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かかりつけ医は「ちょっと年下でスリムな人」が理想 選び方や探し方を医師が解説

 ちょっとした鼻かぜのときも、急な高熱で大慌てしたときも、いつも最初に頼るのは、昔から通っているかかりつけ医だ。医療崩壊がささやかれているいまこそ、「いつもの先生」の真価が問われる。本当に安心してあなたの一生を預けられるかかりつけ医とは。選び方や探し方を専門家に聞いた。

「かかりつけ医」選びに必要な5つのルール

 名医、スーパードクター、ゴッドハンド―ドラマで見掛ける天才外科医のように、卓越した専門技術を持ち、数々の難手術を成功させる医師は存在する。

 病気になったらそんな医師に診てもらいたいと思う人は多いが、ティーズ内科クリニック院長の土山智也さんは、本当に優秀な医師とは、バランス感覚に優れている人物だと説明する。

1.患者の意見を尊重するのが本当の名医

「高い技術があるだけでは、名医とはいえません。治療法や副作用、後遺症などについてあらゆる可能性を示して選択肢を提示する能力が必要です。

 例えば、がんになったときに“手術で切除するしかありません。私は失敗しませんから”と言い切るのではなく、手術や化学療法、放射線など複数の治療法を説明して、メリットとデメリット、リスクを踏まえたうえで、“医師としてはこういう理由でこの治療法がいいと思うけれど、どうしますか”と患者の意見を尊重するのが、本当の名医です」

 患者としては、自信を持って「この治療をすべき」と断言する医師に頼ってしまいたくなるが、実際は違う。

「患者に“この治療法じゃないとダメ”などと、自分の治療方針を押しつける医師は避けた方がいい。自分の考えが正しいと信じて疑わない医師は、患者に治療方針や内容を説明して同意を得るインフォームド・コンセントが不充分な場合や、治療に納得がいかないとき、ほかの医師や病院にかかるセカンドオピニオンを嫌がる可能性が高い」(土山さん)

 治療は、医師と患者が最善の策を選んでともに乗り越えていくものであるべきだ。これでは、果たして自らの命を預けていいのか不安になる。

2.理想のかかりつけ医は「ちょっと年下でスリム」

 病気になったとき、どんな治療も成功させる“名医”に最初から診てもらえることはほとんどない。つまり、最初に診察を受けるかかりつけ医をどう選ぶかが重要だ。

 現在、女性の平均寿命は87才。50才で初めて「一生涯のかかりつけ医」と出会ったとして、そこから40年近くもつきあうことになる。それを踏まえると、まず考えなければならないのは、医師本人の年齢だと、総合内科専門医で中央大学大学院教授の真野俊樹さんは言う。

「患者より年上すぎると、自分が亡くなるより先に廃業してしまう可能性があります。かといって、自分より若すぎても、人生経験が少ないため介護や終末期医療に関する悩みには実感が薄く、あまり理解してもらえない可能性もある。

 かかりつけ医に選ぶなら、自分の年齢プラスマイナス5~10才くらいまでがベストです」

 加えて、医者の不養生でないかどうかも、基本的かつ重要なポイント。できれば、ある程度スリムな人がいい。

「病的に太っているなど、ひと目で不摂生だとわかるような医師は、体調管理がしっかりできていない可能性があり、病気に対する責任感が弱いかもしれません。

 医師が不健康だと休診が増えて、必要なときに診てもらえないなどということもあり得るのです」(土山さん)

3.かかりつけ医は「総合診療医」がおすすめ

 真野さんは、かかりつけ医には、総合診療医をすすめる。総合診療医とは、幅広い知識を持ち、病気やけがのある部分だけを治療するのではなく、1人の患者の症状や生活までまるごと診て、適切な治療をしていく医師のことだ。

「大切なのは、最新の治療方法なども選択肢に入れながら、患者の身になって最善の処置や的確な対応をしてくれるかどうか。使命感の強すぎる医師は自分の手に余る場合でも無理に治療を続けようとする可能性があるので避けた方がいい。

 また、配慮に欠ける医師は患者を精神的に追い詰める恐れがあります。人生後半戦の伴走者としてかかりつけ医を選ぶなら、病気のことだけでなく、患者自身の家庭環境や生活習慣まで把握して、治療について一緒に考えてくれる医師がいい」(真野さん・以下同)

4.充分な説明をしない医師は選んではいけない

 説明しない、紹介しないのはよくない医師の証拠

 一方で、充分な説明をしない医師は言語道断。流れ作業のように診察していないか見極めるには、初診時の診察時間の長さで判断できる。日本の医療制度では、何分診察しても診療報酬は変わらない。そんな現状でも、じっくり患者の声に耳を傾ける医師は信頼できる。

「理想的なのは、『アドバンス・ケア・プランニング(ACP)』を行っている医師。患者が年を重ねると、1人の医師だけでなく、看護師や介護士、社会福祉士などと連携しながら、チーム体制で患者の命に寄り添うことが必要になります。病気の予防や介護、人生の最終段階をどう過ごすかまで話し合って意思決定を支援すべきなのです」

 真野さんによると、欧州では、かかりつけ医のことを「家庭医(ファミリードクター)」といい、家族全員が長年同じ医師にかかるのが当たり前だという。

「家庭環境がわかっているから、的確な診療がしやすいのです。日本と違って医療費は年間払いなので、利潤追求に走る必要がなく、診察時にじっくり会話ができる。理想的なかかりつけ医のあり方だといえます」

5.ほかの医師を紹介したがらない医師は避けるべき

 一方で、真野さんも土山さんも、「よくないかかりつけ医は、ほかの医師を紹介したがらない」と口をそろえる。

「すべての疾患を完璧に診ることができる医師は存在しません。だからこそ、かかりつけ医には、患者の症状からさまざまな病気の可能性を探り、必要に応じてほかの専門医に紹介する能力が求められます。

 自分では手に負えないと判断したら、すぐにほかの病院に紹介状を書いてくれるかどうかは、重要なポイントです。

 症状が改善しないのに、説明なく同じ薬を処方され続けるようなことがあったら、その医師は信頼に値しないかもしれない。病院を変える決断が必要です」(土山さん)

理想の“かかりつけ医”の条件【まとめ】

1.自分の年齢プラスマイナス5~10才

2.自分自身の健康管理ができている

3.診察時、目を見て話してくれる

4.メリットとデメリットの説明をしながら、治療の選択肢を複数出してくれる

5.「絶対〇〇した方がいい」といった言い方をしない

6.診療時間をたっぷりとってくれる

7.治療が難しい場合、その分野に強い別の医師を紹介してくれる

※取材をもとに本誌作成。

教えてくれた人

ティーズ内科クリニック院長・土山智也さん、総合内科専門医、中央大学大学院教授・真野俊樹さん

※女性セブン2021年5月20・27日号

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