高齢者向け住宅等における適正なケアプラン作成に向けた調査研究」
https://www.yurokyo.or.jp/contents/pdf/3861-5
「サ高住」とは?こんな人におすすめ
「サ高住」は、「まだ本格的な介護は必要ではないけど、もしものときに頼れるサービスがあって、安心して暮らしたい」という高齢者におすすめです。
■こんな人におすすめ!
・自立した生活が送れる、または要介護2くらいまでの人
・ひとり暮らしは不安だけど自由に生活したい
・困ったときにすぐ助けが欲しい
「サ高住」は有料老人ホームと何が違うの?
「サ高住」と一般的な介護付有料老人ホーム(以下「有料老人ホーム」)の違いは、大きく分けてふたつ。「契約方式」と「生活スタイル」が異なります。
・契約方式の違い
「サ高住」は、一般的な賃貸住宅と同じように月々の家賃、管理費、敷金を支払う「賃貸借契約」。住宅部分に関しては賃貸契約を結び、介護サービスに関しては別途契約をする必要があります。
「有料老人ホーム」は「利用権方式」となっていて、居室や共用施設を利用する権利と、介護サービスや医療を受ける権利を得ることができます。
・生活スタイルの違い
「サ高住」は、一般の家と変わらず、自由度の高い生活を送ることができます。
「有料老人ホーム」は、扉が施錠されているなど自由に出入りすることはできないのが一般的。また、食事やリハビリなど1日のスケジュールがある程度決められているケースが多いといえます。
サ高住と住宅型有料老人ホーム(住宅型)を比較してみましょう。
なお、有料老人ホームには利用者にあった介護サービスを選ぶ「住宅型」と要介護度に応じた介護サービスが定額の「介護付」があります。
表参考/令和3年度 厚生労働省 老人保健健康増進等事業「サービス付き高齢者向け住宅等における適正なケアプラン作成に向けた調査研究」
https://www.yurokyo.or.jp/contents/pdf/3861-5
「サ高住」のタイプは「一般型」と「介護型」の2種類
「サ高住」には、「一般型」と「介護型」の2種類があります。
「一般型」は基本的に自立した生活が送れるかたや、介護度の低いかたを対象としています。介護が必要になった場合は、外部の介護サービスと個別契約する必要があります。
また、介護度が高くなった場合は、退去になることも。
「介護型」は、都道府県から特定施設入居者生活介護の指定を受けた住宅で、施設に常駐する介護スタッフから要介護度に応じて定額で介護サービスを受けることができます。
ただし、「介護型」はサ高住の中でも8.1%※と、「一般型」に比べてまだ少ないのが現状です。
※国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の現状等」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001381203.pdf
人員体制にも違いがある
「一般型」は日中の見守りなどで介護スタッフや看護師が常駐していますが、夜間は緊急時などの対応が可能な体制を整えることが義務化されています。
「介護型」に関しては、入居者3人に対して1名の介護職員の配置など、人員配置は細かく規定されています。
→注目の「サ高住・住宅型有料老人ホーム10選」駄菓子屋を併設して子どもとの触れ合いも
入居の条件「60才以上、単身でも夫婦でも」
「サ高住」の入居条件は、高齢者住まい法第5条により定められています。
60才以上の人、60才未満の場合は、要介護/要支援認定を受けていることが条件となります。おひとりさま(単身)でも夫婦でも入居できます。
同居人の条件は、妻や夫(配偶者)のほかに、60歳以上の親族、要介護か要支援の認定を受けている60歳未満の親族、知事から特別な理由により認められたかたが対象になります。
このほか、認知症の受け入れや、看取りの対応など、入居条件は施設により異なるので、見学の際に確認してみましょう。
「サ高住」はどんな住まい?規模や設備の条件
「サ高住」の登録基準は、床面積が原則25㎡以上、構造や設備が一定の基準を満たしていること、バリアフリーであることが登録基準の条件となります。
各部屋にキッチンやトイレ、浴室などは各部屋に完備されていますが、十分な広さや環境が確保されていれば、必ずしも各部屋に設置しなくてもよいとされています。
中には、温泉や食堂など共有設備を完備している「サ高住」もあり、住人どうしのコミュニケーションができるのも特徴です。
「サ高住」のサービス利用方法
「一般型」では、原則として安否確認・生活相談サービスといった見守りサービスが受けられます。何か不安があったときに専門のスタッフに相談したり、部屋を巡回して異変がないか確認したりしてくれるので安心して暮らせます。
しかし、食事の提供や掃除洗濯などの生活支援、医療ケアなどは、必要に応じて外部のサービスを利用します。施設によっては、看取りまで対応するケースもあり、施設によって提供されるサービスは異なっています。
なお「介護型」の場合は、こうしたサービスを施設内ですべて利用できるようになっています。
「サ高住」の費用は?
「サ高住」は賃貸契約なので、初期費用として「敷金」(入居費用)が必要になります。退去する場合には、原状復帰のための修繕費などに当てられます。
月額利用料には、居住費や管理費、水道光熱費、見守りサービスなどの費用などが含まれます。月額利用料は14万~30万円が相場となっています。
厚生労働省の資料※によると、「サ高住」の平均利用料金総額約14万円、うち家賃分は、平均約6万円となっています。
「サ高住」にかかる費用の目安
・家賃
・共益費
・基本サービス相当費
・食費
・光熱費・水道費
平均利用料金総額約:14万円(うち家賃分は、平均約6万円)
※厚生労働省「サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000102200.pdf
サ高住に入居するまでの流れ
実際にサービス付き高齢者向け住宅に入居するまでには、施設探し→見学→仮申し込み→書類審査→面談→本契約→入居金の支払い→引っ越し、という流れになります。
公的な証明書類の発行や、郵送による施設との書類のやり取りも必要になることもあるので、入居希望日から2か月前くらいから準備を始めることをおすすめします。
監修者
社会福祉士・ライトさん
地域包括支援センターの社会福祉士として勤務。Instagram「ライト@介護保険のスペシャリスト」として情報を発信し、2万人を超えるフォロワーに支持されている。介護保険サービスの活用から、高齢者施設の解説など、スライドを駆使しながらわかりやすく伝えている。https://www.instagram.com/light_kaigo/?hl=ja
入居者が明かす「サ高住」に暮らすメリット・デメリット
実際に都内の「サ高住」(「ゆいま~る中沢」)に暮らす4人の女性が語ったコメントの一部と、メリットデメリットをまとめた。
「当初は団体生活のイメージがありましたが、予想以上にプライベートが確立されていました。隣の部屋同士や気の合う仲間と、好きなときだけゆるやかにつながれます」(69才で入居)
「暮らし方に共感でき、気持ちを寄せ合える仲間ができました」(78才で入居)
「声をかけたら、迷惑そうな顔をされました。なかには、声をかけられるのが嫌な人もいるということを忘れてはいけませんよね」(71才で入居)
<メリット>
・人と話したくなったら、いつでも雑談できる
・体調や安否を気にかけてくれる人がすぐ近くにいる
・エアコンのフィルター掃除など、自分ではできない作業は助け合える
・友達などからいただいた食品やお土産などを分け合える
<デメリット>
・人によって距離感が違うため、あいさつにも気を使う
→オリジナル記事「急増中の“サ高住” 入居者が明かすメリット・デメリット「ゆるいつながりがいい」
初出/女性セブン2021年7月15日
https://josei7.com/
「サ高住」に入居した作家の久田恵さん
久田さんは70才で入居した栃木県の「サ高住」(「ゆいま~る那須」)で実際に暮らしてみて感じたこととは?
「10才まで住んでいた北海道の風景に似ていたんです。心を癒してくれる自然の美しさに魅了されましたね。加えて、仕事のときは、部屋にこもって誰とも口を利かず集中できる。ご飯を作りたくなければ、食堂で食べればいい。
母や祖母としての役割から解放され、好き勝手に暮らせて、誰からも干渉されない。ここは、家族との関係に縛られてきた私が、ようやく手に入れられた自由の楽園です」
サ高住で暮らして感じた5つのこと
1.見守りスタッフだけでなく、入居者同士で助け合うことが必要
2.これまで周りにいなかったタイプの人や職業・環境の人と出会える
3.人と支え合って生きるスキルが必要
4.変化に対応できる“ゆとり”を持っておくべき
5.晩年の人生は長いので、変化に対応できるようにしておくべき
→オリジナル記事「“サ高住”で晩年を楽しく豊かに過ごすために必要な5つのこと|作家・久田恵さん」
初出/女性セブン2021年6月24日
https://josei7.com/
イラスト/イメージマート