戸建リフォームのトラブル実例に学ぶ失敗しない業者選びや手順、費用相場【専門家解説】
戸建住宅を所有していればリフォームは避けて通れない道と言っていい。しかし、リフォームにまつわるトラブルも多く聞かれる。そこで、リフォーム会社選びをサポートするサイト「リフォームガイド」と、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」で実際にあった相談事例をご紹介します。失敗・トラブル実例に学ぶ、戸建リフォームの成功のポイントを専門家にアドバイスいただきました。
「リフォームガイド」に届いた部位や間取りに関する失敗例6
リフォームをする箇所や間取りに関する失敗例について、リフォーム業者の紹介や見積書の提出までサポートしてくれる「リフォームガイド」の鈴木信彦さんが解説とアドバイスをしてくれました。
【失敗例1】「対面キッチンにしたら、リフォーム前と比べて狭くなり、使いづらくなってしまった」
対面キッチンに憧れる人も多いが、実際にリフォームしてみたら思わぬ不具合もあるという。
「対面キッチンは壁付けキッチンより面積を要するため、以前より使い勝手が犠牲になったという声が多いのです。通路のスペースは、できれば90cm程度確保しておきたいですね」(鈴木さん・以下同)
【失敗例2】「システムキッチンを導入するだけのはずが、想定外の床の張り替えが必要になった。安い床材を指定したら、キッチン全体が安っぽい仕上がりになってしまった」
「『システムキッチンの交換だけでOK』と依頼者は思っても、古い壁紙や床のままでは、ピカピカのキッチンだけが浮き上がってしまいます。
また、キッチンのサイズが変われば、壁紙も併せて変える必要がある。リフォーム業者が追加の提案をするのは、一概に値段をつり上げるためでもないんです。リフォームが逆効果にならないよう、想定外の費用も考えておきましょう」
【失敗例3】「ショールームで確認したはずの便器が大きすぎて、トイレが窮屈に」
その対策として、希望の便器の寸法を確認し、現状のトイレに置いた想定でシミュレーションをすること。
【失敗例4】「洗面台の高さが高すぎて、ひじから水が伝って床が濡れる!」
これもよくある失敗例だが、家族で身長差がある場合はスタンダードの80cmにするか、背の低い人に合わせるといい。ショールームで現物を確認する際は、靴の高さを考慮に入れることも覚えておこう。
【失敗例5】「二世帯住宅の玄関やキッチン、風呂を共有にしたら使う時間帯が合わず、生活音が気になる…」
「二世帯住宅は建築費や家賃、光熱費の面で節約になる半面、ライフスタイルの違いから、お互いにストレスがたまってしまうことも。事前に二世帯住宅の長所と短所を調べ、分けるべきところは分けた方が、後々楽でしょう」
【失敗例6】「おしゃれで開放感のある吹き抜けのリビングにしたところ、掃除がしにくく、光熱費もかさむ」
デザイン重視も危険だ。吹き抜けを希望するならまずは自宅の断熱性能の確認を。低いと想定外の光熱費がかかるそうだ。
「失敗しないためには、やはり悩みに的確に応えてくれるリフォーム業者選びが重要ですが、依頼側にも気をつけたい点があります」
その1つ目は、見積もりだ。「電話で話しただけで『で、だいたいの見積もりはいくら?』と、即答を求めるかたがけっこういらっしゃるのですが、見積もりはすぐには出ません。きちんと現地調査をし、希望の箇所以外にも不具合がないかを調べたうえで、初めて見積額が提示できるのです。また、資材価格も都度変動します。即答できる業者がいたとしたら、それは参考にならない概算でしょう」
■戸建リフォームの費用相場
※価格は、『リフォームガイド』を通じてリフォーム事業者が提示した約1万件の見積書をもとに計上。ただし、ウッドショックやウクライナ危機以前の価格であり、現在の相場とは異なるため、参考程度に。(資料提供:リフォームガイド)
キッチン:77.5~138.2万円
トイレ:27.1~48.1万円
風呂・浴室:90.2~138万円
洗面:25.5~46.7万円
クロス(壁紙):8.7~22.5万円
和室:22.5~45.2万円
フローリング:19.6~45.2万円
玄関:19.3~46.2万円
外壁:79.2~137.6万円
外構・エクステリア:47.9~125.4万円
屋根:72.1~243.3万円
駐車場・ガレージ:48.1~69.4万円
ベランダ:24.2~74.8万円
バルコニー:24.5~71.2万円
全面:540.2~1080万円
住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられたトラブル実例3
住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」に寄せられる住宅相談件数は、2000年の業務開始以来、昨年3月末で38万件を超えた。
「トラブルに関するリフォーム相談のうち、約1割(2020年は約600件)は訪問販売によるもので、そのうち契約に関する相談が7割、『契約を解除したい』という要望が半数以上でした」と、同センターの岡田愛美さんは言う。
※住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられたリフォームトラブル例。
【トラブル例1】「訪問販売業者に『保険金が使えるから』と勧誘され、屋根のリフォーム工事契約を結んだが、自己負担が生じることが判明した」
「訪問販売では、『お宅の屋根、火災保険で直せますよ』と近づいてくるトラブル事例もある。自然災害で壊れたのではないのに『そうなの?』と安易に修理を依頼してしまうのです」(岡田さん・以下同)
保険会社の審査も厳しいので、当然全額下りないこともある。業者にクレームをつけても「契約済みだから」と代金を請求されるケースもあるという。
【トラブル例2】「『屋根の瓦がずれているので応急処置を』と訪問販売業者に言われ、作業を依頼。その後、屋根補修工事を契約してしまったが、見積額が妥当なのか不安」
「本当の自然災害で壊れた屋根を見て『ブルーシートをかけてあげる』と言い、後日、屋根工事の契約を強引に結ぼうとする業者もいます」と、岡田さんは言う。
では、その場合の対処法は?
「見積書を提示されても返事を保留し、『住まいるダイヤル』などに相談してください。契約してしまった場合も、8日以内ならクーリングオフが適用されますし、工事が始まってからも、何らかの対処法を提案できます。
例2のように見積書の判断がつかないかたに向け、当方では『見積チェックサービス(無料)』も行っています。1級建築士の資格を持つ相談員が、図面と見積書を技術的観点からチェックし、見積書の見方や事業者に確認するポイントなどをアドバイスします」
さらに深刻な相談ごとであれば、対面による専門家相談(初回無料)もある。
【トラブル例3】「外壁塗装のリフォーム工事後1年弱で塗装がはがれた」
既存のシーリング材(目地やすき間を埋める材)を残したまま塗装を行った可能性がある。工事の契約内容にシーリング工事が計上されていた場合は債務不履行となり、補修の請求ができる場合もある。
「自然災害が多い昨今、リフォームは安全に暮らすために必要な対策でもあります。そこで、適切にリフォームを進める6つの手順を紹介します。
1つ目は、自分がリフォームしたい箇所を明確にし、優先順位をつけること。2つ目は、ゆとりを持った資金計画を立てること。築30年以上経た家は、想定以上にダメージを受けている場合があります。3つ目は事業者選び。4つ目に、リフォーム契約は口約束でも成り立ってしまうので、必ず契約書を取り交わし、設計図・仕様書、約款をもらうこと。5つ目は工事の進捗状況を報告させること。
不明点は現場の作業者ではなく、契約をした事業者の担当者に伝えます。最後は、事業者と最終確認を行い、建物の保証内容も確認してください」
業者の言いなりにならないよう、自衛の努力も必要だ。
■戸建住宅に住む人が抱えている主な不具合事象
主な不具合事象と割合、当該事象が多く見られる部位について、住宅リフォーム・紛争処理支援センターが調査しました(サンプル数3135人、複数カウント)。
主な不具合|割合|当該事象が多く見られる部位
雨漏り|17.4%|屋根、外壁
はがれ|13.9%|外壁、屋根
ひび割れ|11.2%|外壁、屋根
汚れ|10.5%|外壁、床
性能不足|10.0%|外壁、屋根
変形|7.9%|床、外壁
きず|5.3%|外壁、床、開口部・建具
漏水|4.6% 給水・給湯配管、設備機器
排水不良|3.4%|排水配管
作動不良|3.0%|開口部・建具、設備機器
その他傾斜(2.1%)、腐食・腐朽(1.6%)、床鳴り(1.1%)、異常音(1.0%)、異臭(0.7%)、結露(0.4%)、沈下(0.3%)、遮音不良(0.2%)
資料:住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅相談統計年報2021」より
教えてくれた人
リフォームガイド 鈴木信彦さん
■リフォームガイド
コンシェルジュが電話やメールで細かくヒアリングを行い、全国の優良なリフォーム業者の中から、相談者のニーズにマッチした業者を紹介。見積書の提出までをサポートする(すべて無料)。契約後、万が一、業者が倒産等の理由で工事が完了できなかった場合に完成まで無料でサポートするリフォーム完成保証まで付く。電話:0120-395-120(10:00~19:00/無休)https://www.reform-guide.jp/
住宅リフォーム・紛争処理支援センター 岡田愛美さん
■公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター
住まいるダイヤル(R)住宅に関する相談
電話:0570-016-100 または電話:03-3556-5147
電話受付 10:00~17:00(土・日・祝休日、年末年始を除く)
取材・文/佐藤有栄
※女性セブン2022年7月28日号
https://josei7.com/
●高齢化する戸建住宅のリフォーム「いつする?何が必要?」補助金活用法を専門家が指南