高齢者住宅に住み替えるタイミングはいつ?種類や暮らし方、予算に合う選び方を専門家が解説
高齢者向け住宅は、「家族に負担をかけずに済む」「戸建ての管理から解放される」「介護職員や看護師がいて心強い」といったメリットがある。どんな種類があるのか?選び方や住み替えのベストタイミングなど、ファイナンシャルプランナー・畠中雅子さんに教えてもらった。
高齢者住宅選びは見学に歩き回れる74才頃までに
ファイナンシャルプランナー・畠中さん(59才)は、「万が一のとき、家族に迷惑をかけたくない」「仕事にも役立つ」などの思いから、30代から300回以上に及ぶ高齢者向け住宅・施設の見学を行ってきた。
「私の場合は早いですが、見学に歩き回れる74才頃までには準備をした方がいいでしょう」(畠中さん・以下同)
高齢者向け住宅は「自立型」「介護型」がある
高齢者向け住宅には大別して、元気なうちから入れる「自立型」と、要介護度がついてから入る「介護型」がある。
■「自立型」
「前者の『自立型』は主に、サービス付き高齢者向け住宅(以下・サ高住)、一般型ケアハウス、高齢者グループリビングなどがあり、毎月支払う費用は月々の家賃やサービス料など。最近では別途介護サービスを契約すれば看取りまで対応してくれる『サ高住』も増えていますが、基本的には介護が必要になれば、介護型の住宅に再度住み替える必要が生じます」
つまり、“終の棲家”にはなり得ず、もう一度住み替えが必要になる。
■「介護型」
後者の「介護型」には、高額な初期費用が必要な介護付き有料老人ホーム(以下・介護付有老)、特別養護老人ホーム(以下・特養)などがあり、月々の費用には居住費と介護サービス費が必要になる。持ち家暮らしでも賃貸暮らしでも、結局最後は、ここに住み替えることになる。
住みかえるタイミングは?
「賃貸住宅に住んでいる人は、要介護3になってから『特養』に住み替えるのが一般的です。民間の賃貸物件に住み、高い家賃を払い続けることを考えれば、元気なうちに『ケアハウス』に住み替えておくのも、家賃を抑えるという点ではおすすめ。入居後に要介護3になったら、『介護型ケアハウス』に移り住むか、『介護型ケアハウス』を併設していなければ『特養』に申し込み、空きが出たら住み替える方法もあります」
賃貸住宅に住んでいる場合、介護費用がかさんできたら、「介護型ケアハウス」や「特養」に住んだ方が支出が少なくて済むケースが多いという。いずれにせよ、年金などの収入から支払える施設を選ぶことが大前提だ。
暮らし方と予算に合った住まい選びを!
高齢者住宅の種類と特徴をまとめた。どんな種類があるのか確認してみよう。
■サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
バリアフリー設備が整った賃貸借契約型住宅。主に要介護度の低い高齢者を対象としている。安否確認や生活相談などの生活支援サポートを受けながら自由度の高い生活を送れる。施設によっては夜間見守り、食事提供、医療措置、介護、看取りまでしてくれるところも。費用目安は入居費用が数十万円程度、月額利用料が15万~30万円程度。
■ケアハウス(軽費老人ホームC型)
食事と生活支援サービスを受けられる施設。要支援2までの自立した高齢者が入れる「一般型」、要介護者向けの「介護型」、2つが合わさった「混合型」がある。費用目安は、「一般型」の場合入居費用が0~数十万円程度、月額利用料が食事付きで約7万円~。
■高齢者グループリビング
原則的には自立した高齢者が集まって互いに協力しながら暮らす少人数制の共同住宅。各人個室が確保され、浴室や玄関などの共有スペースがある。いわば高齢者向けシェアハウス。
■認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症の高齢者を対象とした少人数制の介護施設。
■特別養護老人ホーム(特養)
入居条件は要介護3以上。身体介護だけでなく、掃除や洗濯などの生活支援やリハビリテーションも受けられ、重度の認知症患者にも対応。月額費用の目安は15万~16万円だが、住民税非課税世帯など低所得者は、預貯金資産や所得の条件をクリアすれば、「特定入所者介護サービス費」制度で部屋代や食費が軽減され、7万~8万円程度に。
■介護付き有料老人ホーム(介護付有老)
介護職員や看護師が24時間365日体制で常駐しており生活支援や健康管理、介護サービスも受けられる。認知症患者や重度の介護が必要な人まで受け入れてもらえる。初期費用と月額利用料は高齢者住宅の中で最もかかり、高額なところでは初期費用が数億円かかるケースも。
何度も足を運んで見学や体験を
ある程度の自由さがほしい場合、元気なうちは「サ高住」に住み、要介護状態になったら「介護付有老」に住み替えるのが一般的だという。ただし、初期費用がかさむ。
「『介護付有老』は、初期費用に加え、月々の利用料も高額なケースが多いです。ただし、地方なら月14万~17万円程度で入れる施設もあります。これは、軽減措置を受けられない人が『特養』に払う月額利用料とほぼ同額。安さを理由に『特養』を申し込むなら、同額程度で入れる『介護付有老』を探すことも視野に入れるといいと思います」
それでも、「介護付有老」は比較的高額。長生きして貯蓄が底をつく不安もぬぐえない。
「『介護付有老』のほか『特養』も経営している地方の事業者の中には、『介護付有老』の月額利用料が払えなくなった人に、自社の『特養』に住み替えてもらうところもあります。見学時に、“月額利用料を払えなくなった人はどうしているか”を聞いてみましょう」
時間がない中で住まいを決めると見誤るリスクが高まる。気になる場合に何度も足を運んで見学できるよう、74才までには住まい選びを始めよう。