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暮らし

高齢者が安心・安全に使えるキッチン収納3つのポイント「包丁差しは見直すべき」|矢野きくのさん

 毎日使うキッチンは「年齢とともに使いやすくアップデートすることが大切」と家事アドバイザーの矢野きくのさんは語る。包丁ひとつとっても収納の仕方によって事故の危険も。体に負担がかかる収納も改めておいたほうがいい。そこで高齢の親の家や、年齢を重ねたシニア期に備えて準備しておきたいキッチン小物や収納の注意ポイントについて教えてもらった。

シニアが使いやすいキッチンとは?

 年齢を重ねていくと、それまで当たり前にできていたことが、ふとしたときにできなくなっていたり、ミスしてしまったりすることがあります。それは筋力の衰えや、判断力の低下など様々な要因が考えられると思うのですが、「はい、今日からあなたはできなくなります」という境界線があるわけではないので、「気づかないうちにできなくなっている」というのが実情かもしれません。

 とくにキッチンでの家事は、毎日のことなので不便があっても気づきにくく、家の中でも最も多くの危険が潜んでいる場所でもあります。そのため、年齢や体調などそのときの状態にあわせたキッチンに変えていく必要があるのです。

 私自身、シニアという世代に入るにはもう少し時間はありますが、それでも体力の衰えを感じることもあり、今から気づいたところは、想定される危険を避けられるような環境にアップデートしています。

 そこでシニアにとって使いやすく、そして安全なキッチンとはどういうものなのか、提案してみたいと思います。

頻繁に使うものは姿勢を変えずに取り出せる位置へ

 キッチンの高い位置の収納には頻繁に使うものを入れる人は少ないと思います。その半面、意外と低い位置の収納には何も意識をせずにものを入れている人も多いのではないでしょうか。

 必要なものを低い位置に収納すると、腰をかがめたり、座ったりすることで体に負担がかかるものです。シンク下の収納に重たい鍋を入れておき、それを手にして立ち上がろうとしたときに態勢を崩したりすると怪我のもと。頻繁に使うものは、普段立っている姿勢のままで手に取ることができる位置に収納しておくのがベストです。

頻度によって収納場所を変える

 まずは、キッチン道具を使う頻度によって1軍、2軍、3軍に分けます。

 たとえば、1軍は、包丁やおたまなどの調理器具や毎日使う鍋など。2軍は、時々使う鍋やボウル、ザルなどもあるでしょう。そして3軍は、土鍋などの季節の調理器具やホップレートなどごくたまにしか使わないもの。1軍、2軍、3軍の仕分けができたら、次に収納場所を考えます。

 1軍は、姿勢を変えずに手に取れる場所へ、2軍は低い位置と手が届く高い位置、3軍は踏み台などが必要となる高い位置というように分けて収納していきましょう。

キッチン用品の収納で注意すべき3つのこと

 年齢を重ねるにつれ場所や収納方法を変えたほうがいいものもあります。

1.シンク下の包丁差しは危険

 まずは、包丁です。包丁はシンク下の収納の扉部分にある「包丁差し」に入れている人が多いのではないでしょうか。包丁差しに包丁をしまうとき、刃先だけ入れたつもりがしっかり刺さっていない状態でシュと手を離してしまったり、うっかり手がすべって落としてしまたったりする人も少なくないのです。

 やはり頻繁に使う包丁は、専用のケースや置き型の包丁差しに入れて調理台に置いておくほうが安全です。

カトラリーは壁掛けよりも入れ物タイプのほうが掃除がラク。愛用しているのはIKEAのスタンド『ORDNING オルドニング』https://www.ikea.com/jp/ja/p/ordning-kitchen-utensil-rack-stainless-steel-80179579/(写真提供/矢野きくのさん)

 ちなみに、おたまなどをコンロ横の壁にかけている人もいますが、壁の掃除をしにくくなるので、おすすめしません。壁の掃除は使ったその日にやれば10秒もかからずにできますが、壁にツールがかかっているとそれを取り外さす手間が増えてしまいますよね。

2.重たいものは軽いものへ

 土鍋や鋳物ホーロー鍋のように重たいものも、出し入れや洗うときに落としてしまう危険もありますし、そもそも重たいというだけで腕や腰に負担がかかることもあります。安全を考えるとステンレス等の軽い素材の鍋に変えるほうがいいでしょう。

3.割れるものは割れないものへ

 一般的な食器は落としたら割れます。どこかにぶつけて欠けていることに気づかず、使っているときに手を切ってしまうということも考えられます。落としても割れにくい、軽い素材の食器に変えるほうが安全です。

***

 キッチン周りでアップデートしようと思う環境が、自分ではなく親など身内の家の場合、強制的にやるのはできれば避けたいところです。食器が大好きで、若い頃からこだわりのある器に料理を盛り付けていた人に、いきなり「今日からこれを使って」と割れにくい食器を差し出しても受け入れてもらえないかもしれません。

 そこは上手に「危険だから」「体に負担がかかるから」など必要性を説明しつつ、相手の意思を尊重することも忘れずに。徐々に使いやすい環境にアップデートしてみてはいかがでしょうか。

執筆

家事・節約アドバイザー・矢野きくのさん

家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』、『「節電女子」の野菜レシピ!』など。https://yanokikuno.jp/

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