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認知症の母が洗濯機に紙パンツを入れてしまう! 困った息子が試した赤ちゃん用アイテムの効果

 岩手・盛岡で暮らす認知症の母を遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。母の認知症がじわじわと進行し、できないことが増えていく中で、色々な道具を駆使して母が自分で生活できるように工夫をしてきた。しかしここ数年、洗濯にまつわるある問題に悩まされてきたという。そこで工藤さんが洗濯機に試したある工夫とは?

 60年以上にわたって、家族や自分の衣類を洗濯し続けてきた母。認知症を発症してから10年が経過しても、自分の力で洗濯機を操作できていたのですが、最近になってわたしやヘルパーさんが洗濯するようになりました。なぜ、そのようになったのでしょう?

認知症の母の「洗濯」にまつわる困った問題

 わが家では、20年以上前の全自動洗濯機を使い続けてきました。古い洗濯機を途中で買い替えなかった理由は、たとえ認知症が進行しても、使い慣れた洗濯機であれば母自身で洗濯できると思ったからでした。

 しかし認知症が進行するにつれ、洗濯のトラブルが頻発するようになっていきました。例えば洗剤を投入せずに洗濯したり、洗濯機の電源を切って脱水を途中で終わらせたりするなどのトラブルです。

 それでも黙って様子を見守っていたのですが、次第に洗濯してはいけないものを洗濯するようになっていったのです。その中でわたしを最も苦しめたのは、尿パッドです。

 尿パッドを洗濯するとパッドが破れ、中から大量の吸水ポリマーの粒が出てきて、洗濯物や洗濯槽にびっしりと付着します。

 付着したポリマーは手で取り除いて、洗濯をやり直す必要があります。また洗濯槽のポリマーも取り除かないと、次回の洗濯時に付着するため、洗濯槽の掃除も必要です。結局、すべて復旧するのに、2時間近く時間を取られてしまいます。

 母が尿パッドを洗濯しないよう、口頭で注意したり、洗濯機近くに貼り紙を貼ったりするなどの工夫を繰り返してきました。効果はあったものの完全には防げず、母は尿パッドを洗濯し続け、わたしやヘルパーさんは洗濯のやり直しに追われました。

 最近になって母の失禁対策に変化があったため、更なる工夫が必要になったのです。

リハビリパンツに切り替えたら新たな問題発生!

 母には尿パッドではなく、リハビリパンツ(以下、リハパン)を1日中履いてもらうようになりました。夜間だけでなく、日中の不意の失禁も増えてきたのでリハパンに切り替えたのですが、新たな問題が発生しました。

 母はリハパンを、布のパンツのように扱ってしまうのです。そのため失禁したリハパンをゴミとして捨てずに、布のパンツのように洗濯機に入れてしまいます。そして洗剤を入れ、洗濯機を回してしまいます。

 尿パッドよりも尿をたくさん吸収できるリハパンは、吸水ポリマーの量も当然多くなります。結果として、尿パッドの時よりも大量の吸水ポリマーが洗濯機の中で散乱し、復旧に要する時間がさらに増えてしまったのです。

 遠距離介護中なので、わたしだけがポリマーの対応をするわけではなく、ヘルパーさんまでも、巻き込むことになります。洗濯以外にも、調理や掃除、買い物などの仕事があるヘルパーさんには、ポリマーを丁寧に取り除く時間はありません。

 何かいい手はないかと考え、ある商品をAmazonで購入し、試してみました。

洗濯機のふたに試してみた赤ちゃん用のアイテム

 購入した商品は“ベビーガード”です。名前のとおり、本来は赤ちゃんがいたずらしないよう防止するための商品で、冷蔵庫や引き出しなどを開けて、物を誤飲しないようガードするために使います。8本入りで、1680円で購入しました。

 ベビーガードは鍵でロックするタイプと、つまんで解除するタイプがあります。鍵を紛失してしまうと洗濯できなくなる恐れがあったので、わが家ではつまむタイプを購入。ベビーガードについていた両面テープをはがし、洗濯機の本体とふたに取り付けました。

 ベビーガードを取り付けたあと、何も言わずに母の洗濯の様子を見守ることにしました。

母は汚れたリハパンを洗濯かごへ入れてくれた!

 いつものように、汚れたリハパンを洗濯機に入れようとする母。しかしベビーガードに阻まれ、洗濯機の中には入れられません。諦めた母は、洗濯機の真横に新しく設置した洗濯かごにリハパンを入れるようになりました。

 わたしやヘルパーさんは洗濯かごのリハパンをゴミとして廃棄するだけでよくなり、母のリハパンの洗濯はなくなりました。他にも母はトイレットペーパーを畳んで、ポケットに入れて持ち歩く習慣があって、誤って何度も洗濯して紙まみれになっていたのですが、その問題も解消されました。

 この対応は、母が自分で洗濯する機会を奪うことでもあるので、正直葛藤はありました。しかし10年以上、吸水ポリマーやトイレットペーパーと戦ってきたのも事実で、すでに背に腹は代えられないところまで来ていました。

 余計な仕事を増やす母に強くあたってしまい自己嫌悪に陥る日もありましたが、今後はこの洗濯に関しては優しい介護者になれる気がします。

 今日もしれっと、しれっと。

●「今日は何日?何曜日なの」と何度も聞いてくる認知症の母に息子が用意した道具と使い方

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工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(79歳・要介護3)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

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