介護経験者の37.4%が家族との旅行を断念 旅行サポートサービスの利用はわずか<調査レポート>
介護が必要な家族との旅行は、本人の体調や移動の負担、宿泊施設や観光地のバリアフリー対応など、不安を感じることが少なくない。実際に旅行を経験したひとはどのように気をつけ、誰に相談しながら準備したのか、調査結果から安心して旅を楽しむためのヒントをお伝えする。
介護する家族との旅行に関心を持つ人は9割に近いが、実現は4割に満たない
旅行に行きたいと思うひとは多いが、健康面に不安があると実際に計画するにあたり考えることが増え、腰が重くなりがちだ。
通院中・在宅療養中・リハビリ中の方向けに、看護・介護付きの外出・旅行サービスを提供するReTaby(リタビー)は、全国の男女434名を対象に、「家族の介護と外出・旅行に関する意識調査」を実施した。
調査にあたり、介護や見守りが必要な家族の有無をたずねたところ、「同居している(家族を介護・見守りしている)」と答えた人は15.4%、「別居している家族を介護・見守りをしている」人は31.1%だった。合わせると46.5%と半数に近い人が現在介護に関わっていることになる。さらに「過去に介護していた」15.9%を含めると、62.4%(271名)が介護の当事者・経験者であった。
介護があると答えた273名に、介護が必要な家族との旅行を検討したことがあるか質問したところ、「検討したが、実現できなかった(あきらめた)」が37.4%で最多となり、「検討したことがあり、実現した」と答えたのは25.6%となった。「検討したことはないが、関心はある」24.2%を含めると、87.2%が旅行に関心を持っていることがわかる。しかし、実現できているのは少なく、理想と現実にギャップがあることがうかがえる。
また、最後に親と旅行をしたのはいつかたずねたところ、「5年以上前」が最多の48.6%だった。親世代の高齢化に伴い、家族旅行の機会が遠ざかっていることが浮き彫りになった。2位は「1~3年前」(24.2%)、3位は「1年以内」(22.4%)だった。「一緒に旅行をしたことはない」人も4.8%と少数だがいた。
外出・旅行をためらう主な理由は「本人の体力低下・意欲低下」
介護が必要な家族との外出・旅行をためらう理由を複数回答で聞いたところ、1位は「本人の体力低下・意欲低下」が281件、2位は「体調変化への不安」224件、3位は「移動手段の確保」189件が続いた。体調面への不安として「緊急時の医療対応」との回答も104件あった。
3位以下は「介助者(家族)の身体的・精神的負担」147件、「宿泊施設・観光施設のバリアフリー状況」137件など、本人の状態だけでなく、付き添う家族の負担や受入環境の整備不足も大きな障壁となっているようだ。
前出の質問にあわせ、介護が必要な家族との外出や旅行で「困った経験」や「あきらめた経験」を自由回答でたずねたところ、「本人の体力低下・体調変化」に関する声としては
「外出しやすい条件を整えても本人の意欲の低下で実現できないことが多いです」(50代・男性・会社員)などのコメントがあった。
「トイレ・排泄」については、「トイレに連れていくのが大変です。高速道路ではすぐに止まれないし、パーキングでは駐車場からトイレまで階段が多い」(40代・女性・パート・アルバイト)、「多目的トイレが少ないと感じています。リハビリパンツは履いていますが漏らすのは可哀想という気持ちになるのと『動きまわらせちゃってごめんね』と言われるのが辛いです」(30代・女性・専業主婦)など切実な声が上がった。
「バリアフリー・移動手段」については、「別居している母が要介護状態になり、一緒に温泉旅行へ行こうと計画しましたが、バリアフリー対応の宿を探すのに苦労しました。ホームページでは対応していると書かれていても、実際には段差があったり、浴室に手すりがなかったりと、情報の正確さに不安を感じました」(60代・男性・会社員)
「温泉が好きな人だったので温泉旅行に連れて行ったが、浴場の床が滑りやすく常時身体を支えていなければならなく、本人も転倒の恐怖などを感じあまり楽しめなかった」(50代・女性・会社員)といったエピソードが集まった。
旅行や外出をためらう理由として意外と多かった「介助者の負担」については、「もう少し安心して相談できる窓口や、同行支援が身近にあったら、外出の機会を増やせたと思います」(50代・女性・パート・アルバイト)といった提案があった。
介護家族の外出・旅行は「家族だけで対応」している現実
介護が必要な家族との外出や旅行の際、経験者はどのように対応しているのだろうか。複数回答で聞いたところ、圧倒的多数を占めたのは「家族だけで対応している」で167件(47.7%)だった。それに対して「外出や旅行の手配・サポートサービスを利用している」人はわずか9件(2.6%)、「介護スタッフなどの付き添いサービスを利用している」人は12件(3.4%)にとどまっている。専門サポートの活用がほとんど進んでいない実態が浮かび上がった。一方で「外出や旅行はほとんどしていない」が59件と全体の2位で16.9%にのぼるなど、介護家族の社会参加の機会そのものが失われている現実も見えた。
旅行で求められる「バリアフリー」「緊急時対応」「移動支援」
どのような支援があれば外出や旅行がしやすくなるのだろうか。複数回答で聞いたところ、1位は「バリアフリーの宿泊・観光施設」(227件)、2位は「緊急時に対応できる体制」(190件)、3位は「移動支援(車椅子対応車両など)」(176件)と、ハード面の整備に対するニーズが高かった。4位には「情報提供(利用できるサービスや施設の情報)」(159件)が選ばれたように、サービス・施設の情報そのものが届いていないという課題もある。
外出や旅行のサポートサービスへの期待
看護・介護付き外出・旅行サポートサービスが徐々に広まってきているが、「知らなかった」と答えた人は68.2%と圧倒的多数を占め、「内容まで知っている」はわずか5.1%、「利用したことがある」は1.2%にとどまった。
看護・介護付き外出・旅行サポートサービスの利用を希望するか聞いたところ、「ぜひ利用したい」(12.9%)と「条件が合えば利用したい」(72.4%)を合わせて85.3%がサービスの利用に前向きな意向を示した。サービスへの強いニーズが存在するものの、その存在自体が広く知られていないことが浮き彫りになった。
まとめ~外出・旅行の難しさは社会課題~
今回の調査で、回答者の62.4%が介護経験者だったことからも、介護は特別な家庭の話ではないということがうかがえる。少子高齢化・晩婚化が進む日本では、子育てと介護を同時に担う「ダブルケア」世代の増加も予想され、介護は今後さらに現役世代の生活全般に影響を及ぼす社会課題となっていくだろう。
介護家族との外出・旅行をめぐっては、現状ではあきらめざるを得ない実態が数値にも表れた。介護経験者の37.4%が旅行を「あきらめた」と回答し、「実際に行くことができた」と回答した25.6%を上回った。「本人の体力低下・意欲低下」「体調変化への不安」「移動手段の確保」が外出や旅行をためらう理由の上位となり、家族だけで対応することの限界があることが示されている。一方、外出・旅行の対応として「家族だけで対応している」人が最多となり、専門サポートを活用している人はごくわずかだった。
看護・介護付き外出・旅行サポートサービスへのニーズは大きいのに、存在自体が知られていない認知ギャップも今回の調査で明らかになった。看護・介護付き外出・旅行サポートサービスを「知らなかった」と回答した方は7割近くだった一方で、「利用したい」と回答した方は8割を超えた。
介護家族の外出・旅行を諦めさせている要因のひとつは、使えるサービスが世の中に存在することそのものを知らないことでもある。家族だけで解決しようとするのではなく、自治体をはじめサポート機関に相談し、さまざまなサービスを知ることが、行動を広げる大きな一歩となりそうだ。
【データ】
ReTaby(リタビー)
https://retaby.co.jp/
【調査サマリー】
調査期間:2026年3月18日〜31日
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の20代〜70代以上の男女(30代が33.9%と最多、次いで40代が21.4%、20代が20.5%)
有効回答数:434名(女性314名、男性113名、回答しない7名)
※本調査は「現在、介護や見守りが必要な家族はいますか」の回答内容により、後続設問の対象者が分岐する設計です。設問ごとの有効回答数は回答結果に基づき異なります(「介護が必要な家族との旅行を検討したことがありますか」:273名)
※ReTaby(リタビー)の発表したプレスリリース(2026年5月25日)を元に記事を作成。
図表/ReTaby(リタビー)提供 構成・文/西谷友里加
