“口内炎”の予防と対策 医師が愛用する洗口液、摂るべき栄養・避けるべき食べ物は?
栄養が不足したり、胃腸の調子が悪いとできがちな口内炎。さらにマスク生活が長引いている影響で、口内炎に悩む人が増えているという。軽いものなら数日で症状が改善するが、長引くものや痛さを感じないものには、病気が隠れていることもあるというから注意が必要だ。
口の中を清潔にして口内炎を予防する
口内炎ができる原因としては、栄養不足、胃の不調、ストレスや睡眠不足などによる免疫力の低下、やけどや噛み傷といった外傷、ウイルスや細菌、アレルギー、ニコチンなどさまざまある。
口内炎を予防するには、これらの原因を排除するとともに、口内を清潔にすることが先決だ。
幸町歯科口腔外科医院の院長で、歯科医師・口腔外科評論家の宮本日出(ひずる)さんが言う。
「“お口の掃除”というと、まず歯磨きが思い浮かびますが、『口内の汚れは歯の周囲に70%ある』といわれているので、丁寧に歯を磨くことが大切です。舌も細菌の温床になるので定期的に舌ブラシを使って磨きつつ、丁寧なうがいで口内全体を清潔にすることも忘れてはいけません。ただ、汚れ具合だけを見れば舌20%、残りの粘膜(うがい)10%ですが、口内に悪影響を及ぼす汚れや菌があれば、約2時間で元の状態に戻り、どんどん増殖します」(宮本さん・以下同)
うがいは水でもいいが、緑茶や、非アルコール性のマウスウオッシュ(洗口液)を使えば、少ない刺激で口腔内を除菌できる。
「ただし、イソジンなどのポビドンヨードを含むうがい薬は刺激が強いため、口内炎ができているときは控えた方がいいでしょう」
口内炎ができたら、あらゆる刺激を避ける
口内炎は粘膜がすりむけた状態。通常は新しい細胞ができて粘膜の下から治り、粘膜が元に戻るのに約2週間かかる。
「痛みを感じるのは2日程度です。この時期に、早く治そうと塗り薬を使う人も多いですが、ステロイド成分入りの薬は、口内炎の傷口が化膿している場合は、患部を悪化させることがあるので控えましょう」
口内炎に細菌が入ると表面が白っぽくなり、どろどろとした膿がにじんでくる。この場合は、口内を清潔にし、薬は抗菌作用のあるものを使うといい。このとき、辛い食べ物や熱い食べ物などの刺激も厳禁だ。
「口内には約700種類の常住菌がいるといわれています。その種類は個人差が大きいのですが、口内炎が多く発生している時期は抵抗力が弱くなっているため、この時期に人の細菌をもらうと口内炎が化膿する可能性が高くなります。
口内炎ができているときに濃厚なキスをすると悪化の恐れがあり、ウイルス性の口内炎ならうつる可能性もあるため、控えた方がいいでしょう」
口内炎の改善&予防にビタミンB群はマスト
食生活で口内炎を予防するには、前述のように粘膜の修復作用があり、保護に働くビタミンB群を多く含む食材を積極的に摂ることが大切だ。ビタミンB群には、細菌に対する抵抗力を高める働きがあるため、口内炎の悪化を防ぎ、予防にも改善にも役立つ。
さらに、水分をしっかり摂り、喉や口内が乾かないよう注意しよう。逆に、刺激の強い食べ物は口内炎の悪化につながる。極端に熱いものも避けた方が無難だ。
「よく、アルコール消毒といってお酒類を飲む人がいますが、アルコールは粘膜にとって刺激が強いので、殺菌どころか傷つけてしまいます。また、“口内炎には、はちみつがいい”ともいわれますが、殺菌効果があっても糖分が高いため、細菌を繁殖させるという、相反する作用もあるので私はおすすめしていません」
積極的に摂りたい栄養素と、避けた方がいい食べ物は以下を参考に。食生活を見直し、そのほかの原因を排除しても、口内炎が改善しない、または長引く場合は、すぐに口腔外科を受診しよう。
■積極的に摂りたい栄養素
【ビタミンB2】
・うなぎ
・豚レバー
・納豆
皮膚や粘膜などの細胞の再生に関与し、機能を正常に保つ働きがある。
【ビタミンB6】
・かつお
・バナナ
・にんにく
たんぱく質や脂質の代謝に関与し、免疫機能の正常な働きを保ち、皮膚の抵抗力を増進。皮膚や粘膜を正常に保つ。
■控えた方がいい食べ物
【ビタミンを破壊するもの】
・ビール
・ケーキ
アルコール類や糖分の多い食べ物は、ビタミンを壊すので、粘膜修復の妨げになる。※たばこもビタミンを破壊するので控えること。
【刺激が強く、悪化させる】
・ラーメン
・唐辛子
唐辛子などのスパイスの効いた食べ物、熱い食べ物、濃い味付けのものも傷口を悪化させるためNG。
教えてくれた人
宮本日出さん/幸町歯科口腔外科医院の院長、歯科医師・口腔外科評論家
取材・文/山下和恵 イラスト/小野寺奈緒
※女性セブン2021年6月17日号