病気を防ぐ目からウロコの掃除法!「窓は閉め切ってやるべき」など
“病気にならないために掃除をする”といっても、家の中を徹底的に除菌するわけではない。
「近年、感染予防の観点から見ると、間違った掃除法が原因で健康を害するケースが増えています。健康のためには正しく掃除をすることが大切です」という、病院の掃除歴30年の日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事の松本忠男さんに、病気を防ぐ掃除法を聞いた。
換気をするのは掃除が終わった15分後がいい
“掃除のコツの1つは、できるだけホコリを舞い上げずに効率的に回収すること”と、日本ヘルスケアクリーニング協会代表理事の松本忠男さんは言う。
「掃除中に窓を開けると大量に舞い上がったホコリが風で部屋中に拡散し、いくら掃除をしてもホコリを取りきれません。だから、換気をするのは掃除を終えてホコリの絶対量を減らした後が望ましい。15分ほどで舞い上がったホコリが落ち着くので、換気はその後がいいですね」(松本さん・以下同)
「掃除をする時は窓を全開にする」といったやり方をする人も多いだろうが、実はこのやり方は誤りだったのだ。このように、病院清掃では常識といえることが、家庭では意外と間違っていることも多い。
「普通の掃除では、見た目を重視しがちですが、病院の掃除は病原となるホコリや汚れの絶対量を減らすのがポイント。家庭でも、その観点で掃除をしてもらえるといいですね」
2014年に花王が行った『ホコリの中の菌・カビの調査』によると、家の中のホコリ1g中に含まれる菌数は、カーテンレールや棚の上などの高い所は7万~10万個、床の上は100万~260万個と判明。
「ホコリ1gとは、おおよそ500円玉ほどの大きさです。ホコリは衣類からの繊維、布団やクッションからの綿ボコリ、人間の皮脂、抜け落ちた髪の毛、外から持ち込まれた土砂、食べこぼしなどが集まっています。そのため、カビの胞子やウイルス、花粉、PM2.5などが含まれていることもあるんです。そんな汚い空気を吸い続けていると、肺炎になるリスクは高まります」(松本さん・以下同)
だからこそ、掃除中は窓を閉め切ってホコリを効率的に回収するのが病院掃除のルール。さらに、換気時の窓の開け方も重要だ。
換気は窓の両側を10cm開けるのおすすめ
「換気は、窓の両側を10cm程度開けるのがおすすめです。窓を開ける幅が狭いほど風の速度が上がり、空気の入口と出口の間を効率的に空気が循環するので、換気に最適なのです」
その他、ここで紹介する掃除術は、簡単なものばかり。続けやすいのも特徴だ。
「習慣にすれば負担を感じずに掃除できます。日々の掃除で、場所ごとの汚れの量をチェックして、汚れがいつも多い場所は掃除回数を増やし、少ない場所は回数を減らしてOKです。時間をかけて家中を掃除する必要はありません」
前出・松本さんは、肉眼で見えるホコリなどの汚れは全体の2%程度で、残りの98%は見えないという。ホコリには、ウイルスやカビの胞子、花粉、PM2.5なども含まれているので、感染リスクを下げるには、部屋のどこに汚れが集まりやすいのかを知ることが肝心だ。
「掃除の基本は“汚れを集める→回収する”の繰り返し。これを効率よく行えば、家中を一生懸命掃除する必要はありません」(松本さん)
ホコリの多い所を効率的に掃除する
部屋に発生したホコリは、空中を漂った後、床や棚などの水平なところに落ちる。その後は人や物が動いたり、エアコンをつけたり、窓やドアを開けるたびに発生する、気流に乗って移動する。
「ホコリは、量が少ないうちは部屋の中に散らばっているので、一見きれいに見えます。ところが、そのまま放置していると、徐々に部屋の隅や家具の周りに集まってきます。つまり、多くのホコリを効率よく回収するには、部屋の隅や家具の周りなど、ホコリがたまりやすい場所を重点的に掃除することがポイント。これで、ホコリに含まれるカビやウイルスなどによる、病気の感染リスクを下げることができます」(松本さん・以下同)
クロス拭きは「一方向拭き」が基本
拭き掃除には、汚れを落とす目的で行う場合と、除菌を目的で行う場合があり、単に汚れを落す場合は、拭き方にはこだわる必要はない。
「除菌を目的として、テーブルやトイレ、手すりなどの拭き掃除を行う場合、基本的に、クロスは『一方向拭き』をします。車のワイパーのように動かして『往復拭き』をすると、クロスの端に付着した細菌やウイルスを、テーブルや手すりに置き去りにするだけでなく、掃除した場所に再び付着させることにもなりかねません。特に、感染リスクの高いトイレ掃除の仕上げに、除菌をするときは、一方向拭きで行うことが大切です」
フローリングは朝にドライシートで掃除
廊下やフローリングの床は、時間とともに部屋の隅や家具の周りにホコリが集まる。時間がないときは隅だけ重点的に掃除すればOK。特に空気中のホコリが床に落ちきった朝に、ドライシートのフローリングワイパーでホコリを静かに拭き取るのが効率的だ。
「人が動くと気流が発生してホコリを舞い上げてしまうので、家族が活動を始める前に、1人で静かに拭き取るのがベスト。また、床の水拭きは汚れや雑菌をかえって塗り広げてしまうため、ウエットシートではなく、ドライシートを使いましょう。フローリングワイパーは体からできるだけ離し、床に密着させて前方にゆっくり動かすことで、舞い上がるホコリを最小限に抑えられます」
カーペットの掃除機がけはゆっくり!
「カーペットは、目には見えなくてもホコリやカビの胞子、ダニなどが潜んでいます。カーペットに落ちたホコリは気流で移動しにくいので、フローリングとは異なり、どこからかけても大丈夫です」
ホコリをしっかり回収するには、掃除機は1mを5~6秒かけてゆっくりと動かして、奥のゴミを吸い出すのがコツ。舞い上がるホコリを抑えるためには、排気口の位置が高いハンディータイプの掃除機がおすすめだ。
花粉やPM2.5の除去はスクイージーを活用
見逃しがちなカーテンレールや、扉の上などにも花粉やPM2.5を含んだホコリが付着している。それらの掃除には、窓掃除などに使うスクイージーを活用すると便利だ。
「ゴム部分に約5mm間隔で切れ込みを入れて使います。水で湿らしたタオルでゴム部分を拭き、軽く湿らせたあと、カーテンレールを一方向にゆっくりとこすれば、細かいホコリの舞い上がりを抑えながら、大量のホコリを回収できます。これは、壁のホコリ取りにも使えて便利ですよ」
松本忠夫(まつもと・ただお)さん
ダスキンヘルスケアや亀田総合病院グループなどで清掃管理者などを経験し、独立。亀田総合病院をはじめ、多くの医療施設を担当する清掃スタッフの指導などを行う。松本さんの経験をまとめた著書『健康になりたければ家の掃除を変えなさい』(扶桑社)が話題に。テレビ出演多数。
※女性セブン2018年5月3日号
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