親の介護施設選びは「食事」に注目!見学するときにチェックすべき8つのポイント
「介護施設を選ぶを選ぶときは”食事”にも着目してみてください」と、老人ホーム検索サイト「LIFULL介護」編集長の小菅秀樹さんは語る。高齢の親のために介護施設を探すには「食事」に注目してみると、いい施設がみつかるかもしれない。見学時に食事に関して重視すべき8つのポイントについて解説する。
高齢の親の施設選びは「食事」を重視して
「親の介護施設探し」はいきなりやってくる。ある日転倒したり認知症が進んだりして「いよいよ自宅では難しい」となったとき、家族はどうやって介護施設の良し悪しを見極めるべきなのだろうか?
「施設探しは、現実的には費用や立地が優先されるものの、長い期間入居することを考えると”食事面”への配慮も大切です」と、数多くの施設を見学してきた「LIFULL介護」編集長の小菅秀樹さんは語る。
「実際にホームを選ぶ際の優先順位は、費用と立地です。ここが決まらないと話が進みません。しかし、かならず“食事”にも注目してほしいんです。なぜなら、入居者にとって、食事はなにより“楽しみ”であることが多いからです。
施設の見学は、入居する本人(多くは親)と行くのが理想ですが、私たちが調べた結果、親と一緒に行けるのは3割程度というのが実情。実際は、子供など親族が代わりに見学することがほとんどです。というのも、施設探しは親の状況が切羽詰まってから始めることが多く、すでに親は同行できないことが多いんです」(小菅さん、以下「」同」
そこで、子供が親のために施設を見学する際に、“食事”に関して重視すべきポイントを教えてもらった。
【1】施設の見学は、あえて忙しい昼食時間に
入居前の見学は必須だが、「『食事の雰囲気も見たいので』と言い、あえて12時~13時の忙しい時間にかかるように申込むのがおすすめ」と、小菅さん。
「施設にすれば忙しい時間帯なので躊躇されるかもしれませんが、その対応も施設選びの判断材料となるでしょう。逆に食事や介助の対応に自信のある施設なら『ぜひ食事中の雰囲気も見ていってください』と言ってくれますよ」
【2】食べる前に口腔体操をしているか?
「咀嚼力・嚥下力が低下している高齢者にとって、食事前の口腔体操は大切です。代表的なのがいわゆる『パタカラ体操』ですが、口腔体操を行うことで唾液が出やすくなったり舌が動きやすくなったりします。すると誤嚥が減るだけでなく、食べやすくなるので食事の楽しみもうんとアップするんです」
【3】食事が温かい状態で供されているか?
食事が冷めている施設はおすすめできないという。
「最近の食事はセントラルキッチン方式が増えています。外部の給食センターでおおかたできあがった食事が運ばれてきて、施設で仕上げて温かい状態で提供する方式です。
施設によっては自社の厨房でイチから作るところもありますが、そうなると食事代が高額になるケースも。温かい食事が比較的リーズナブルに提供できるセントラルキッチン方式を採用する介護施設が増えています。
『いわゆる病院食みたいな感じ?』と誤解している人が多いようですが、全然違います。バラエティも豊かで味もよくて、いってみればファミリーレストランのような感じ。ただ、温かい料理が温かいまま提供されているか、そこに注目してほしいと思います」
【4】食事のとき入居者の隣に座って介助しているか?
「スタッフが食事介助をする際、隣に座って対応しているかチェックしてみてください。
入居者さんと目線を合わせ、笑顔で対応しているのが理想。スタッフが立ったままスプーンを口に運んでいる施設はおすすめできません。忙しくて気持ちが焦っているのかもしれませんが、食べているほうも楽しい気持ちになれませんよね」
【5】介助者が食べるときに話しかけているか?
「介助が必要な入居者さんの場合、黙々と介助するのではなく、『今日は鮭のホイル焼きです。味噌で味付けされていますよ』など、これから何を召し上がるのか説明してからお口に運ぶことが基本です。
入居者も理解したうえで食べることができます。脳の刺激にもなるし、なにより食べることがより楽しみになると思うんです」
【6】「ミールラウンド」について聞いてみる
「ミールラウンド」とは、介護士、管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士、看護師、言語聴覚士、作業療法士など(施設によって異なる)多方面の専門家がチームを組んで、実際の食事場面を見ながら摂食、嚥下の状態を観察すること。
「『ミールラウンド』は、QOL(生活の質)の向上にも欠かせません。まだ一般的な言葉ではないので、見学したときに『ミールラウンドはどのように行っていますか?』と聞いてみると、施設側方も『この見学者、よくわかっているな』と思われ、その後の対応が違ってくるかもしれません」
【7】試食は入居者の人たちと一緒の場所で
「見学時にあらかじめ申込んでおけば試食させてもらえるところもあります。ただし、その際は、できれば別室ではなく、入居者の皆さんと同じ場所で食べるのがおすすめ。
試食は味をみるためだけではありません。介護士さんたちのサポートは行き届いているか、皆さん笑顔で楽しそうに食べているか、コミュニケーションはとれているか。食事時間の雰囲気を、肌で感じてください」
【8】食事のときは車いすのままか?
「車いすはあくまでも移動の手段なので、食べる際は介護士が介助していすに座ってもらうのが理想です。そのほうがテーブルといすの高さが合って食べやすいですし、食事をするときも気分がいいと思います」
とはいえ、これは「介護スタッフの間でも意見が分かれるところ」と、小菅さん。
「基本的にどの介護施設でも、車いすからいすに移乗させたいという考えはあると思います。しかし、人員不足のなか限られた時間内に食事を済ませるには車いすのままの方が効率的。
また、リクライニング式の車いすを使用している方など、入居者さんの身体状態によっては移乗することが苦痛や負担になる場合もあります。そのため、『車いすのままの食事はNG』と一概にはいえない事情があります」
食事で選ぶ介護施設 見学時8つのチェックポイント【まとめ】
□施設の見学は昼食時間を選ぶ
□食べる前に口腔体操をしているか?
□食事が温かい状態で供されているか?
□食事のとき入居者の隣に座って介助しているか?
□介助者が食べるときに話しかけているか?
□「ミールラウンド」について聞いてみる
□試食は入居者の人たちと一緒の場所で
□食事のときは車いすのままか?
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介護施設の食事にまつわる8つのポイントを解説いただいたが、小菅さんは、「全部パーフェクトな施設は見つからないと思いますし、立地や費用との兼ね合いもあるでしょう」とも話す。
「大切なのは親の気持ちです。スタッフの対応に対して、『自分なら我慢できても親なら納得できないだろうな』などと想像を巡らせることが大事です。
たとえ建物や設備が立派だとしても、そこだけを見るのではなく、食事にしてもケアしているのはスタッフであり、共に生活するのは入居者となる親です。親が一緒に見学できない場合は特に、『母(父)はここで楽しくやっていけるかな』と考えてみてほしいですね」
教えてくれた人
小菅秀樹さん
「LIFULL介護」編集長。老人ホーム紹介業で主任相談員として1500件以上の施設入居相談に対応を経て現職に。最近は「離れて暮らす親の介護」を中心に、オンラインセミナーも実施。
https://kaigo.homes.co.jp/ Twitter:@kosugehideki