“サ高住”で晩年を楽しく豊かに過ごすために必要な5つのこと|作家・久田恵さん
同年代との節度ある関係性が心地いいと評判のサ高住だが、施設によっては認知症になるなど、介護が必要になれば退去しなければならない。それを踏まえてどう暮らすべきか…。実際に入居した実体験を作家の久田恵さんに聞いた。
サ高住は「誰にも干渉されない自由の楽園」
70才のときに取材で訪れたサ高住を気に入り、入居を決めたという久田恵さん。
選んだのは、栃木県にある「ゆいま~る那須」。敷地内には71戸のコテージ風住宅が中庭を囲むように建つ。土地勘もなく、知り合いもいなかったが、迷いはなかったという。それまでは息子家族と半同居していたが、面倒を見ていた孫が小学校入学を機に手が離れたのも、いいきっかけとなった。
久田:ここは、私が10才まで住んでいた北海道の風景に似ていたんです。心を癒してくれる自然の美しさに魅了されましたね。加えて、仕事のときは、部屋にこもって誰とも口を利かず集中できる。ご飯を作りたくなければ、食堂で食べればいい。
母や祖母としての役割から解放され、好き勝手に暮らせて、誰からも干渉されない。ここは、家族との関係に縛られてきた私が、ようやく手に入れられた自由の楽園です。
支え合って暮らすことで絆が深まる
入居者との出会いも、久田さんの暮らしを鮮やかにした。それまでは同業者や環境が近い人とつきあうことが多かったが、ここに住む人は職業も境遇もバラバラだ。
久田:似た考えを持つ友達と暮らすのもいいけれど、新しい場所で新しく出会った、自分とは違う価値観を持つ人たちと、いちから関係を築いていくのも楽しいんです。
意見が合わず、時にけんかもしますが、それを引きずりません。というのも、ここは市街地まで車で20分はかかる場所。体調を崩せば、入居者が車を出して薬を買いに行ってくれる。支え合わないと生きていけない。だから余計な争いをしていては、命取りになる。支え合って暮らすことが前提なので、絆を深めやすいんです。
とはいえ、どんなに人間関係に恵まれ、居心地のいい“楽園”でも、一部のサ高住は認知症になれば退去しなければならないなど、“終の棲家”にはなり得ない可能性も潜んでいる。
サ高住の生活で考えておくべきこと
■「何が起こるかわからないし、晩年の人生は長いので、変化に対応できるようにはしています」(久田さん)
久田:私が暮らすサ高住は、近くに介護型施設をつくっていますし、介護機能も持っていて、共同墓もあります。とはいえ、入居者の出入りが激しいのも事実。
晩年の人生は長いですから、何が起こるかわかりません。ですから、私を含め入居者たちは、ここで最期まで暮らせるようにいろいろなことを考えています。訪問ヘルパーステーションを起業するとかね。ないものは自分たちでつくる、というのが、ここのモットーなんです。
いまが楽しいかどうかを基準に生きていますね。サ高住に入ると安心して、その後は考えなくなる人もいますが、何才でもどこで暮らしても変化はあると思っていた方がいいと思います。
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近年人気が高まっているサ高住の住み心地は確かによさそうだが、長い晩年を楽しく豊かに過ごすための“通過点”と認識しておいた方がいいのかもしれない。
久田さんがサ高住に暮らして感じた5つのこと
久田さんがサ高住で実際に暮らしてみて感じたことは?
1.見守りスタッフだけでなく、入居者同士で助け合うことが必要
2.これまで周りにいなかったタイプの人や職業・環境の人と出会える
3.人と支え合って生きるスキルが必要
4.変化に対応できる“ゆとり”を持っておくべき
5.晩年の人生は長いので、変化に対応できるようにしておくべき
教えてくれた人
久田恵さん(73才)/作家。シングルマザーとして育児をしつつ、両親の介護を20年近く行う。サ高住での暮らしは3年目。主な著書に、花げし舎との共著で『100歳時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由』(現代書館)など。
取材・文/桜田容子
※女性セブン2021年6月24日