【病院清掃のプロに習う健康掃除術】トイレ、風呂、キッチン ムダを省いて感染リスクを下げる極意
病気にならないためには、普段から病気の元を取り除き、汚れにくい部屋づくりをすることが大切だ。
それには「汚さないクセ」をつけるのがイチバン！特に、水滴が飛び散る水まわりは、病気を引き起こす細菌が繁殖しやすい場所。使い方の工夫を少しするだけでも感染リスクを減らし、掃除の手間も省ける。病院の掃除歴30年の日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事の松本忠男さんに、その極意を聞いた。
「病気にならない、ムダを省いた質の高い掃除術」とは
「病院清掃の仕事を始めた頃、入院していたあるご婦人が、MRSA感染症で亡くなりました。MRSAは、人の鼻や口などに普通に存在する黄色ブドウ球菌の一種です。健康であれば自分の免疫力で駆除できますが、免疫力が低下している人にとっては命取りになるケースもあります。
この細菌は、床やドアノブ、手すりなどを介して感染するため、人の動線や行動パターンによって、どこが感染源になりやすいのかなどを把握し、汚れを正しく取り除くことが必要だと実感しました」（松本さん・以下同）
この経験が「病気にならない、ムダを省いた質の高い掃除術」を、発見したきっかけになったという。
家庭で、感染リスクを最大限に抑えるために必ずチェックしておきたいのは、何といっても水まわり。
「特に排泄するトイレは、感染性胃腸炎などを引き起こす大腸菌やブドウ球菌、ノロウイルスなどに感染しやすい場所。また、浴室に5mm程度のカビがあると、そこにはカビの胞子が1000個くらいあります。カビがあるから必ず病気になるわけではありませんが、1000個のカビの胞子があると、健康被害を受けやすくなるといわれています」
次に紹介する場所別の極意を頭に入れておこう。
トイレ掃除の場合
●ブラシは使わず、使い捨てスポンジで！
「トイレブラシは、ケースに汚染された水がたまるため、おすすめできません」（松本さん・以下同）。代わりに100円ショップなどのスポンジを小さくカットして便器掃除を行って。ビニール袋を手袋代わりにして、そのスポンジで掃除をしたら、そのままビニールに包んで捨てればOKだ。
●ドアノブ、スイッチなどよく触るところを拭く
ペーパーホルダー、ドアノブ、手すり、電気のスイッチなど、手で触るところが多いトイレ。「家のトイレを使うときは、正しく丁寧な手洗いをしないことも多いため、手は汚れている前提で考えることが大切です。ドアノブやペーパーホルダーなど、その手で無意識に触っているところが意外と汚染されているので、除菌シートでこまめに拭き掃除を行いましょう」。
●水を流すときは必ずフタを閉める
トイレの水を流すと、目には見えなくても便器の外に水滴が跳ねている。「便の中にはウイルスや細菌が潜んでいる場合もあります。これらは水滴よりも小さいので想像以上に飛び散っている可能性が高いんです。流すときは必ずフタを閉め、フタ裏の掃除も忘れずに」。
お風呂掃除の場合
●蛇口やシャワーヘッドなど細かい部分の水滴を拭く
カビや雑菌の繁殖を防ぐには、入浴後に水分を残さないことが大切。「特に蛇口まわりやシャワーヘッド、その他、凸凹になっている部分は、通気が悪く乾きにくいので、入浴後に使用済みのバスタオルなどで水滴を拭き取るといいですね」
●風呂掃除は冷たい水でカビ対策をする！
カビは、20度以上の温度、水分、栄養がそろうと増殖するため、掃除は冷たい水で行うのが鉄則だ。「お湯で掃除をすると、湯気が壁や天井に付くうえに、浴室の温度が上がりカビが増殖。風呂掃除に限っては、換気をしながら掃除することで感染予防になります」
●こまめな換気で充分に乾燥させる
カビが発生しやすい浴室は、空気中に見えない胞子が漂っているため、換気が何よりも大切だ。 「浴室は乾いた状態をなるべく増やすことでカビの発生を防げます。使った後は必ず30分～1時間程度は窓を開けるか、換気扇を回しましょう」。窓がある場合は、両側の窓を10cm程開けると、効果的に換気ができる。
