新しい葬儀の形「ドライブスルー葬儀」ほか注目のエンディングビジネスを専門家が解説
コロナの影響で最近の葬儀は親・きょうだいなどの少人数で行う「小さな葬儀」が増えている。葬儀の縮小化が進む今、見直されているのが「自宅葬」だ。さまざまな事情で自宅で看取ることが難しいご家族向けに、自宅葬専門葬儀サービスを立ち上げたという前田陽汰さんに話を伺った。三密が防げると注目を浴びているドライブスルー葬儀も合わせてご紹介する。
最後は自宅でという思いが叶う「自宅葬」
人生の最期を自宅で迎えたいと望む人は約80%いる(※)が、実際のところ、昨年、自宅で亡くなった人の割合は34.1%だった。
「自宅で看取られたい、看取りたいと思っても、さまざまな事情から実現できない。そうしたご家族に、『葬儀であれば、ご自宅に帰してあげられます』と提案したくて、自宅葬専門葬儀サービスを立ち上げました」
そう話すのは、死をテーマに体験イベント「棺桶写真館」などを企画・運営する『むじょう』(東京都目黒区)代表の前田陽汰さんだ。
「旅立ち前のひとときを自宅でゆっくり過ごすことができる自宅葬は、葬儀の縮小化が進んだいまこそ見直される選択肢であると考えています。安置中に弔問客を招くこともできますし、一緒に暮らしてきたペットと最後のお別れをすることもできます。ご自宅なら自分たちのペースでゆっくりと制限なくお見送りできるのです」(前田さん・以下同)
葬儀場での葬儀に幼い子供たちを参列させるのはためらわれても、自宅葬なら気兼ねなく、折り紙を折ったり、お絵描きやメッセージを書いたりして、棺に入れることができる。形式にとらわれることなく、喪服でも平服でも、家族らしい見送り方ができるのも利点だ。
「1週間以内でしたらドライアイスによる保冷でご遺体の状態を保つことができますし、メイクの技術でご遺体を生前同様に整えることも可能なので、きれいなお姿でお見送りできますよ」
(※)『人生の最終段階における医療に関する意識調査』(2017年、厚生労働省)による。
「自宅から見送りたい」を叶える
「人生の門出はご自宅から」と、自宅で故人の遺志を尊重し、家族らしいお別れができる「自宅葬」をサポートする。安置や見送りに必要な「基本プラン」は1つのみで、6畳の広さがあれば自宅葬に対応できる。
■自宅葬のここ
住所:東京都目黒区(対応エリア:東京都と神奈川県・埼玉県・千葉県の一部)
料金:基本プラン 43万8000円 搬送(~20km:車庫から安置場所・安置場所から火葬場)、役所手続きの代行、棺/棺用布団、納棺、思い出コーナー、骨壺セット、会葬礼状20枚まで、ドライアイス3日分、ミニブーケ10束、運営スタッフ2名
注目されるドライブスルー葬儀
車に乗ったまま葬儀に参列、焼香ができる葬儀場『上田南愛昇殿』(長野県上田市)がオープンしたのは、2017年12月のこと。高齢者や体の不自由な人たちの、葬儀に参列する負担を減らそうと考えての試みだが、コロナ禍のいま、「三密」を避けられるとして注目されている。
車上焼香システムの専用レーンにある受付台で、タブレット端末や帳簿に記帳し、香典をスタッフに渡して焼香を行うのだが、モニターが設置されており、葬儀場内の様子を見ることができ、喪主や参列者も焼香する人の姿が確認できる。参列している実感を得られるシステムだ。
ドライブスルー焼香ができる
1日1組の完全貸切型家族葬会館。最大50名(コロナ対応30名)のホールがあり、全国初の車上焼香システムを設置。電話番号を入力するだけで住所・氏名が印刷された会葬受付カードが発行される自動受付もある。
■上田南愛昇殿
住所:長野県上田市神畑680-6
料金:家族葬 伊吹~いぶき~63万8000円(会員価格38万2800円) 寝台車(同一市内50km以内)、棺(布張り)、ドライアイス(8kg)、ラストメイク、安置室1日、納棺の儀、通夜・葬儀会場、骨壺セット、遺影、追憶写真、納棺花、斎場花、位牌、後飾りなどが含まれる(お迎え→ご安置→通夜式→火葬→葬儀のプラン)
おくやみコーナー設置で死後の手続きをワンストップ化
家族や親族が亡くなると、死亡届の提出や年金受給の停止などの手続きが必要となる(下記チャート参照)。大半は居住地の役所に届け出るが、担当する課が異なれば役所内を何度もあちこち移動しなくてはならず、悲しみを抱えた遺族には心身ともに負担が大きかった。
だが、これらの手続きをワンストップで受け付ける「おくやみコーナー」を設置する動きが全国の自治体で進んでいる。2018年度は全国でわずか6自治体だったが、2020年度には169自治体と急増。東京都目黒区も11月1日に開設した。
手続き一覧や窓口をまとめた「おくやみハンドブック」を配布しているところもあるので、自治体のホームページなどで確認してみよう。
■死亡に伴う主な手続きリスト
届け出・手続き → 届け出先 → 期間
(※)届け出先の部課所名は、自治体によって異なる。
・死亡届 → 故人の本籍地または死亡地の役所 → 7日間
・世帯主変更 → 戸籍住民課 → 14日以内
・マイナンバーカードなどの返却 → 戸籍住民課 → なし
・健康保険関係の手続き → 加入先 → 14日以内(国保の資格喪失届)
・国民年金関係の手続き → 国保年金課、年金事務所 → 14日以内
・厚生年金など → 年金事務 → 10日以内
・高齢者福祉の関連の手続き → 高齢福祉課 → なし
・公共料金などの手続き → 各契約先 → 速やかに
・税金関係の手続き → 納税課、資産税課など → ―
・限定承認や相続放棄 → 家庭裁判所 → 3か月以内
・故人の準確定申告 → 納税地の税務署 → 4か月以内
・相続税申告・納税 → 納税地の税務署 → 10か月以内
教えてくれた人
前田陽汰さん/むじょう・代表 https://www.mujo.page/
取材・文/山下和恵
※女性セブン2022年12月1日号
https://josei7.com/
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