離れて暮らす認知症の親 熱中症対策どうすればいいのか?
東京―岩手と遠距離で、認知症の母の介護している工藤広伸さん。家族の目線で”気づいた””学んだ”数々の介護心得をブログや書籍などで公開し、リアルな実体験が役に立つと評判だ。
当サイトのシリーズ「息子の遠距離介護サバイバル術」でも、工藤さんの遠距離介護の知恵や心の持ち方などをアドバイスしてもらっている。
今回のテーマは「熱中症対策」。ともすると命にも関わる高齢者の熱中症、なかでも認知症の人は、より注意が必要だ。全国的に猛暑が続くこの夏、工藤家ではどのように過ごしているのだろうか?必見だ。
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熱中症が心配な今年の夏。
認知症の人は特に、ご自身での温度管理が難しいこともあります。今日はわが家の温度管理の方法や、熱中症対策についてご紹介します。
母とわたしで大きく違う体感温度
「あんた、そんな恰好して寒くないの?」
最近の母の口癖です。
居間にあるエアコンの設定温度は「26℃」。わたしはそれでも暑いと感じるのですが、これ以上温度を下げてしまうと、今度は母が寒いと言い出します。なので、わたしはエアコンの温度を下げずに、Tシャツ・短パンなど衣服で温度調整をします。
認知症で季節感のない母は、今が秋や冬だと思うこともあります。だから、わたしの恰好を見て「寒そう」と何度も言います。
また、母は「26℃」がどれくらいの暑さなのか、理解できません。湿度80%の意味も分かりません。居間にはデジタル電波時計が設置されていて、温度・湿度が表示されているのですが、母にとって温度や湿度は「ただの数字」でしかないので、わたしが帰省したときだけ利用しています。
それでも母が熱中症にならない理由は、本能の赴くままにエアコンの温度を設定しているからです。
暑さを感じたら、設定温度を「19℃」にして部屋をキンキンに冷やしたかと思えば、今度は寒いと感じ、エアコンをオフにしてしまいます。そして、また暑さを感じると、エアコンのスイッチをオンにします。
母は、このオンオフの繰り返しを1日中やっているのですが、それでも冷房は一応ついているので熱中症にはなっていません。
母の温度感覚は、わたしには理解できません。それでも、暑い寒いといった大枠での感覚に間違いはなく、夏に暖房を付けたりはしないので、そのままにしています。
とはいえ、母のエアコンの使い方は危ういので、いずれスマートフォンと家電をネットでつなぐスマート家電を利用した、リモートでのエアコンの温度・湿度設定を考えています。
そういうこともあって、家電量販店でエアコンの最新事情をチェックしているのですが、母とわたしのように体感温度に差がある家にピッタリなエアコンがありました。
高精度の赤外線センサーで、ひとりひとりの体感温度を検知する機能がついているエアコンです。わたしが暑いと感じ、母が寒いと感じている場合、わたしには冷風が当たるのですが、母には当たらないよう、エアコン側で自動制御してくれるのです。
「暑さ指数」は利用していますか?
天気予報でも、おなじみになりつつある「暑さ指数」。この暑さ指数の計算式をひも解くと、温度管理だけしっかりしていれば、熱中症は回避できるわけではないということが分かると思います。
暑さ指数は、【気温1:湿度7:輻射熱(ふくしゃねつ)2】という割合で計算することになっていて、特に湿度が重要だということが分かります。輻射熱とは、地面や建物・体から出る熱のことで、温度が高い物からはたくさん放出されるという特徴があるそうです。
この暑さ指数を基に、「安全」「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の5段階で判定を行い、情報提供しているのが、『環境省熱中症予防情報サイト』(※)です。
※『環境省熱中症予防情報サイト』URL
PC版:http://www.wbgt.env.go.jp/
スマホ版:http://www.wbgt.env.go.jp/sp/
温度や湿度だけをチェックして、熱中症になりそうかどうかを自分の感覚だけ判断するのは危険かもしれません。住んでいる地域、あるいはお部屋の暑さ指数を簡単に知るための2つの方法をご紹介します。
1. 熱中症計を使う
部屋の暑さ指数を知る簡単な方法は、熱中症計を買うことです。暑さ指数を数値として表示するタイプや、先ほどご紹介した5段階判定で表示をしてくれる熱中症計など、様々なタイプがあります。
2. 環境省のホームページから熱中症予防メール(無料)を利用する
わたしが現在利用しているのが、『熱中症予防メール』です。
『環境省熱中症予防情報サイト』でご自身のメールアドレスを登録すれば、誰でも無料で利用可能です。
「危険」、「厳重警戒」などレベルに応じたメール配信設定ができますし、現在の暑さ指数を示す実況値、3日分の暑さ指数予測をする予測値などが、決まった時間にメールで送られてきます。
全国5地点まで登録が可能で、わたしは東京と盛岡を指定しています。東京に関しては、自分の熱中症対策のために利用していますし、盛岡は、もし「厳重警戒」レベルになるようだったら、見守りカメラで居間にいる母を見る回数をいつもより増やすようにしています。
見守りカメラでチェックして様子がおかしい場合、母にすぐ電話をしてエアコンをつけるよう促したりもします。
・飲み物でもバックアップ
母には水分をこまめにとって欲しいと思っていますが、離れているため管理ができません。そこで、気軽にすぐ飲める紙パックタイプの野菜ジュース、甘酒などを冷蔵庫いっぱいにストックしています。
またポカリスエットだけは、母もスポーツドリンクだと理解できるので、1.5リットルサイズを常備しています。
みなさんも温度だけでなく、「暑さ指数」に注目して熱中症対策をしてください!
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)
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