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連載

注目の『光冷暖』「風なし、音なし、家中ぬくぬく」に大感激のオバ記者【新連載・シニアライフ体験】

 これまでに雑誌連載などで、さまざまな体当たり企画にチャレンジしてきたオバ記者こと、ライターの野原広子。現在61才、バツイチ独身のオバ記者が、還暦を迎えて考えるのは家族の介護、そして将来自分が送りたいシニアライフのこと。そこで、さまざまな介護にまつわるモノ・コトに挑戦、体験記としてお届けします。

 第1回となる今回は、「これから伸びそうよ~」と独自の嗅覚で情報をキャッチした新感覚の冷暖房システムについて。

「なんでも岩盤浴の会社が作った、風が出なくて体にいい“光冷暖”っていうのがあるらしいのよ。今度体験してくるわ」──好奇心旺盛なオバ記者が、そう話して意気揚々と向かったのは、福岡・博多にできた新感覚ホテル。学校や病院、介護施設などさまざまな場所に導入され、いま注目の『光冷暖』を初体験したオバ記者の感想は!?

 * * *

「老後は、こんな空間で過ごしたいなぁ」

 福岡で泊まったホテルのロビーに入ったとたん、思わずそう言った私。速足で歩いてきて汗ばんでいたはずなのに、暑くもないし、もちろん寒くもない。すーっと洞窟の中にもぐりこんだような、なんとも不思議な空間だった。

『光冷暖システム』というのだそうな。ふつうのエアコンは暖めたり冷やした風を送って、室温を調節する。だけど『光冷暖』は、「ラジエーターを温めたり冷やしたりすることで、無風で全館冷暖を行っています。壁天井の内装材も冷暖効果に役立つという特許技術になります」(ホテル グレートモーニング 二枝崇治社長)と言う。

 部屋に入った私は、しばらく腕組みして空間を見ていた。温かいかと聞かれれば、ほんのり温かい。ホテルの部屋特有の臭いがない。空調が回る音がしない。音がないというのは、なんと安らかなんだろう。

「これを知っていたら、父ちゃんは何て言ったかな」そんなことを思っているうちに、いつの間にか深い眠りについていた。

 今年の1月、父は83才で胃がんで亡くなった。1年半前に発病して、あっと言う間だったけど、その間に何度か温泉旅行に行った。父は日を追うごとに食が細くなり、そしてホテルの空調の音にうるさくなった。

 寝る前に必ずといっていいほど、「クーラーがうるさくて眠れない」と騒ぎだすんだわ。それで消すと暑がりの母が、「寝れねえよ」と私にエアコンを付けさせる。最後は、「何でもかんでもオレに逆らうんだな」と父が激昂して、気まずく寝るというパターン。

多くの高齢者が亡くなるヒートショック対策にも

 この光冷暖システムは2008年に商品化され、一般住宅ばかりか、病院や介護施設の導入が増えてきたのだそう。岐阜県関市の『さわやか内科クリニック』は2012年開業当時から光冷暖システムを導入したとか。「私は理系の人間なので、理論をすべて納得できないと気が済まないんですけど、光冷暖システムは、快適さに圧倒されました」(さわやか内科クリニック中村勝重院長)

「同感!」とは思うんだけど画期的すぎて、どう書いたらいいものか‥‥。

 そこで、「光冷暖システムのショールームが東京にあるっていうから、付き合ってくれない?」と、編集担当のWさんを誘って都心のマンションのドアを叩いた。

「あ、あ、あ。うん、うん、うん」

 Wさんは、目を大きく見開いて言葉にならない声をしきりに発したかと思ったら、「静か。部屋の臭いもしないですよね? ここで仕事したら、すごくはかどりそうですね」だって。

「とにかく、これをどうぞ」。案内係の彰吾さんから温度計を手渡された。部屋にひとつだけ設置されたラジエーターの前はやや暖かく(26.6度)だけど、ドアを隔てた洗面台も、玄関も、トイレの中も、ほとんど温度差がない。

 室内の寒暖差が原因で、毎年多くの高齢者が亡くなっていると言われているヒートショックが、これなら防げるではないの。

「で、いくらよ」

 最近、家の住み替えを考えている9才年上の友人Kは、開口一番こうだ。

 案内係の彰吾さんに聞くと、「大まかな目安ですが、70m2のマンションで、工事費込みで200万円前後です」。

 春になったらいよいよ平成が終わって、新しい時代の幕が開く。『光冷暖システム』だけじゃない。私が知らないだけで、介護を取り巻く環境も大きく変化しているようなのだ。

 それらをこれから毎週、お届けする。

撮影/横田紋子

【データ】
「ホテル グレートモーニング」
住所:福岡県福岡市博多区店屋町6-3
電話:092-272-1414
URL:https://hotelgreatmorning.com/

オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。『女性セブン』での体当たり取材が人気の自称“意識高い系”ライター。同誌で富士登山、AKB48なりきり、空中ブランコ、『キングオブコント』出場など、さまざまな企画にチャレンジ。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。全国各地の道の駅や温泉レポートも得意。ホテルの客室清掃バイトや銀座で手作りバッグ“出店”など、アラカンの現実を気の向くままに告白する連載も人気。

●老後の住まい安心「リフォーム術」で後悔しない終の棲家を

●猛暑にエアコンをつけず亡くなる高齢者が絶えないワケ

●離れて暮らす認知症の親 熱中症対策どうすればいいのか?

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