安心して乗れる「いい介護タクシーの事業者」を見極める6つのポイントを専門家が解説
介護タクシーは介護が必要な人や体が思うように動かない人にとって便利な移動手段だが、その活用法は意外と知られていない。そこで現在母親を介護中の介護ポストセブン編集長が介護タクシーに詳しい専門家を直撃。介護タクシーのいい事業者を見極める方法について聞いた。
いい介護タクシーの見極め方6選
「介護タクシーは、使い方次第で行動範囲が広がりますし、病院などの送迎や買い物など、便利に活用できます。いい事業者さんとの出会いがポイントになってきます」
こう語るのは、介護タクシーの情報を発信するサイト『介護タクシー案内所』を運営する滝口淳さんだ。介護タクシーを使うとき、どんなことに注意すべきなのか、編集長の関(以下、関)が気になることを滝口さん(以下、滝口)に聞いてみました。
1.電話の対応が悪い事業者はやめたほうがいい
関:どんな風にタクシー事業者を探せばいいのでしょうか?
滝口:介護タクシーの事業者は、ホームページを持っているところもありますし、料金などが記載されたパンフレットを作製しているところもあります。
病院のソーシャルワーカーさんや、介護事業所、市区町村の福祉課や、社会福祉協議会などでも情報を教えてくれると思います。
直接問い合わせた際、料金や使い方をしっかり説明してくれる事業者さんを選んだらいいと思います。対応が悪い事業者はその時点でいいサービスを提供していないと考えて、別の事業者を探したほうがいいですね。
2.ホームページの情報がすべてではない
関:ホームページでは、どこをチェックすべきでしょうか?
滝口:ホームページに料金など細かい情報が載っているかチェックしてください。
ただし、開業時に力を入れて作ったホームページでも、介護タクシーの仕事が忙しくなり、ホームページの更新までなかなか手が回らずに情報が古かったりする場合もあります。
ホームページが充実していないからといって、一概に悪い事業者とは言えません。気になる介護タクシーには電話で話を聞いてみましょう。
3.介護者の状況を明確に伝える
関:介護タクシーを依頼する際に、事業所にはどんなことを伝えたらいいでしょうか?
滝口:乗車される方の身体状況や、自宅の場所・造りや設備、行き先の場所や建物の説明をしっかり伝えることが大切です。
たとえば、「母は要介護2で、車いすを使っていますが、上半身はしっかりしています。自宅は1戸建てで、母は2階の寝室にいます。1階まで階段で降りたあと、玄関に段差があって道路に出るまでは車いすは使えません。
自宅前の通りは狭いので、10メートルくらい離れたところに車をとめてください。行き先は●●病院です」などと、細かい説明をするといいでしょう。
介護タクシー事業者は、自宅からタクシーまでの移動に、ドライバーのほかに介助者が必要なのか、ストレッチャーや担架といった器材や設備の準備が必要かどうかの判断ができて、料金にかかわる説明もしやすくなります。
いい事業者さんなら、利用にあたってポイントを押さえた質問をしてくるはずです。
4.料金説明が不明瞭な介護タクシーは要注意
関:介護タクシーの料金体系は決まりがあるのでしょうか?
滝口:介護タクシーの料金は、一般的なタクシーと同じで距離と時間によって「運賃」がかかりますが、車いすが乗せられるリフト付きの大型車両などは、初乗り料金が通常より高くなります。また、事業者さんによっては「予約料」や「迎車料」がかかる場合もあります。運賃については、時間制のみで料金を設定している事業者さんもいます。
運賃以外の料金は事業者さんが自由に決めていて、とくに決まりはないんです。たとえば、ベッドなどから車いすに移乗するなどの「介助料」、車いすやリクライニング車いす、ストレッチャーなど「器材使用料」もかかります。
「介助料」は、だいたい1000円前後のところが多いようです。利用する前に事前にざっくりとした見積もりを聞いておくと安心です。料金の説明が不明瞭な事業者さんには注意した方がいいですね。
パンフレットを作っている事業者さんも結構いるので、そこに料金が明示されているなら安心です。領収書は明細が印字できる機器を使っている事業者さんもいます。金額だけの領収書をもらって疑問に思ったら、内訳を聞いてみるといいでしょう。
5.介護保険「外」サービスなら使い方は自由「家族も同乗できる」
関:利用時に注意しておくことはありますか?
滝口:介護タクシーを介護保険で使う場合には、ケアプランに組み込んだ上で、「通院等乗降介助」という項目でケアマネを通じて手配します。基本的にケアする人や家族は同乗できないのがルールです。
一方、介護タクシーを一般的に使う場合は、介護保険外サービスなので、病院の送迎だけでなく、買い物でも、旅行でも、利用者さんの目的に合わせて使うことができます。もちろん家族でも友人でも一緒に乗ることができます。
6.民間救急の認定を受けている介護タクシーはさらに安心
関:車いすに座れない状態、寝たきりなどでも利用できるのでしょうか?
滝口:介護タクシーの車種によって、リクライニング車いすやストレッチャーを乗せることもできるので、座位を保てなくても乗ることができます。
また、介護タクシーのほかに、民間救急(患者等搬送事業)を展開しているところもあります。民間救急の認定を受けている事業者は、医療搬送に対応した器材が揃っていて、講習を修了したドライバー(患者等搬送乗務員)が在籍しているので、より安心してお任せすることができます。
関:自家用の福祉車両がないからと、移動をあきらめてしまっている人もいるかもしれません。
わが家の場合も、母が車いすのまま乗れて、家族みんなで一緒に外出できるかも。通院だけじゃなくて、買い物やレジャーなど、今後は積極的に情報収集し、介護タクシーを活用していきたいと思います。ありがとうございました!
教えてくれた人
滝口淳さん
株式会社Plan to Create代表取締役。タクシー広告専門の広告代理店を経て、起業。タクシーを使った広告やプロモーションをはじめ、ウェブサイト「介護タクシー案内所」を運営し、介護タクシーの情報を伝える活動を続けている。介護タクシーの啓蒙と利用促進、業界全体の発展のため、全国を飛び回る。https://caretaxi-net.com/