インド型変異種“デルタ株”感染、在宅療養日誌「夫はホテル隔離、息子もとうとう発熱」
PCR検査の結果、新型コロナのインド型変異種・デルタ株だったことが判明し、療養を開始した記者。発症の翌日には夫も陽性が判明し、ホテル隔離療養へ…。発症5日目から後遺症の話まで、療養日誌・後編をお届けする。
→前編:R50記者のコロナ(インド型変異種・デルタ株)感染日誌「最初はのどに違和感、匂いが消えた…」
6月20日(日)インド型変異種の感染力は凄い
記者(40代)の陽性が判明したのが6月16日。PCR検査後、保健所からの連絡で「変異種、L452Rですね」と告げられた。インド型変異種“デルタ株”だった。記者の発症翌日には夫(40代)が発熱、PCR検査で陽性となった。
発症から5日目。記者はのどの痛みと倦怠感はあるものの熱はもうない。中学生の息子は陰性だったので私は自宅療養とした。一方、38度台の高熱が続いていた夫は、重症化したら病院と連携して入院措置も可能ということで、この日からホテルで隔離療養となった。
東京都福祉保健局(7/1発表)の速報値※によると、L452Rの陽性例は、これまで396例。6/7~13…32例、6/14~20…127例、6/21~27…170例と、急速に増え続けている。あっという間に夫に感染したこと考えると、その感染力の強さが恐ろしい。
※東京都福祉保健局 変異株スクリーニングの状況について(第2210報)
自宅療養者に届く『新型コロナウイルス感染症 自宅療養者向けハンドブック』によると、感染予防のポイントは以下の8つ。
・自宅での感染予防8つのポイント
1.部屋を分ける
2.感染者の世話をする人はできるだけ限られた方にしましょう
3.感染者・世話をする人は、お互いにマスクをつけましょう
4.感染者・世話をする人は、こまめに手を洗いましょう
5.日中はできるだけ換気をしましょう
6.手のよく触れる共用部分をそうじ・消毒しましょう
7.汚れたリネン、衣服を洗濯しましょう
8.ゴミは密閉して捨てましょう
また、「感染者は、お風呂は最後に入り、使用後にはシャワーで洗い流し、換気をすること」とある。家中のドアノブを消毒し、家事はゴム手袋を使った。なんとか息子にだけはうつらないで欲しい。
昼過ぎ、ホテルに到着した夫から写メが届いた。「部屋は狭い」というが、大きな窓があり日当たりは良さそうだ。
ホテル隔離療養者の生活
記者の夫の場合は、以下のような感じだ。
・宿泊療養は基本的に発症から10日間(容態により延長も)
・看護師さんによる健康観察が朝晩2回、すべて非対面、電話でのやり取り
・食事は、1日3回(朝7時、昼12時、夜6時)に1階のロビーに用意されているお弁当や水などを取りに行く(このときだけ部屋から出られる)。食事の時間は1時間ほどで、食べ終わったらロビーにゴミを出す。なお、時間通り取りに行けない場合、食事はなし
・清掃はなく、ゴミがたまったら1階のプラスチックバケツへ出す
・洗濯は洗剤を持ち込んだのでバスルームでした
6月21(月)のどの痛みが取れ咳に移行
発症6日目。朝起きると、のどの痛みが和らいでいた。のどにべったり貼りついていた何かがはがれたような感じで、倦怠感もない。しかし、息を吸うと少し胸が苦しく、コンコンと乾いた咳が出るようになった。
ホテル療養2日目の夫は、熱が38度台から下がらず、朝晩2回、看護師さんと電話で体調の相談をしているが、入院するほどではないという。
夫がお弁当をロビーに取りに行くと、そこで見かけるのは、「ほとんどが無症状らしき若者」だそう。お弁当がのどを通らないので、看護師さんに相談すると、レトルトのおかゆやカロリーメイトを出してもらえたので、それらを少しずつ食べているようだ。
6月22(火)息子が再び発熱…嫌な予感
発症7日目。咳が少し出る。毎朝、保健所から健康観察の電話が来るので、すっかり馴染みになった保健師さんと話をしていたら、朝10時過ぎに息子が起きてきて、
「熱が8度を超えたんだけど…」
記者の発症から3日目、微熱が出た息子はPCR検査をしたが、陰性だった。検査が早すぎたのか、その後感染してしまったのか。保健所に聞くと、もう一度PCR検査をするようにとのこと。
夜10時過ぎ、息子の熱が39度2分まで上がり、体温計を見てギョッとした。苦しそうにしているので、慌てて保健所の夜間(コロナ)相談窓口に電話をかけてみた。
「お母さんはコロナだから、この電話番号で相談を受けられますが、息子さんはまだコロナ患者と判定されていないので、こちらではお答えできません。発熱相談センターに電話をかけ直してください」と言われて困惑したが、慌ててかけ直すと、
「解熱剤を飲ませて水分をたくさんとって寝かせてください」とのこと。
息子はカロナールを飲んだらパタッと寝てしまい、汗を大量にかいて2時間後には7度台に下がっていた。
6月23日(水)息子2度目のPCR検査
発症8日目。咳が多少残っているが回復を実感。しかし、顔がげっそりしている。元気はあるのだが、お腹が空かないし、味がぼんやりしていて食事がおいしくない。体重を測ってみたら2キロやせていた。
昼過ぎに息子のPCR検査のため、車で病院に向かった。本来なら、私は療養中なので外出してはいけないのだが、病院と相談したところ、車で病院の近所に駐車して息子が容器を取りに行き、車中で唾液を採取して、受付に提出することになった。
夕方、夫から連絡あり、熱が下がらず解熱剤の処方が2倍になったとのこと。看護師さんいわく「10日間37度台が出るのはわりと普通で、解熱剤でしのぐしかない」のだそう。
6月24日(木)息子の「陽性」が確定
発症9日目。咳の症状もほぼなくなった。昼前に病院から息子の「陽性」連絡。我が家は結局、家族3人全員が罹患してしまった。自宅療養者向けに都から提供される配食サービスについて聞かれたが、息子の分は辞退した。
6月25日(金)記者の療養期間が終了
発症10日目。ほぼ症状はなくなったが、嗅覚が戻らない。
息子は発症3日目にして熱は下がり、のどの痛みと少し咳があるが、食欲もあり元気だ。ホテル隔離中の夫からLINEで「熱は落ち着いた」と連絡があり、ひとまず安心した。
6月26日(土)宿泊療養ホテルに差し入れをする
この日から外出可能に。午前中、カップ雑炊やゼリー飲料など手っ取り早く栄養になりそうなものを買い込み、ホテルへ差し入れに向かった。
ホテルのエントランスには警備員がいて進入禁止の囲いもあり、厳戒態勢風だ。
差し入れは事前予約が必要で、15時からだという。警備員の計らいで担当者に連絡をしてもらうと、保健所の職員とおぼしき男女2名があらわれ、入り口前の仮設テントに案内され、名前や連絡先を聞かれて差し入れの中身をチェックされた。
夫から差し入れを受け取ったと連絡があったのが夜8時過ぎだった。
6月27日(日)夫の帰宅日が決まる
息子は発症5日目で、ほぼ平熱に戻り、食欲もある。回復が早く、症状が軽いのは、若いからなのだろうか。
夫から連絡があり、熱が落ち着いてきたので火曜日に帰れそうだとのこと。
6月28日(月)日常が戻りつつある
職場に復帰。通常業務をこなし、夕方早めに帰宅する。息子は食欲もあり平熱に戻った。
6月29日(火)夫がホテルから帰宅
夫がホテル隔離療養開始から11日目に帰宅。帰ってくるなりソファに座り込み、酷く咳き込んでいて、顔色も良くないが、食べたいものを聞いてみると、「サーロインステーキ」「ケーキ」というので、食欲は戻ってきたようだ。
次々と家族が罹患するという悪夢のような療養の日々だったが、夫は夜になると咳が出ているものの回復傾向。息子の隔離療養期間も残すところ3日で終了となる。
***
記者は発症から2週間経つが、嗅覚が戻らない。ケーキは甘いことはわかるが、抹茶とチョコレートの風味がわからない。お寿司はわさびの辛さはわかるが、どのネタも同じ味がする。匂いがわからないので食べ物の味が平面的で味気ない。
我が家は3人罹患してしまったが、それぞれ症状が全然違ったし、いつ重症化するのかわからないという恐怖や、決定的な薬がなく治る目処が経たない不安感が常にあった。
コロナ療養で気になったこと【まとめ】
コロナに罹患すると、保健所から毎日1回(記者の場合は午前中10時ごろ)「健康観察」と称した電話がかかってくる。そこで、気になることを聞いたことを、以下にまとめる。
・コロナにかかった人は、ワクチンの接種はどうすればいいのか?
「抗体ができているので、急ぐ必要はないが、接種したほうがいいですね。抗体は3か月くらいしかもたないといわれています」
・症状がのどの痛みから咳に変わったのはなぜか?
「咳も後遺症のひとつといえます。解熱剤なしで熱が下がった状態が3日続けば、ウイルスは無力化していると考えられますので、咳が出ていても人にうつすような状態ではなくなったと判断しています」
・復帰前にPCR検査をする必要はあるのか?
「コロナにかかった人は、ウイルスの残骸で陽性反応が出てしまうためPCR検査の必要はありません。療養10日経って熱も下がっていれば、人にうつすことはなくなるということです」
・匂いがしない状態が続いているがどうすればいいのか?
「後遺症専門の相談窓口があるので、しばらく続くようなら連絡をしてみてください」
コロナ療養の基本をおさらい
・罹患すると保健所から連絡が来て、発症から2週間前の行動をかなり細かく聞かれる
・潜伏期間は最短1日~14日、感染後3~5日で症状が出ることが多い
・濃厚接触者は発症の2日前に会った人(症状が出る2日前から感染するといわれる)
・感染者は発症から10日間の隔離療養
・感染者の家族は患者と最終接触日から2週間隔離
(自宅療養の場合は、個室で隔離療養した日から)
・自宅療養者には東京都から食品(レトルト食品、ゼリー、お菓子など)が届いた
・熱が高いときはアセトアミノフェン系の解熱剤を飲むことを勧められた
取材・文/綾野真
※個人の体験の基づく記事です。また、2021年7月現在の状況による内容ですので、今後、自治体により対応は変更になる可能性もありますことをご了承ください。