女性の美容・アンチエイジングの”間違い”を専門医が指摘「正しい情報の見極めが大事」
「肌にたっぷりオイルを塗ってうるおいを」「バストアップのためにマッサージをしたほうがいい」――美容やアンチエイジングのためにと行っていることが、実は間違っているかも?女性のための正しい健康知識について、専門医が教えてくれた。最新の健康知識をアップデートして、健康で美しい体を手に入れよう!
間違いだらけの「女性の美容とアンチエイジング」
マスクの着用が個人の判断に委ねられ、素顔を見せる機会が増えた今春、久しぶりに肌の手入れに邁進している人も多いだろう。しかしその方法を間違えれば、お金と時間を無駄にすることになる。
あいこ皮フ科クリニック院長で美容皮膚科医の柴亜伊子さんが言う。
「真っ先にやめるべきは顔の皮膚を引っ張るような強すぎるマッサージ。肌がのびたまま戻らなくなり、たるみの原因になります。また、化粧水などのお手入れは、できるだけ肌との摩擦がないように行うこと。コットンを使ったパッティングも肌に負担をかけるため、逆効果です」
肌にたっぷりオイルを塗ってうるおいを保とうとするのも間違ったケア。産婦人科専門医の宋美玄さんが言う。
「ニキビの原因になることもあるので、保湿対策なら乳液やクリームなど乳化したものの方がおすすめです。デリケートゾーンも同様、オイルで腟マッサージを行うのも避けてほしい。粘膜を傷つける可能性があります」
乾燥肌の対策には肉や卵などたんぱく質を
間違った方法に代わって柴さんが乾燥肌対策として推奨するのは肉や卵を食べること。
「特にコレステロール値を気にして卵を控えようとする人もいますが、低コレステロールは乾燥肌の原因にもなるうえ、うつ病のリスクも上がる。家族性コレステロール血症などの場合は別ですが、バランスを見ながらむしろ肉や卵で良質なコレステロールやたんぱく質をしっかり摂ってほしい」(柴さん)
マッサージの効果が乏しい部位は肌だけではない。東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科医の高橋怜奈さんが解説する。
「バストアップのためのマッサージはほとんど意味がありません。胸の大きさは脂肪量、遺伝、そして20代までのホルモンの分泌などで決まるため補正下着も効果は期待できない。胸は乳腺組織で構成されているため、筋肉のように触ったり鍛えたりしたからといって肥大することはありません」
過剰すぎる糖質制限は反動を生む
寒い冬が終わり、少しずつ薄着になっていくこの時期に毎年「今年こそはやせたい…」とつぶやいてしまうのは、間違ったダイエット方法が原因の可能性がある。健康検定協会理事長で管理栄養士の望月理恵子さんが言う。
「炭水化物を減らし、脂質を抑えればやせられると動物性の食品を摂らないビーガンやベジタリアンがヘルシーで健康的だという向きもあり、ダイエットに取り入れる人も多いですが、実際にはかえって健康を損ねてしまうことにつながりかねません。動物性食材に多く含まれるビタミンA、ビタミンB12、ヘム鉄、たんぱく質などが欠乏し、夜盲症、貧血、筋力低下などの症状が出ることがあります。モデルやタレントがこぞって実施しているグルテンフリーも、本来は小麦や大麦などのグルテンに対する遺伝性不耐症の患者が、治療で取り入れる『病人食』であり、健康な人が行えばビタミンB群、ミネラル、食物繊維などが不足する可能性があります」
さとうヘルスクリニック院長で内科医の左藤桂子さんは偏った知識のもとで行う糖質制限を危険視している。
「クリニックにいらした患者さんで『根菜が含む少量の糖質が気になって、にんじんすら食べていない』というかたがいました。しかしそれではビタミンも繊維質もまったく摂取できません。しかもストイックに制限したせいで、反動がきて食べすぎてしまう可能性は非常に高く、メンタル面に不調が及ぶこともあるのです」
代謝をよくし不調を改善するといわれ、取り組む人も多い「骨盤矯正」もしっかりとしたエビデンスはない。
「骨盤を鍛えてやせるとか、産後は骨盤を引き締めると尿漏れが防げるといった文言には疑問があります。そもそも骨盤は複数の骨が靱帯で結合して成り立っているため、ゆがむことはあり得ない。単にバランスが崩れているだけでストレッチや整体に害はありませんが、効果も期待できません」(宋さん)
ワーカーズクリニック銀座院長で産業医の石澤哲郎さんは、そもそもやせていることをよしとする価値観自体にも問題があると指摘する。
「ある程度年を重ねたら、ダイエットが健康や美しさにつながるという考えを捨てた方がいい。もちろん肥満は病気の原因になりますが、実はやせすぎている人も死亡率が高いのです」
つまり、極端なダイエットやアンチエイジングは逆効果だということ。
「サプリメントも同様で、絶大な効果を喧伝するものはほとんど効果がありません。特に性生活の充実やバストアップをうたったものは怪しいものが多いため、気をつけてください」(石澤さん)
望月さんは健康のために摂るなら栄養素が豊富な食品にすべきと断言する。
「特に40代以降は体内の抗酸化作用が激減するので、食べ物から摂取することが大切です。シミ、しわ、たるみの予防になるのはもちろんのこと、細胞の老化を防いでくれます。ビタミンA・C・Eが豊富なピーマン、菜の花。オメガ3系脂肪酸が多い青魚やアマニ油。ポリフェノールが豊富な緑茶、コーヒー、大豆、柑橘類などがおすすめです。みかんは薄皮や白い筋も一緒に食べることをおすすめします。果肉の部分よりも、抗酸化物質のβ-クリプトキサンチンやヘスペリジンが多く含まれている。血液中のβ-クリプトキサンチン濃度の高い人は脂質異常症や肝機能異常、糖尿病、動脈硬化、骨粗しょう症の発症リスクが低いことが明らかになっています」
最新の正しい知見を手に入れたら、これ以上間違った知識に振り回されない方法も知っておきたい。
宋さんはできるだけ信頼性の高い場所で情報収集してほしいとアドバイスする。
「例えば、厚生労働省研究班が監修するサイト『ヘルスケアラボ』の情報は信頼できます。『更年期に多い症状と病気』『女性の病気セルフチェック』『月経のトラブル』など項目別に説明されていて、読みやすいところも推奨ポイントです」(宋さん)
石澤さんも、正しい情報の見極めが大事だと声を揃える。
「YouTubeやSNSで医療情報を見る際には、『高額なサプリなどを売り込むための不正確な情報ではないか』など、批判的な目で信頼性を見極めるようにしてください。また、日本は誰もが医療にアクセスしやすい環境にあるので、体の不調で悩みがあれば、まずはお近くの婦人科に相談してみましょう」
一過性のブームにのった信憑性に欠ける情報やネットにあふれる間違った情報に惑わされず、正しい知識にアップデートして、健康で美しい体を手に入れよう。
教えてくれた人
柴亜伊子さん/あいこ皮フ科クリニック院長で美容皮膚科医、宋美玄さん/産婦人科専門医、高橋怜奈さん/東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科医、望月理恵子さん/健康検定協会理事長で管理栄養士、左藤桂子さん/さとうヘルスクリニック院長で内科医、石澤哲郎さん/ワーカーズクリニック銀座院長で産業医
※女性セブン2023年3月30日・4月6日号
https://josei7.com/
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