肩こりの原因は全身マッサージで症状悪化を招くこともあると専門家が警鐘
「手もみ」「リラクセーション」「オイルトリートメント」。街を歩けば、マッサージの看板が目白押し。その店舗数はコンビニの2倍にのぼるという。リモートワークでこり固まった肩をほぐすのは至福のとき、のはずだった。しかしその先には思わぬ地獄が待っていることも…。マッサージが原因で症状が悪化することがあると専門家は警鐘を鳴らす。
肩こりは「国民病」
肩に手をかけながらため息をつくのは、都内在住の会社員・山口加奈さん(52才・仮名)。
「以前から肩がこることはあったけれど、テレワークが増えてからはひどくなる一方で、体じゅうがガチガチです。たまには“自分へのご褒美”でマッサージに行きますが、1日もたたないうちに元通り。最近、体が硬いからか寝付きも悪くなったし、夜中に首や肩のこりがつらくて起きてしまうことも。どうしたものかと悩み中です」
女性は男性よりも肩回りの筋肉が少ないうえ、冷えやすい体質も相まって肩こりになる人が多い。2019年に実施された国民生活基礎調査の結果をひもといても、日常生活で自覚するけがや痛みなどの症状のなかで、女性は肩こりを訴える人が最も多かった。
柔道整復師で100万人以上に施術してきた、さかいクリニックグループ院長の酒井慎太郎さんは肩こりを「国民病」だと断言する。
「いわば日本は“肩こり大国”。農耕文化の歴史が長かったため、肩に負担がかかる前かがみの姿勢が体になじんでいる。うなずいたりお辞儀をしたりする習慣も、同様に肩に重圧がかかりやすい。アメリカ人が日本に来たら肩がこったという例も耳にするほどです。これらに加えて、近年はパソコンやスマホの普及でさらに前かがみになることが増えたうえ、テレワークで姿勢が悪くなって、体の痛みを抱えている人は増加する一方です。何才であっても人間の体は、2か月悪い習慣が続けばあっと言う間にこり固まってしまう。その証拠に、肩こりや腰痛で悩んで来院する患者数は、20代も70代も変わりません」(酒井さん)
体のさまざまな場所から肩こりは引き起こされる
●眼精疲労…目を酷使することで毛様体筋がこり固まり、肩こりの原因になる。
●ストレートネック…ストレートネックの場合、常に首の筋肉が緊張状態にあるため、肩に多大な負担がかかる。
●腕の酷使…パソコン作業などによって腕の筋肉がこり固まると肩に支障が。
●わきの下の収縮…わきの下の筋肉の収縮により、肩から胸にかけてついている筋肉がこり固まる。
●腸内環境の悪化…腸内環境が悪化すると血流が悪くなり、筋肉が硬くなりやすくなる。
無資格で知識のない人の施術を受けるのは危険
つらい体のこりを緩和するために多くの人がまず思い浮かべるのは、患部をもみほぐすマッサージだろう。家電量販店では何種類ものマッサージ器が販売され、街中には「リラクセーション」「手もみ」などの看板があふれている。しかし、柔道整復師で整体院「和-KAZU」院長の迫田和也さんはマッサージで体をもんでも根本的な解決にはならないと指摘する。
「そもそも肩こりや腰痛は“生活習慣病”です。虫歯や糖尿病などと同じで、治療をして終わりではなく、同時に生活習慣や体のくせを改善して予防しなければ、またすぐに元に戻ってしまいます」
とはいえ、根本的な解決にはならなかったとしてもマッサージでこりをほぐしてもらうのは快適だ。しかし、それによって症状が悪化する場合すらある。理学療法士の財前知典さんが解説する。
「マッサージによってこり固まった一部の筋肉をほぐしても、ほぐれた筋肉が体を支えるためさらに緊張状態が強くなり、さらなる肩こりにつながることがあります。また、一部の筋肉だけが大きくゆるむことで体のバランスが崩れ、ゆがみが生じるケースもある。強いもみほぐしによって、筋肉が傷つく場合もあります。実際、私のところには、マッサージを受けて痛みがひどくなったと駆け込んでくる人もいる。そもそもマッサージは医療行為ではないため、施術者によって知識や腕に偏りがあることも問題です」
「マッサージ」と一口に言っても有資格者が施術を行うところもあれば、無資格で知識がない人が行っていることもある。肩こりが治らないからとマッサージに駆け込むのは、慎重になった方がいいだろう。
教えてくれた人
酒井慎太郎さん/柔道整復師・さかいクリニックグループ院長。迫田和也さん/柔道整復師・整体院「和-KAZU」院長。財前知典さん/理学療法士。
※女性セブン2021年4月29日号
https://josei7.com/
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