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健康

あなたの「歩幅」は何センチ?歩幅が狭いと認知機能低下リスク3.39倍【専門家解説】

 外出の機会が減少したコロナ禍は、歩く時間や歩数も大幅に減り運動不足に悩む人が急増した。限られた“歩く時間”を最も有意義に使うには、“歩幅”が重要だという。健康維持やダイエットにも有効な「歩幅」は何センチなのか。歩幅を広げる歩き方のコツを、専門家に教えてもらった。

プラス10cmの歩幅で健康効果&頭の働きもアップ

 健康維持のためにも、歩くことは最も効率的でかつ誰でもできる運動だ。しかし、ダラダラと歩いていても、効果は期待できない。大事なのは歩く姿勢と歩幅だ。

 その重要性を広く知らしめ、健康管理に活かしてもらおうと、こんな取り組みを行う自治体もある。三重県いなべ市ではいつもより10cmプラス歩幅を広くして歩くプロジェクト『いなべStep+10cm』を実施。市役所のエントランスの床に貼られた歩幅シートは自分の理想的な歩幅がわかるようになっている。

 歩幅を広くして歩くと、筋力がアップし運動効果が上がるというのだが、歩幅の重要性はそれだけではない。頭の働きにも大きな影響があると指摘するのは国立環境研究所環境疫学研究室主任研究員の谷口優さんだ。

「複数の研究成果をまとめた論文から、歩行機能が低下した状態が骨折や認知機能の低下、心疾患のリスクになることが報告されています。また、われわれの研究では、歩幅が広い人に比べると、歩幅が狭い人の認知機能低下リスクは最大で3.39倍でした」(谷口さん・以下同)

理想の歩幅の目安は“65cm”

 歩幅が狭いと感じる人はいまから歩幅を広げても、まだ間に合うのだろうか。

「年齢に関係なく、歩幅の改善による効果は期待できます。歩幅の狭さは脳の状態と密接に関係していて、年齢に関係なく歩幅を広げることで脳に刺激が加わります。自分の歩幅が狭いと感じている人は、すぐにでも広げる意識をすることです」

 では、どれくらいの歩幅で歩けばよいのか。

「歩幅は年齢とともに狭くなりますし、性別や身長によっても影響されますが、共通して目安になるのが“65cm”です。横断歩道の白い線が約45cmなので、それを踏まずに越えられれば、かかとからかかとまでの距離が65cm以上となるのでわかりやすいでしょう」

 実は、歩幅を改善すれば認知機能だけでなく、さまざまな不調も改善することができるという。

骨盤を正せば自然と歩幅が広がる

 歩幅が広がると姿勢がよくなり、それがさまざまなメリットを生み出すと言うのは猫背矯正マイスターの小林篤史さんだ。

「歩幅が狭いと股関節周辺の筋肉が固まってしまいます。股関節は本来、可動域が広いのですが、日常生活であまり使われないと固まってしまい、歩幅が狭まる原因になります。そうなると歩き方が不格好になるだけでなく、あらゆる体の不調も生まれやすくなります。一方で、歩幅を広げて歩くと自然と姿勢がよくなります。大股気味に歩くことが本来の正しい歩き方であり、これを意識することで、筋肉が正しく使われるからです」(小林さん・以下同)

 歩幅を広くして歩くと、自然と骨盤が正しい位置で立つ。これが最も理想的な姿勢だと小林さんは続ける。

「骨盤が正しい位置で立つと、股関節の可動域も広がり、歩くことが楽になります。また、姿勢がよくなることでストレス軽減に一役買う脳内ホルモンのセロトニンの分泌が促進することもわかっています」

 ただし、姿勢をよくしようとして、腰をそらせるのは逆効果になる。

「腰をそらせると猫背になりやすく、顔が前に出てしまい骨盤が前傾します。そうなると股関節の前側の部分が硬くなりやすく、血流が悪くなり、体の不調につながります。意識するのは“骨盤を立たせること”と心得てください」

3つの歩き方を各1分ずつ、計3分行えば歩幅が広がる

 では具体的にどのように歩けばよいのか。3つの歩き方を各1分ずつ、計3分行ってみましょう。

【ステップ1】お尻押さえ歩き

 両方の手のひらをお尻に当てる。このとき、お尻の横側ではなく、後ろ側に当てること。手のひらで軽くお尻を押して、お尻の筋肉が動いていることを感じながら1分間歩く。

<ポイント>

・力は入れなくてOK!

・1~3とも、骨盤が立っていることを意識する

・大股でかかとから着地させる

【ステップ2】お腹押さえ歩き

 お腹を軽く引き上げるように両方の手のひらをへその下に当て、1分間歩く。強く押してお腹を圧迫するのはNG。骨盤を立てて上体を起こし、下腹部に軽く力を入れて歩くこと。

<ポイント>

・へその下を軽く両手で押さえる

・歩幅は大きく!

【ステップ3】だら~ん歩き

 肩の力を抜き、両腕をだらりと垂らす。肩まわりが脱力した状態のまま、自然に腕を振って1分間歩く。リラックスすることが大切だが、背中が丸くなるのはNG。姿勢よく歩こう。 

<ポイント>

・ストンと肩を下ろして脱力させる

・力を入れずに自然に手を振る

・歩幅は大きめに!

※イラストは『歩くだけで効く!おさんぽ整体』(小林篤史著/三笠書房)を参考に作成

「ステップ1ではお尻に両方の手のひらを当てて1分歩いてみましょう。自然と背筋が伸びているのがわかるはずです。このとき、骨盤が立っていることをイメージして歩くようにします。ステップ2ではお腹に両手を当てて、1分歩きます。下腹部がポッコリとふくらんでいる人は、そこを軽く押し込みながら歩くこと。このときも骨盤が立っていることを意識します。ステップ3では肩の力を抜いて、両腕をだらんとしながら1分歩く。肩の力を抜くことで、筋肉の緊張がゆるみ、コリが解消します。ステップ1~3まで合計3分間。体を整えることを目的としているので、3分で充分です。これを私は『おさんぽ整体』と名付けています」

 この方法で3分間通して歩いてみると、自然と背筋が伸び、歩幅が広がっていることがわかるはずだ。

「さらにそこから5cm先に足を踏み出すことを意識してください。そうすることで股関節まわりの筋肉がスムーズに動くようになり、体全体の筋力がアップします。この歩き方を意識するようになってから、杖を使わなくても歩けるようになった80代の男性もいます」

 歩幅を広くし、骨盤が正しい位置になることで、うれしい変化も感じられる。

「この歩き方を2週間続けたことで、ウエストが3cm減った人もいます。これは骨盤が立つことで、内臓が本来の位置に収まり、ぽっこり出た下腹が改善されるからだと考えられます」

家の廊下でもOK

 1日3分ならば、家の中で歩いてもOK。
 
「雨の日や気温が高くて散歩ができないときは、家の廊下を歩くのでも構いません。大事なのは毎日続けて、骨盤の位置を正しくすることです」

 歩幅が広がると、歩く速度も速まり、運動効率も上がる。

「糖尿病やメタボなど生活習慣病の改善、脂肪燃焼を目的とするならば20~30分のウオーキングが必要となります。ただ、それも正しい姿勢と歩幅を大きくしないと効果は発揮されません。まずは3分間、この歩き方から始めて、徐々に歩く距離と時間を増やしていくといいでしょう」

 ただし、大きく前に一歩踏み出そうとして痛みを感じたり、体がうまく動かないと感じたら医療機関に相談を。

「歩幅が狭まっている原因に脳梗塞が隠れている可能性があるからです。脳梗塞はいきなり倒れるのではなく、日常生活の中で徐々に体が動きにくくなったりするものです」(谷口さん)

 大きく一歩を踏み出し、健康な体を手に入れよう。

イラスト/飛鳥幸子

※女性セブン2022年9月1日号
https://josei7.com/

●50才以降歩く速度が落ちる!中高年におすすめ「ファストウオーキング」の正しい方法

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