補聴器の基本Q&A「どこで買う?価格や維持費は? 」気になる難聴について専門家解説
「耳の聞こえ」から補聴器の「医療費控除」「耐久性」まで補聴器の素朴な疑問を神戸市立医療センター中央市民病院の総合聴覚センター長・内藤泰さん、リオン社の医療機器事業部 事業戦略室室長・太田昌孝さん、にじいろ補聴器店長で認定補聴器技能者の千葉星雄さんに聞きました。
Q1:難聴は治りますか?
A. 加齢性難聴は、残念ながら治らない。
「加齢性難聴は避けられない年齢変化の1つで、その主な原因は耳の内耳の中の蝸牛(かぎゅう)にある有毛細胞の損傷ですが、一度壊れてしまった有毛細胞は回復しません。
ただし、難聴には突発性難聴や中耳炎などの病気が引き起こすものもあります。耳硬化症(じこうかしょう)の場合は手術でよくなることも多いので、加齢によるものと諦めず、まずは医師にご相談を」(神戸市立医療センター中央市民病院の総合聴覚センター長・内藤さん・以下内藤さん)。
Q2:難聴が悪化しやすいのはどんな人?
A. 喫煙習慣がある人、座りがちで運動不足の人。
「喫煙は、血管が収縮して血流が悪化し、有毛細胞に栄養が行き届かずに損傷が進み、難聴リスクが高まります。また、軽い運動習慣のある人は難聴になりにくいという研究報告もあります。このほか、心臓病などの循環器疾患、高血圧、糖尿病などでも末消の血流循環が悪化するので難聴が進行しやすくなります」(内藤さん)。
Q3:日常でどんな傾向があると、難聴の兆候ありといえますか?
A. 主なポイントは以下の5つ。
【1】会話中に聞き返すことが増えた。
【2】テレビやラジオの音が大きいと指摘される。
【3】銀行や病院などで名前を呼ばれても気づかないことがある。
【4】災害警報や電話の着信音を聞き逃す、聞き取れない。
【5】話す声が大きいと指摘される。
「自覚症状があっても聞こえの悪さを認めたくない人が多いものです。これらの症状があれば聴力検査を受けてください」(内藤さん)。
Q4:補聴器と集音器はどう違うのですか?
A. 「入ってきた音を増幅させるという基本的な部分は同じですが、補聴器は安全性や効果など一定の基準をクリアしている医療機器です。それに対して集音器は、基準や制限がないので家電扱いとなります」(にじいろ補聴器店長・千葉さん 以下千葉さん)。
集音器の方が価格が安く手に入れやすいが、利用者に合わせて細かい調整ができないなどの注意点もある。2つの違いを理解してから購入することが大切だ。
Q5:補聴器はどこで買えますか?どんな店を選ぶのが安心ですか?
A. 全国の補聴器販売店の総数は約8000店。
「補聴器専門店、メガネ店、補聴器を扱う耳鼻科など形態はさまざまですが、認定補聴器技能者がいる店舗や認定補聴器専門店を選ぶことをおすすめします」(リオン社・太田昌孝さん 以下太田さん)。
認定補聴器専門店には、公益財団法人テクノエイド協会による4年間の講習後、試験に合格した認定補聴器技能者がいて、一定の施設基準が満たされている。
Q6:医療費控除などの優遇措置は受けられますか?
A. 日本耳鼻咽喉科学会が認定した補聴器相談医が診断して、補聴器が診療のために必要であると証明された場合に、購入した補聴器の費用が医療費控除の対象になる(一般に支出される水準を著しく超えない金額に限る)。
「最近は補聴器の購入費用の助成制度を始める自治体も増えてきました。購入する前にお住まいの自治体の制度を確認するとよいでしょう」(千葉さん)。
Q7:補聴器の価格の目安やランニングコストはどのくらい?
A. 補聴器メーカーのカタログを見ると、片耳60万~100万円といった高額商品もラインアップされていて驚かされるが…。
「最も売れ筋は片耳15万~20万円です。ご購入後、1~2週間ごとに空気電池(1個約100円)を交換する必要があります。また、1~3か月に1度の定期メンテナンスをおすすめしていますが、調整料金は通常いただかないことが多いです」(太田さん)。
Q8:補聴器の寿命はどのくらい?
A. 一般的な補聴器の耐用年数は5年が目安とされる。その理由は、
「補聴器は朝起きて夜寝るまで、入浴時以外は1日十数時間使われ、体に直接身につけるため、部品が劣化しやすいのです」(太田さん)。
5年目安で修理や買い替えが提案されるが、5年で必ず壊れるわけでなく長持ちする場合も。
教えてくれた人
内藤泰さん / 神戸市立医療センター中央市民病院・総合聴覚センター長、太田昌孝さん / リオン社・医療機器事業部 事業戦略室室長、千葉星雄さん / にじいろ補聴器店長・認定補聴器技能者
取材・文/北武司、山下和恵、藤岡加奈子
※女性セブン2023年3月2・9日号
https://josei7.com/