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ダニから感染する怖い病気|梅雨に増える「マダニ感染症」人も猫も危険!

 蒸し暑くなる季節に大量発生するダニによる感染症に要注意だ。今月、マダニの感染症(SFTS)で高齢女性が死亡(5月8日)。新型コロナもそうだが、この病気にも有効な治療薬がない。また動物も感染し、犬より「猫」のほうが致死率が高いという。梅雨時から増えるダニから、動物を介しても感染するこの怖い病気について獣医師に聞いた。

驚いた猫の写真

マダニの感染症SFTSで高齢女性が死亡

 今月8日、広島県福山市内に住む70代の女性が亡くなったと報じられた。女性は、マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(通称SFTS)」に感染したとみられ、先月27日に倦怠感を感じてから、わずか12日後に帰らぬ人となってしまった。

 SFTSは、「SFTSウイルス」を保有するマダニに刺されることで発症する動物由来感染症(動物から人にうつる病気)だ。

 2011年に中国で確認された比較的まだ新しい感染症だが、日本国内では2013年に初めて感染が報告されて以降、被害は毎年拡大している。

SFTS症例数は高齢者に多くトップは宮崎

 国立感染症研究所によると、SFTSによる2019年の患者数は102人、これまでの死亡者数は合計66人(冒頭の女性を加えると67人)、致死率は6.3〜30%となっている。

 また、地域別の症例数のトップ3は、山口県と鹿児島県が同率2位で49人、1位は宮崎県の69人となっている(2020年4月29日時点)。梅雨時から夏にかけて症例が多く、とくに高齢者の症例が目立つという。

※参考/国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/3143-sfts.html

人間もペットも感染する怖い病気

「SFTSの症状は、人間の場合は、感染後1~2週間後に発熱や嘔吐、全身倦怠感など風邪に似た症状が現れ、重症化すると死に至ることもあります」

 こう話すのは、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問の獣医師・佐藤貴紀さんだ。

「SFTSウイルスが発見された当初は、発症するのは人間だけと考えられていました。しかし、’17年にSFTSウイルスに感染・発症した猫や犬が見つかっています。

 その後、猫や犬などの動物から人にうつることも判明。すでに2019年6月30日時点で、猫150、犬9頭の感染が報告されています。

 犬の場合は人間と同じように発熱など風邪に似た症状が現れますが、軽症で済むことが多い。

 一方、猫の場合は症状の進行が早く、致死率は50~60%と高いのが特徴です」

 SFTSは、現時点で有効なワクチンや予防薬、治療法が確立されていないため、いかにして感染リスクを下げるか重要だと、佐藤さんはアドバイスする。

マダニに咬まれたら絶対してはいけないのは…

「もしもマダニに噛みつかれたら無理に取らないでください。無理に取るとマダニの頭部が皮膚の中に残り、化膿して重症化の引き金になるとも。

 さららに、マダニを潰してしまうことで他のウィルスなどに感染するリスクも高まります。

 人間の場合は皮膚科等の医療機関、ペットの場合は動物病院を受診して処置を受けてください」

マダニへの対策5選

1.農作業や草の多いところに行く時は長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を極力少なくする。
2.上着や作業着は家の外で脱ぎ、家の中には持ち込まない。
3.屋外活動後は、シャワーや入浴をし、ダニが付いていないか確認する。
4.マダニ専用の虫よけスプレーを活用する。
5.ペットを飼っている人は、定期的にペットにマダニの駆除薬を投与する。

「室内飼いだから大丈夫だと思っている方もいますが、完全室内飼いの場合でも予防は必須です。駆除薬は錠剤やペットの首筋に薬液をさす“スポットタイプ”などがあります。効果の目安は1か月。ペットと飼い主の健康を守るためにも、定期的に薬を投与してください」(佐藤さん、以下同)

 薬に抵抗がある飼い主もいるかもしれない。ただ、駆除薬はペットだけでなく一緒に暮らす人を守る意味もあるので予防策を講じたほうがいいと、佐藤さんは続ける。

【まとめ】治療薬がない感染症と共存するには

 人の命をも奪うダニやノミが媒介する病気は、梅雨から夏にかけてじわじわと増えてくる。

 新型コロナによる感染症も心配だが、マダニによる感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」も有効なワクチンや治療法が確立されていない。人間もペットもかかる感染症と共存していく時代、できる予防策から手を打っておきたい。

教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん

獣医師の佐藤貴紀さん

麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問https://mamec.wolves-tokyo.com/。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。「SuperDoctors 〜名医のいる相談室〜」(https://www.youtube.com/channel/UCUxW…にて配信中。

取材・文/鳥居優美

●新型コロナはペットにも感染する? 猫と犬では違いがある?

●狂犬病14年ぶりに日本で症例が…ペットから人に感染する怖い病気

●ペットと暮らせるなど“自分らしく生きる”ための高齢者ホーム最新事情

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