認知症家族の悩みは、お金より問題行動!トラブル起こす「周辺症状」とは?
「お店で粗相をする」「妻に暴言を吐く」「財布を盗まれたと騒ぐ」―認知症を患う親の姿を目の当たりにすると、家族のショックは大きい。
「慌てずに対応しましょう。認知症のトラブルには理由があるのです」
と言うのは、ケアタウン総合研究所所長の高室成幸氏。
スーパーで支払いをしないで店を出る父親
「警察から連絡があり、なにかと思えば父親がスーパーでお金を払わずに商品を持って出たって言うんです。店員さんの話では、これまでも何度か同じことがあったそうですが、父は『俺は取ってない』と言い張るばかりで……」
こう語るのは千葉県在住の50代男性。ひとり暮らしの父親は70代後半を迎え、「食べたばかりのご飯を思い出せない」といった記憶力の低下が見られるようになっていた。その矢先の出来事だったという。
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この男性同様、認知症の親による「問題行動」に悩む家族は少なくない。
家族が抱える認知症への不安はお金より問題行動やトラブル
内閣府が行なった『認知症に関する世論調査(令和元年)』※によると、「家族が抱える認知症に対する不安」への答えは、「経済的な負担増」が49.7%に対し、「ストレスや精神的負担増」が65.1%、「家族以外に迷惑をかける」が58.3%。お金の不安よりも、問題行動やトラブルへの心配が上回っている(図1)。
※https://survey.gov-online.go.jp/tokubetu/tindex-r01.html
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問題行動を起こす「周辺症状」2つの種類
「なぜ問題行動を起こしてしまうのか、不安を減らすには認知症を理解することが大切です」
高室氏はこう指摘する。
「認知症は『中核症状』と『周辺症状』という2つの症状で大別します。
直近のことを忘れる『記憶障害』や、日時や今いる場所が分からなくなる『見当識障害』など、理解や判断力の障害は認知症患者の多くに共通して現われるため、『中核症状』と呼ばれます。
一方、『周辺症状』は性格や育った環境、性別や現在置かれている状況などにより左右され、人によって個人差があると考えられています」
周辺症状はさらに2種類に分けられる。
日常生活の失敗から自信をなくし、不眠や怒りっぽくなる「不安症状」と、暴力や異常な食行動といった「問題行動」だ。
「認知症によるトラブルの多くは、周辺症状に起因するケースがほとんど。多くは認知症の初期後半から中期にかけて現われます。さらに症状が進み身体機能が低下して、食事や排泄、移動など生活全般に介助が必要になってからも、寝たきりになるまで続くこともあります」(前出・高室氏)
教えてくれた人
高室成幸氏/ケアタウン総合研究所所長
※週刊ポスト2020年11月27・12月4日号