100才まで自分の足で歩ける体を作る!50代から始める簡単筋トレ「エキセントリック体操」
80代、90代でも元気に趣味や仕事を続けるアクティブなシニアが増えている。一方で、長年寝たきりのまま最期を迎える人とで、晩年の健康状態に大きく差が開いている。そこで、いくつになってもボケずに自分の足で歩ける“健康長寿”を目指して、50代からやっておきたい体操を紹介します。
脳も体も使い続けることが大切
介護生活に陥る要因としては、認知症、転倒による骨折、脳卒中、関節疾患などが挙げられるが、女性の場合は特に、認知症と骨折が多く、厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2016年)によれば、この2つが介護要因の上位を占める。
「平均寿命と健康寿命の差をいかに縮めるかがこれからの課題になります。この差のない人生を生きてこそ、充実の一生といえるのではないでしょうか。そのためには、運動や脳トレ、睡眠、食事など、さまざまな方面からのアプローチが必要です」
とは、認知症予防に詳しい精神科医の古賀良彦さんだ。脳を含めて人間の体は、常に使い続けることが大切なのだ。
漫然と暮らしていては、平均寿命と健康寿命の差は縮まらない。自分に合ったメソッドを見つけて実践し、“健康の蓄え”もしっかりしておきたい。
100才まで元気に生きるために今から始めたい、高齢者向けの筋トレ体操を紹介しよう。
筋肉に力を入れたまま伸ばす体操
寝たきりの主な原因は転倒による骨折。それを防ぐにはある程度筋力をつける必要がある。とはいえ、マラソンなどの激しい運動は逆に体を壊してしまう。そのため、高齢者の体に合った筋トレが必要になる。その1つがエキセントリック体操だ。
「運動スポーツ科学の分野で『エキセントリック』とは、収縮している筋肉が伸ばされる筋活動を表します。筋肉に力が入って収縮した状態のまま、伸ばすのが特徴です」
とは、エキセントリック体操の指導者で工学院大学准教授の桂良寛さんだ。もともとは、運動生理学やスポーツ科学の分野で培われたエビデンスに基づくアスリート向けの体操だが、体力に自信のない人や運動が苦手な人でもできるようにアレンジしたのだという。
では、力を入れた状態で筋肉を伸ばすとはどういうことなのか。
「たとえば、いすに座ろうと上体をかがめると太ももに力が入ります。その状態でおしりを突き出すと、太ももの前面の筋肉が伸ばされます。これが、力が入った状態で筋肉を伸ばすということです」(桂さん)
ポイントは“ゆっくり”。これを意識すれば、激しい運動をしなくても、筋肉に適度な負荷がかけられる。継続すると、階段の上り下りが楽になるなど、歩行能力やバランス能力が向上。筋力の調整に頭を使うため脳トレにもなる。早速試してほしい。
8つの注意点
【1】力を入れている筋肉を伸ばす。
【2】1回の体操に5秒ほどかける。
【3】同じスピードでなめらかに続ける。
【4】無理せず、最初は5回を目安に。
【5】1回終わったら、3~5秒休む。
【6】息を止めないように数を数えながら行う。
【7】痛みが出たら休む。
【8】1セット10回を限度とする。
いす座り(5~10回×1~3セット)
太ももの前とおしりの筋肉を鍛える体操。「足幅を肩幅より狭めると太ももの内側、より広くすると太ももの外側を鍛えられます」(桂さん・以下同)。
【1】両手を胸の前でクロスさせて、足幅は肩幅より少し広めにとって立つ。この状態から上体をやや前に倒して座る体勢に。
【2】太ももとおしりの力は抜かずにおしりを突き出しながら、5秒かけてゆっくりと座る。いすの座面におしりがついたら、力を抜き、3秒ほどリラックスする。ひざやいすの座面に手を置いてゆっくり立ち上がり、【1】~【2】を繰り返す。
お腹伸ばし(5~10回×1~3セット)
腹筋を鍛える体操。きつめのデニムをはくときのように、お腹を引っ込める感じで力を入れながら行う。「上体をゆっくり後ろへと倒していく際、足の裏が地面から浮かないように注意」。
【1】上体を倒すことを考えて、いすには浅めに腰掛ける。手を胸の前で組み、目線はまっすぐ前に。あごは引く。
【2】5秒かけて、体をゆっくりと後ろに倒していく。いすの背もたれに背中がついたら、3秒ほど休んでから元の姿勢に戻る。【1】~【2】を繰り返す。
かかと下げ(5~10回×1~3セット)
ふくらはぎの筋肉を鍛える体操。「大切なのは、かかとを上げるときよりも下げるとき。かかとが地面につくまで力を抜かずに行いましょう」。
【1】いすの背もたれにつかまり、足は腰幅に開いて立つ。両方のかかとを上げた後、片方のつま先を地面から離して片足立ちになる。
【2】5秒かけて、ゆっくり上げた足を下ろしてかかとを床につける。もう片方のかかとも下げて、3秒ほどリラックスする。次は逆の足で【1】~【2】を繰り返す。
胸伸ばし(5~10回×1~3セット)
胸と二の腕を鍛える体操。左図を参考に壁に手をつく位置を調整し、胸と二の腕の筋肉に意識を向けて行う。
【1】壁から1歩離れた場所に立ち、足は腰幅に開く。壁に両手をついて、両ひじを軽く曲げる。このとき、両手は肩幅より少し広めにとる。
【2】両手と胸の筋肉の力は抜かないように注意して、ゆっくり5秒ほどかけて、鼻が壁につくぐらいまで両ひじを曲げていく。
【3】曲げきったら、壁に向かって1歩進んで壁から手を離す。3秒ほど休んだら、再び壁から1歩離れて、【1】~【3】を繰り返す。
いつでも・どこでも筋力アップ
筋トレは日常生活に取り入れると続けやすい。なるべく階段を使用したり、バス停での待ち時間にトライしてみて。
●ゆっくり階段下り
1秒に1段のペースで下りる。ひざを曲げるときには太ももに力を入れる。
●買い物袋をダンベルに
腕の筋肉を鍛える体操。買い物袋を両手で持ち、ひじを曲げて胸元に。
腕に力を入れたまま、買い物袋を片手に持ち替え、5秒かけてひじを伸ばす。
伸ばしきったら力を抜き、3秒ほど休む。反対の手も同様にトライ。
教えてくれた人
杏林大学名誉教授・古賀良彦さん/医学博士。精神科医。専門は睡眠障害と関連の深い統合失調症、うつ病の治療。脳トレに関する著書は数多く、日本ブレインヘルス協会理事長も務める。
工学院大学准教授・桂良寛さん/専門は運動生理学。健康寿命の延伸をテーマに、中高年にエキセントリック体操の指導を行いつつ、その効果についての研究を続けている。
取材・文/上村久留美、鳥居優美 イラスト/尾代ゆう子
※女性セブン2022年4月28日号
https://josei7.com/
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