「20分以上運動しないと脂肪は燃焼しない」はウソ?最新の健康常識を専門家が説く
新年を迎え、今年こそ”運動しよう!”と意気込んでいる人も多いのでは?早速、「ネットの動画でストレッチ」「20分以上運動しなければ脂肪は燃焼しない」――。そんな今まで常識だと思っていた運動に関する「健康知識」が時代遅れや誤解だったということも!? 運動にまつわる最新の情報について、専門家に教えてもらった。正しい健康知識を身に着けて効率よく運動をはじめよう!
運動を始める前に「ウソ」の健康知識を改めよう
新たな年を迎え、今年こそ「運動をしよう!」決意している人も多いのではないだろうか。そんな人は、まず運動を始める前に正しい健康知識を身に着けておこう。
「筋肉をつけて代謝が上がればやせる」はウソ?
人の体は、筋肉がつきにくい。同志社大学スポーツ健康科学部教授の石井好二郎さんが言う。
「1kgの筋肉をつけて維持するのはかなり大変なこと。筋肉がつけば基礎代謝が上がってやせるといわれますが、実際には1kg筋肉が増えても消費されるカロリーは1日で約13kcal増えるくらい。それよりも動いた方がいい」
筑波大学名誉教授で『その運動、体を壊します。』の著書がある田中喜代次さんも声を揃える。
「筋肉が2~3kg増えたとしても、1日の基礎代謝はご飯一口分程度しか増えない。だからダイエットの観点からいえば、きつい筋トレよりもウオーキングやジョギングの方が効果的です」
「筋肉痛」は頑張った証?
つらいトレーニングがいい影響を及ぼすとは限らないのだ。スポーツクラブ「メガロス」のパーソナルトレーナー阿部佳之さんは「筋肉痛は必ずしも頑張った証ではない」ときっぱり。
「トレーニング中に筋肉痛の有無を気にする人がいますが、筋肉痛にならなくても筋肉は大きくなるし、筋肉痛になっても筋肉が増えるわけではありません。ベンチプレスで100kgを3回と10kgを30回持ち上げるのとでは、トレーニング効果は同じです。限界を超えて無理をすると、筋肉や関節を痛める原因になってしまう」(阿部さん・以下同)
自己流のストレッチにも罠が
自宅でのストレッチにも罠が潜む。
「YouTubeにアップされている動画などを見ながら自己流でストレッチやトレーニングをすると、首や腰を痛める恐れがあります。慣れるまではオンラインでもいいので、パーソナルトレーナーなど経験者に指導してもらうのがいいでしょう」
「有酸素運動は20分以上続けないと脂肪は燃焼しない」説はウソ?
初心者が取り入れやすいのはウオーキングをはじめとした有酸素運動だが、かつてさかんに喧伝されていた「20分以上続けないと脂肪は燃焼しない」という説は否定されている。
「たった1分の有酸素運動でも効果があります。たとえば20分連続のウオーキングよりも、激しい運動を1分ずつ10回こなした方が体力がつき脂肪も減る。そもそも脂肪燃焼率は空腹安静時の方が高い。風邪で寝込んでいるときにやせるのは、食事量と水分量が減り、かつ、脂肪燃焼率が高まることも関係しています」
スポーツは「根性」は時代遅れ
サッカーW杯に沸いた日本だが、かつての「スポ根」はもはや時代遅れだ。
「日本では『すべてを注ぎ込まないと専門分野では成功しない』といわれ、スポーツ選手でも学生時代から人生をかけて打ち込んでいる人が多い。しかしこうした“ジンクス”は過去のもの。海外には前回の東京五輪で銀メダルをとった獣医師や、メジャーリーガー出身の医師もいます」(石井さん)
スポーツは脳にいいが「仕事」で体を動かすのは?
運動は脳にもいいと話すのは、菅原脳神経外科クリニック理事長の菅原道仁さんだ。
「体を動かすと脳内で分泌される『脳由来神経栄養因子(BDNF)』は脳の記憶を司る海馬に発現する神経性因子で、脳細胞を活性化します。運動以外にも高濃度のカカオやカマンベールチーズを食べてもBDNFは分泌される。両方試してみてほしい」
ただし自分の意思に基づいた運動でなければ意味がない場合も。
「日本では仕事で体を動かしている人ほど肥満が多い。ストレスの多さや喫煙率の高さ、高カロリーでバランスの偏った食事を摂りがちであることが理由だとされています。つまり自分の意思で“やる”と決めた運動の方が、健康に寄与するのです」(石井さん)
ウソの健康知識・運動編【まとめ】
■間違った知識…理由
■筋肉をつけて代謝を上げる…実際にはついた筋肉を維持するための運動によってカロリーが消費されているに過ぎない。筋肉を2~3kg増やしても、比例して増える1日の基礎代謝はご飯一口分。
■筋肉痛は“頑張った証” …筋肉痛があってもなくても増える筋肉量に変化なし。限界を超えて無理をすればかえって体に負担をかける。
■20分以上運動しなければ脂肪は燃焼しない…1分だけの運動でも脂肪燃焼は起きる。むしろ20分の軽いウオーキングよりも激しい運動を1分ずつ10回こなした方が脂肪燃焼効果は高い。
■ネットの動画で自己流ストレッチ…正しいフォームかどうかの確認ができず、首や腰を痛めることも。慣れるまではオンラインでもパーソナルトレーナーなど経験者の指導を受けるべし。
■スポーツは根性 …「すべてを注ぎ込まないと専門分野では成功しない」という考えは過去のもの。海外のメダリストやメジャーリーガーには後に医師になった選手も。
■仕事で体を動かすのも運動の一種…仕事で体を動かしている人ほど肥満率が高い。自分の意思で「やる」と決めた運動以外は効果なし。
教えてくれた人
同志社大学スポーツ健康科学部教授・石井好二郎さん、筑波大学名誉教授・田中喜代次さん、パーソナルトレーナー・阿部佳之さん、菅原脳神経外科クリニック理事長・菅原道仁さん
イラスト/サヲリブラウン
※女性セブン2023年1月5・12日号
https://josei7.com/