高木ブーはなぜ中日ファンなのか?「もう30年以上応援している」【連載 第29回】
高木ブーさんとスポーツとのつながりは、意外に……というと失礼だが、十分に多い。高校時代はボクシングジムに通い、リングに上がって戦った。『8時だョ!全員集合』の中で、アイスホッケーにも挑戦したことも。プロ野球では、長いあいだ中日ドラゴンズを熱心に応援している。スポーツに対するブーさんの想いを聞いた。(聞き手・石原壮一郎)
ずっと中日ドラゴンズのファン
このあいだニュースでやってたけど、11月6日から日本からの観光客もハワイに行けるようになるんだってね。ただ、事前に日本でコロナの検査を受ける必要があったり、日本に戻ったときに14日間、自宅やホテルで待機しなきゃいけなかったりはするみたい。まだちょっと気軽に行ける感じじゃないけど、だんだん可能性が広がってきたのは嬉しいな。
このあいだアップしたYouTubeの「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう Part10」では、中日ドラゴンズのユニフォームを着て登場しました。「なぜユニフォーム?」「なぜ中日ドラゴンズ?」ってビックリした人もいたみたいだけど、今の監督の与田剛さんとは彼が現役時代からの友達で、ちょっと前にプレゼントしてくれたんです。
僕はずっと中日ドラゴンズのファンで、試合の応援はもちろんだけど、春先に沖縄でキャンプしているときに陣中見舞いに行ったりもしてました。与田さんは現役時代、すごい剛速球を投げたんだよね。球がぜんぜん見えなかった。外見も中身もいい男で、ちなみに奥さんは元TBSアナウンサーの木場弘子さん。結婚式も、当たり前だけど中日の選手がいっぱいいて楽しかった。
ドラゴンズを熱心に応援し始めたのは、星野監督の頃だから30年以上前かな。ザ・ドリフターズで何かの番組に出たときに、それぞれどこの球団のファンですかって話になった。加藤が読売ジャイアンツで長さんがヤクルトスワローズ、仲本は何だっけな。志村は西武線沿線の東村山出身だから、西武ライオンズを応援してた。
かなり前だけど、ドラゴンズには一時期、のちに監督にもなった高木守道さんをはじめ、高木時夫さん、高木一巳さんと、高木っていう苗字の選手が3人もいて、親近感を抱いてたんです。その頃から何となくドラゴンズ派でした。安易といえば安易なきっかけだけど、応援し始めると選手にも詳しくなったりして、見る楽しみが増えて愛着がどんどん湧いてくるよね。今年のドラゴンズはよく頑張った。優勝はできなかったけど、なんとか2位の座を守ってほしいな。
ザ・ドリフターズで草野球チームを作ってた話は前もしたけど(連載第15回を参照)、そのときに作ったユニフォームの胸の「Drifters」っていう文字は、当時のドラゴンズのユニフォームとそっくりなんです。まあ、本をただせば大リーグのドジャースの流れらしいけど。だから僕は、草野球で「Drifters」のユニフォームを着たときは、こっそりドラゴンズの一員になったみたいな気分を味わってました。
高校時代にやっていたボクシング、通算成績は…
今はスポーツは見るのが専門だけど、こう見えて高校時代は水道橋のボクシングジムに通ってたんです。当時は世界チャンピオンになった白井義男さんが大人気で、後楽園ホールまで試合を見に行ったこともあった。カッコよかったなあ。
白井さんへの憧れと、あと通学で乗ってた常磐線の電車にはガラの悪い高校生がたくさんいて、いつもヘンな目つきでにらんでくるんだよね。からまれたら嫌だから、ボクシングやって強くなろうと思ったの。実際にケンカしたことはなかったけど、ボクシングジムのバッジを制服の襟に付けて電車に乗り始めたら近寄って来なくなったな。
いっちょまえに試合も何回かやりました。でも、いくらグローブしてても、殴られると痛いじゃない。それに、その頃はボクシング以上にウクレレに熱中してたから、拳にタコができたり指先の細かい感覚が薄れたりするのが嫌だった。顔を殴られたら二枚目が台無しになっちゃうしね。だから、ちょっとだけやって辞めちゃった。通算成績はゼロ勝です。
『8時だョ!全員集合』の頃は、番組の中でいろんなスポーツをやりました。体操のコーナーだけじゃなくてね。長靴を履いてアイスホッケーをしたこともあった。いしだあゆみさんがスケートが上手だったことと、元オリンピック選手の渡部絵美さんがコーチをやってくれたんだけど、教わったことがぜんぜんできなくて申し訳なかったのを覚えてます。
思うんだけど、スポーツと音楽ってよく似てるよね。スポーツをするのも音楽を演奏するのも、どっちも気持ちいい。スポーツを見ても音楽を聴いても、どっちも元気になれる。どっちも人生を盛り上げてくれる。食べ物とは違う意味で、どっちも生きていく上では欠かせない栄養素なんじゃないかな。これからもスポーツからたくさん元気をもらって、音楽を通してたくさんの人を元気にできたらと思ってます。
「音楽と同じでスポーツも人生を盛り上げてくれるよね。どっちも欠かせないよ」
高木ブー(たかぎ・ぶー)
1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。2000年にはビートルズのスタンダードナンバー11曲をハワイアンでカヴァーしたCD『LET IT BOO』をリリース。現在はSony Music Shopで発売中(3300円税込)。CD『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」( イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評!
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「恥をかかない コミュマスター養成ドリル」。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。
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