暮らし

病院清掃のプロが教える!「トイレ」「風呂」「キッチン」感染防ぐ掃除ルール

 細菌やウイルスに感染することが原因となって発症する病気の場合、病原となる菌やホコリが多い部分に焦点を絞って掃除することが効果的だ。

 家の中でもっとも感染リスクが高いトイレ。掃除を怠ると、感染性胃腸炎の原因となる大腸菌、ブドウ球菌、ノロウイルスなどに感染する可能性も高くなる。便器の汚れだけでなく、トイレにたまったホコリも病原菌の温床になりやすいのでチェックが必要だ。

 亀田総合病院をはじめ、多くの医療施設を担当する清掃スタッフの指導などを行い著書『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)などもある松本忠男さんに正しい掃除の仕方を聞いた。

トイレではホコリと手で触る部分の掃除も徹底!

「トイレは風通しをよくするために、ドアの下に隙間がある場合が多く、換気扇をつけると廊下のホコリがトイレの中に吸い込まれるので、意外とホコリがたまりやすいんです。ライオンリビングケア研究所の調査によると、トイレのホコリ1gには、大腸菌やブドウ球菌などが数十万〜数百万個も含まれていることがわかっています。トイレ掃除ではホコリをこまめに除去することも忘れずに」(松本さん・以下同)

 また、ドアノブや便器のフタ、ペーパーホルダー、水洗レバーなど、無意識で触れる場所も汚れている可能性が。

「家のトイレでは正しく丁寧な手洗いをしないことが多いので、手は汚れています。手で触れる個所の除菌はしっかり行いましょう。便器掃除は基本的に毎日行いますが、壁や床のホコリ、消毒拭きは、汚れ具合を見て、こまめに行いましょう」

●まず、壁と床のホコリを上から下へ、奥から手前へ取る

 トイレ掃除の対策について聞くと、

「トイレ掃除をすべて行うときは、まずは壁と床のホコリを取る作業からスタート。先に便器掃除を行うと水が飛び散って、床や壁のホコリが濡れて取りづらくなります」と松本さんは言う。

 上から下に向って行うことが掃除の基本なので、トイレのホコリ掃除は、壁の上から下にホコリを取り、次に床を奥から手前に向ってホコリを取っていく。

●つぎに便器本体をトイレに流せるシートで掃除

 続いて、便器本体の汚れは、トイレに流せるシートを使い、上から下に向って拭く。下から拭いてしまうと、上を拭いたときに菌やウイルスを含むホコリが落ちるので、注意。

「便器内部は酸性洗剤をつけてから、折り畳んだトイレットペーパーでパックするようになじませ、3分ほど放置します。その後、流せるシートでこすり洗いし、水で流します」

●消毒拭きをする時は、きれいな手袋にかえてから

 消毒拭きは掃除で使用したものではなく、別のきれいな手袋を着用し、便器、ペーパーホルダー、水洗レバー、ドアノブ、ホコリを取ったスクイージーを除菌用のウエットシートで、一方向に拭く。消毒液を使う場合は、消毒液にクロスをひたして絞ったもので拭く。

温度と湿度の高い風呂はカビとMAC菌の繁殖に注意!

 家の中でも注意すべきは風呂だ。風呂は、酸素、20℃以上の温度、80%以上の湿度というカビが発生する条件がそろう場所。また、MAC菌も繁殖しやすく、感染するとせきや血の混じったたんなどの症状が出る肺MAC症を引き起こすこともある。

「MAC菌は、浴槽のお湯の注ぎ口やシャワーヘッドのぬめり、湯あかに生息します。カビやMAC菌の対策には、水滴を拭き取り、こまめに換気するなどして乾燥した状態を長く保つことが大切です。感染を防ぐには、風呂掃除をするとき、必ず換気を行うこと。窓の両側を開けての換気がおすすめです」

 水まわりのカビ取りには、家庭用塩素系漂白剤と片栗粉を1対1で混ぜたものが便利だ。

「液体のカビ取り剤は、液垂れしてしまいますが、これなら壁のカビにも密着するので、カビに長く作用させられます。カビに塗って数時間放置した後で、水で流しましょう」

洗面台、呼吸器症などを引き起こす緑膿菌の繁殖をガード

 使用後の歯ブラシや歯磨き中のつばなどが飛び散った洗面台には、緑膿菌が繁殖しやすく、高齢者や免疫が低下している人が感染すると、呼吸器症などを引き起こすこともある。

「対策には水分を拭き取り、風通しをよくすることが大切です。洗面台が物でごちゃごちゃしているとホコリがたまりやすく、湿気が合わさると落としにくくなり、カビの原因にもなります」

 水あかで汚れた洗面ボウルは、水で濡らしてからキレート剤入りの中性クリーナーをつけて歯ブラシでこする

「キレート剤が水あかの原因となるミネラルを落としやすくします」

 洗面ボウルの上にあるオーバーフロー口(=オーバーフローぐち、洗面台から水があふれないように、排水ボウルの上の方に開けられている穴のこと)は意外とカビが繁殖する部分。定期的にカビ対策を行おう。

 また、ハンドソープなどの継ぎ足しは、内部で緑膿菌を発生させる危険が。ボトルをきれいに洗い、乾燥させてから詰め替えて

感染リスクの高いキッチンは布きんの取り扱いに要注意!

 水や栄養、温度、湿度といった細菌が増える条件がそろうキッチンは、住宅の中ではトイレの次に感染リスクが高い場所。感染性胃腸炎を引き起こす緑膿菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌などの細菌が繁殖しやすく、これらの菌を触った手で調理などを行うと、食中毒を起こす危険もある。
「例えば、食中毒を引き起こす大腸菌は17分に1回、黄色ブドウ球菌は27分に1回の頻度で細胞分裂し、1個の菌が数時間後には1万~2万個にもなります。

調理中に布きんを使用する人も多いですが、使用済みの布きんに触ったら、必ず石鹸で手を洗い、使ったまな板やスポンジは消毒するなどの対策が必須です」

 さらに、キッチン掃除のポイントとしては以下に注意したい。

●シンクの水あかはクエン酸で落とす

 ステンレスシンクの水あかには、スプレーボトルに水300mlとクエン酸大さじ2を溶かしたクエン酸水を作って対処。噴射して3分ほど放置した後、スポンジでこすって洗う。汚れが落ちない部分は、クエン酸水をスプレーした上にラップを貼り、約15分放置してからスポンジで洗う。その後、中性か弱アルカリ性の食器用洗剤で洗って中和させる。

●換気扇の油汚れは重曹で浸け置き!

 換気扇や五徳の油汚れは、放置しておくとゴキブリが繁殖する原因に。これらの頑固な油汚れには重曹を活用しよう。「大きなビニール袋を二重にした中に、洗う物と約80℃のお湯、重曹(湯1リットルに対して大さじ3~4杯)を入れて、10分程度放置した後、水で洗います。驚くほど簡単に油が落とせます」。

汚れの種類は色でチェック、ピンク・白・黒・茶・灰色の違い

 自宅を掃除をする際に気をつけたいのは、汚れの色。適切な洗剤や掃除法を選ぶには、汚れの種類を知ることが大切。ムダなく掃除をするために色で汚れの種類を見極める必要がある。

 まず、ピンクの汚れは、バクテリアが繁殖したもの。便器の内側、洗面台、風呂場などに多い。ピンク色のぬめりが特徴だ。続いて、白色の汚れは、洗面台などの水まわりに多く付着する水あかが多い。大腸菌やセラチア菌が繁殖しやすい傾向がある。

 黒色の汚れは、一般的な黒色はカビ。ガスコンロに吹きこぼれたものが炭化して黒色の汚れになっていることも多い。茶色の汚れは、代表的なものはキッチンなどの油汚れだ。水道水に含まれるケイ酸などが原因の汚れは、水道の蛇口まわりなどに茶色いリング状に表れる。

 灰色の汚れは、代表的なものはホコリだ。他の汚れと組み合わさると除去しにくい汚れに変化するので注意が必要。

松本忠夫(まつもと・ただお)さん

ダスキンヘルスケアや亀田総合病院グループなどで清掃管理者などを経験し、独立。亀田総合病院をはじめ、多くの医療施設を担当する清掃スタッフの指導などを行う。松本さんの経験をまとめた著書『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)が話題に。テレビ出演多数。

※女性セブン2018年5月31日号

【関連記事】

●病院清掃のプロに習う健康掃除術【アトピー】【喘息】家庭内予防に効果的な場所別対策法

●トイレ、風呂、キッチン掃除法 ムダを省いて感染リスクを下げる極意

●病気を防ぐ目からウロコの掃除法!「窓は閉め切ってやるべき」など

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