霊能力者と対決『キントリ』7話 板谷由夏1人2役の熱演と工藤阿須加の成長に引き込まれる
天海祐希主演の大人気シリーズ『緊急取調室』第4シーズン(テレビ朝日木曜夜9時〜)。第7話は、霊能力者(板谷由夏)登場、珍しくミステリアスな事件になるかと思いきや、真壁有希子(天海祐希)はじめキントリ班はオカルト要素には全然乗らず……。ドラマを愛するイラストレーター・オカヤイヅミが『キントリ』の魅力を絵とテキストで振り返ります(ネタバレを含みます)。
工藤阿須加再登場!
第7話「魔女の予言」では、レギュラーになるのかと思いきや2話目から出てこなかった山上善春(工藤阿須加)が、ようやく再登場した。前回異動になってしまった監物さん(鈴木浩介)の代わりに捜査一課にやって来て、渡辺鉄次(速水もこみち)とコンビを組むことに。
相変わらずなんだかツンケンしている山上刑事だけれど、渡辺刑事はどうも「監物さんに恥ずかしくないように」と、結構張り切っている。その姿は、視聴者(わたし)を「あらあ、成長したのね」という気持ちにさせる。登場人物たちに、恋や憧れのような強い気持ちは抱かないけど、お節介なご近所さんみたいな気分になれるのは木曜9時のテレビドラマの醍醐味だ。
霊から助けを求められた
今回の事件は人気霊能力者・貴船馨(板谷由夏)が警視庁を訪ねてきたところから始まる。大きな帽子にワンピース、ハイヒールもすべて黒ずくめで、濃いアイラインを引いて鋭い眼光の貴船は、
「失踪した医師の霊から助けを求められた」
と言う。彼女の予言通りの場所で失踪中の美容外科医・小林英ニ(黄川田雅哉)のバッグが見つかり、刑事部長(池田成志)はなんと、貴船に協力を仰げ、と指示を出す。
山上と渡辺の「やまなべコンビ」が訪ねた貴船の自宅は、薄暗い洋館。ドアを開けたのは貴船……ではなく、馨の双子の妹で佐久間渚(板谷・二役)だ。同じ顔をしているが化粧っ気がなく視線も泳ぎ気味で印象はまるで違う。
出てくる要素が、霊能力、双子、この後見つかる小林英二の遺体は薔薇のアーチの奥に建つ別荘の揺れる白いブランコに座らされている……というふうに、全体的にゴシックホラー風味であり、幻惑されそうな雰囲気の漂う今回の事件だけれど、そこは『緊急取調室』。キントリ班の人たちは圧倒的に現実しか信じていないので、ほとんど惑わされる描写などはない。
菱やん(でんでん)と春さん(小日向文世)が、
「定年後の人生占ってもらおうかな」
「そりゃいいな」
などと軽口を叩くだけだ。霊能力による透視も、目の前に現れた馨と渚が実はどちらも渚であったことも、いつものように地道な調査と洞察で解決していく。
そして取り調べでは、キントリの方がちょっと大袈裟な演技をしかけて犯人の渚を「騙して」みせ、姉に対するコンプレックスを肥大させた渚の犯行を暴いていった。
桃井かおり、観たかった……
今回、事件に関してはほとんど「お茶の子さいさい」くらいの余裕が感じられるキントリだったわけだが、山上の再登場とともに、1話から続く大きな流れが来た。
冒頭では勾留中に黙秘を続けていた大國塔子(桃井かおり)が裁判で証言を始めた! と思ったら最後ではなんと死亡してしまった……。
ということは最終話で真壁が取調べる相手は大國ではなく、彼女が汚職を暴こうとしていた国土交通副大臣・宮越肇(大谷亮平)ということだろう。もちろんシーズン4のラスボスである宮越は倒す必要がありそうだが、桃井かおりの再登場、観たかった。
イラストと文/オカヤイヅミ
漫画家・イラストレーター。著書に『いいとしを』『白木蓮はきれいに散らない 』など。趣味は自炊。