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緑内障が発覚した認知症の母に検査や治療が難しい理由とは

 作家でブロガーの工藤広伸さんが遠距離介護をしている認知症のお母さんは、実は緑内障も患っている。失明のリスクもある緑内障だけに、不安が募る…。お母さんの緑内障が発覚した経緯と、眼科を受診したときのお話だ。

認知症の母が緑内障に気がついた経緯

 母は緑内障で、左眼の視野が若干欠けています。この病気の初期は、自覚症状が全くありません。また、左右の眼でお互いの視野を補いあうため気づきにくく、末期になるまで分からない方も多いようです。日本人の失明原因の第1位※であることも、納得できます。

 認知症でもある母は、なぜ初期段階で緑内障に気づけたのでしょう?

※厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する研究より

「壁に黒い影があるのよ」と母の訴え

 4年前に、母からこんな訴えがあって眼科へ行きました。

「壁に黒い影があるのよ。目を動かすと、影が一緒についてきて気持ち悪いわ」

 わたしも飛蚊症で黒い影が見えるのですが、医師の診断では、わたしの目は健康で治療の必要はないという話だったので、母も同じではないかと考えました。

 念のため眼科に行くと、診断結果は白内障。いわゆる加齢からくるもので、80歳になるとほぼ100パーセントの人が、白内障になると言われています。73歳の母なら、年齢的に白内障と診断されてもおかしくはありません。

 白内障の治療は日帰り手術を1度行うか、目薬の点眼でしばらく様子を見るかでしたが、その時点では手術の必要はないということで、1年ほど目薬で様子を見ました。

→緑内障ほか失明につながる怖い眼の病気|早期発見チェックテスト

眼科を変えたら緑内障も発覚!

 通院中、医師とわたしたち家族との相性が合わないと感じていたため、思い切って病院を変更してみました。

 すると、新しい眼科の医師から、「念のため、緑内障の検査もしてみましょう」と提案され、そこで母の緑内障も見つかりました。

 残念ながら、最初の眼科では緑内障検査の提案はなかったので、病院を変えてよかったですし、医師のレベルの違いも痛感しました。

 緑内障は認知症と似たところがあって、根治はせず、薬で進行を遅らせることしかできないため、一生通院を続けなければなりません。

 眼科の通院は、2か月に1回のペースで、眼圧のチェックや視野検査などを行います。緑内障は眼圧が上がるので、それを抑えるために1日1回の点眼が必要です。母は現在も白内障ですが、緑内障の治療を優先しながら、経過観察をしています。

 白内障の治療をしていた頃は、1日に複数回の点眼が必要で、軽度の認知症だったときは、母は自分で点眼ができていました。しかし、認知症が進行し、1日1回の点眼に変わってからは、母では目薬の回数を覚えられないので、家族や介護職が管理することになりました。

コロナ禍で眼科を受診したときに困ったこと

 コロナ禍に岩手に帰省したわたしは、いつものように母と眼科へ行ったのですが、そこで認知症介護の難しさを味わうことになりました。

 母は新型コロナウイルスの流行を、なんとなく理解しています。しかし、いつから流行し、なぜマスクや手洗いが必要なのかまでは理解していません。
 
 眼科では、患者と付き添い家族に向けたアンケートの記述を求められ、現在の体温や体調、2週間以内に感染拡大地域との往来があるかなどの質問項目がありました。

 母もわたしも毎朝体温を測っていますし、体調も確認しているので問題ありません。また、感染拡大地域である東京から帰省したものの、2週間の健康観察期間を終えての通院だったので、受診できました。

 医師の診察の前に、いつもどおり様々な検査を行いました。

病院スタッフ:「工藤さん、視力を測定しますからね」

 測定器の前に座った母は、なぜかマスクを取ろうとします。

わたし:「ちょ、ちょっと!マスク、外しちゃダメ!」

 マスクを外そうとする母を制止して、なんとか視力の測定を終えました。視力は、前回と変化はないようです。次に、眼圧を測定する機械の前に移動し、座った母は再び、マスクを外そうとします。

わたし:「はいはいはい、マスクはそのまま!」

 おそらく母は、マスクをしたまま人と話すのは失礼と感じているか、マスクが検査の邪魔になると考えているようです。

 その後も、眼の写真撮影のときや、医師の診察が始まる前も、母はマスクを外そうとして、わたしも医療スタッフも慌てる場面が何度も繰り返されました。新型コロナウイルスやマスクの大切さが分からないと、こういう苦労もあります。

→認知症の母がコロナ禍で”マスクしねばねぇの?”と言う意味は…

 眼科に限った話ではありません。デイサービスの利用の際も、朝行くときはしっかりマスクを着けて送り出すのですが、帰ってくると、母はなぜかマスクをしておらず、無防備なまま送迎車から降りてくる日もあります。

 おそらく車での移動中に、母は違和感のあるマスクを外してしまうのだと思います。

 認知症の方がコロナに感染した場合、マスクを外したり、動き回ったりして感染対策が難しいという理由から、受け入れができない病院も多いようです。医療関係者のリソース不足が叫ばれる中、やむを得ない部分もあることは理解できます。

 偶然とはいえ、早期で発見できた緑内障。目薬を欠かさなければ、失明の心配はありません。

 ヘルパーさんなど介護職の皆さんの力を借りながら、生涯母の視力を守っていきたいと思っています 。

 今日もしれっと、しれっと。

→工藤広伸さんの他の記事を読む

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)。音声配信メディア『Voicy(ボイシー)』にて初の“介護”チャンネルとなる「ちょっと気になる?介護のラジオ」(https://voicy.jp/channel/1442)を発信中。

●認知症の母が暮らす家に8年越しで”手すり”を設置した実録ビフォー・アフター

●認知症の母が作る朝ご飯の目玉焼きともやし炒めに違和感…

●認知症の母の「ものとられ妄想」息子が辿り着いた究極の解決法とは?

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