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連載

要介護3の認知症の母の区分変更を申請 遠距離介護を続けていくための準備と覚悟

 作家でブロガーの工藤広伸さんは、岩手・盛岡でひとり暮らしをする認知症の母を東京から通いで介護している。現在、母は要介護3なのだが、母の様子に変化があったため、介護保険サービスの区分変更を申請することに…。もしも母の要介護度が上がった場合、遠距離介護は続けられるのだろうか?

 認知症かつ手足の筋肉が萎縮する難病を抱える母の現在の介護度は、要介護3。しかし母の状態に変化があり、担当のケアマネジャーさんと話しあった結果、区分変更を申請することになりました。

 今回は、なぜ申請しようと思ったのか、申請して要介護度はどう変化したのかについてのお話です。

区分変更とは?

 被介護者の状態に変化があったとき、有効期間前に認定調査を行うことを区分変更といいます。介護保険サービスを利用するためには要介護認定を受ける必要がありますが、自動で更新されるわけではなく、有効期間が設定されています。

 母が要介護2になったのは、2017年。それから4年間キープできていたのですが、ある日玄関で転倒し捻挫をしました。その際にかかりつけ医から、訪問リハビリの回数を週1回から2回へ増やしたほうがいいと提案がありました。

 母はテレビを見て過ごす時間が長くなり、足腰が弱っていたのかもしれません。リハビリを増やすと筋力や歩行訓練ができますが、それよりもデイサービスに行って活動量を増やしたほうがいいと考え、週2回から3回に増やす案も浮上しました。

 しかし要介護2のまま現状のケアプランを維持しつつ、デイサービスを週3回にしてしまうと、支給限度額※をオーバーしてしまいます。限度額を超えた分は、全額自己負担になってしまうのです。

※支給限度額:要介護度に応じて設定される1か月の介護保険サービス利用上限。

 そこで2021年に区分変更を申請した結果、母は要介護2から要介護3になりました。区分変更が行われたあとの最初の認定調査は1年後にあって、その時は要介護3のまま更新が決定し、有効期間が4年となりました。

 ところが更新からわずか半年、母の状態に変化が見られたのです。

認知症の症状が悪化した母

 母は今でも、自分が調理していると思っています。料理が得意だった母は認知症が進行しても比較的自立できていましたが、今は冷蔵庫の中の食材をテーブルに並べるしかできません。

 他にも食器用洗剤で歯を磨いてしまったり、深い昼寝をして昼と夜が逆転したりする日が増えてきました。夕方なのに朝と勘違いして、デイサービスの準備をして外に出ようとするのです。

→認知症の母が歯を磨く姿に衝撃 息子が「やめて!」と大声を出した理由と口腔ケアの対策

 最近の母の状態について、ケアマネさんや通っているデイサービスの情報では、冷静に見て母は要介護4相当だろうと言われていました。

 要介護4に認定されれば、支給限度額の範囲内でデイサービスの回数を週3回から週4回へ増やすこともできます。デイサービスに行けば昼寝をせず、日中起きているため昼夜逆転は起こりません。また栄養価の高い料理を確実に食べられます。

 家族で話し合った結果、再び区分変更をケアマネに依頼し、認定調査を実施することになったのです。

要介護3からの区分変更の結果は?

 母が暮らす岩手県盛岡市の資料に、要介護度の目安が次のように書いてありました。

 要介護3:立ち上がりや歩行が自力では困難。身の回り全般に一部または全面的な介助が必要

 要介護4:日常生活全般に一部または全面的な介助が必要
 
 正直なところ、違いが微妙でよく分かりません。

 確かに今の状態は日常生活全般をサポートしないと、母は自宅で生活できなくなっています。とはいえ微妙な判定になりそうで、ひょっとしたら要介護3のままの判定になるかもしれないと思いながら、結果が出るまで約1か月待ちました。

 区分変更の申請はわたしが東京に居るときにケアマネにお願いし、遠距離介護中に結果が分かるようなスケジュールを組みました。

 ケアマネから電話で連絡があり、結果は要介護4。デイサービスの回数を増やせる安堵感はありましたが、亡くなった重度の認知症の祖母ですら要介護3だったので、とうとう祖母を超えてしまったかという感情も沸き上がりました。

認知症の進行や老いが加速している

 母は要介護1と要介護2で9年も粘ってくれたのですが、要介護3はわずか1年で終了。すぐに要介護4になってしまいました。認知症の症状や筋力の低下など、介護度が示すとおり老いの加速が目立ちます。

 介護度だけで考えれば介護施設に入っていてもおかしくないですし、かかりつけ医からも自宅で頑張っているのはすばらしいけど、施設を利用していても全くおかしくないレベルまで来ていると言われたこともあります。

 ただ、わたしから言わせれば介護度なんてただの数字です。わたしを含む家族が介護の限界を迎えたと思わなければ、要介護4でも遠距離在宅介護は続けられると思っています。

 と言いつつ、母が介護施設に入るかもしれない覚悟や準備はしていて、自分が倒れるまで在宅で介護を頑張るつもりはありません。母が最期まで住み慣れた自宅で暮らす望みを叶えられるよう必死で考えますが、あまり意地を張らないよう冷静に判断していきます。

 今日もしれっと、しれっと。

→この連載の他の記事を読む

工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

●認定調査で判明した母の様子にショック!元ヤングケアラーが感じた在宅介護の限界

●「要介護認定」のコツ|ケアマネは絶対教えてくれない【裏ワザ】

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