34才、60才、78才は要注意!急に老け込む!厄年は正しかった
年を取るごとに老けていくことは、生きている限り逃れられないこと。しかし、坂を下りるように老化が進むのではなく、大きな谷が特定のタイミングで表れることがわかった。人生に3回訪れる「その時」の乗り越え方が、人生100年時代を健康に生き抜くために重要な鍵となる。
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米スタンフォード大学の研究チームが2019年末に発表した研究論文
日本人は昔から迫り来る「厄年」を意識してきた。女性の大厄が数え年の33才とされたのは江戸中期からで、その後、平均寿命が伸びるにつれ、男女共通で61才の年を「老い厄」と呼ぶようになった。人生の節目となりやすい時期に体を壊さないよう、注意喚起の意味を込めて信じられてきた風習だ。しかしどうやらこれが、ただの「言い伝え」で済ませられないことがわかってきた。
米スタンフォード大学の研究チームが2019年末に発表した研究論文によると、「老化は34才、60才、78才に急激に進む」というのだ。これは先に記した日本の厄年と非常に近い。
これまで老化は時間の経過とともに一定ペースで進むというのが常識だったが、今回の研究では「段階的」に進むことが明かされている。つまり、「急に老け込んだ」と感じるのは、気のせいではなかったのだ。この衝撃の事実に、街では納得の声が。
「最近、友達といちばん盛り上がる話題が、“白髪”“シミ”“しわ”になっている」(34才女性)
「そういえば、突然、顔面神経麻痺になったのが60才の時でした」(74才女性)
「78才の時に腰を痛めて、重いものが持てなくなった」(84才女性)。
一体、34才、60才、78才の時に何が起こっているのだろうか。
「加齢の波」は34才、60才、78才
「老化」とは、年齢とともに見た目の若々しさが失われることと、健康に関する体の機能が低下していくことの両方を指す。いずれの老化現象にも、血中にある5000種類もの“たんぱく質(プロテイン)”が大きく関与していることが、近年の研究によって解明されつつあり、この研究は「プロテオミクス」と呼ばれ、遺伝子研究に次いで、世界で注目されている分野だ。
米スタンフォード大学の研究チームは、18才から95才までの男女4263人の血液を採取して、たんぱく質の変化を分析した。その結果、「加齢の波」が明らかに表れたのが、34才、60才、78才のタイミングだったのだ。
予防医療とアンチエイジングに取り組む「虎の門中村康宏クリニック」院長の中村康宏さんは、今回の研究結果はこれまでにない視点と評価する。
「研究論文を見ると、ホルモンや骨に関係する項目、皮膚や血管、肝細胞の成長因子にかかわる項目で大きな変化が確認できます。3つの年齢のタイミングで、ガクッとたんぱく質の量が変動している。だからその頃にしわが一気に増えたり、肝機能が低下したりする。『認知機能』を司るたんぱく質や、筋力、握力、心臓にかかわる数値が大きく変わっていることも興味深い。一方で、肥満や低体重の判定に用いる指標のBMIに関連するたんぱく質のように、特定の年齢では極端な変化が起こっていないものもあります」
研究論文の中では、血中たんぱく質を詳細に調べると、その人の年齢を3才程度の誤差で当てられることも示されている。
しかし、一部には、実際の年齢よりもかなり若い数値が出た人もいるという。
「健康状態がよく、たんぱく質の“質”が良好な人は、若く識別されたようです。人間には、生活サイクルを調整するための“体内時計”が備わっていますが、それと同じように、たんぱく質の変化を表す“加齢時計”とも呼べる遺伝子情報が、体内に組み込まれているのではないかと記されています。いつまでも若々しい人は、加齢時計を遅らせられるほど、たんぱく質を健康に保っているのでしょう」(中村さん・以下同)
そもそもヒトは、60代後半に差しかかると、1年ごとにたんぱく質の変動が激しくなっていく。その変化の「波」をうまく乗りこなせないと、いざ78才を迎えた時、急激に体調が悪化してしまう恐れがある。だが、逆を言えば、60代後半から78才までの「荒波」を無事に越えられれば、100才まで健康に生きることが夢ではなくなるということだ。
老化予防対策どうする?
では、いかにしてこの荒波に立ち向かえばいいのだろうか。そのヒントは、たんぱく質にダメージを与える「酸化ストレス」を防ぐことにあると中村さんは言う。
「人間は生まれた瞬間から呼吸し、酸素を吸っています。つまり、生きているだけで酸化ストレスが生じているのです。体にはもともと抗酸化作用が備わっていますが、それは加齢とともに衰えてしまう。さらに、酸化ストレスは体内に蓄積されます。その許容範囲を超えた時、たんぱく質はダメージを受けて、体の不調や老化につながるといわれている。日頃から、酸化ストレスを最小限に抑える生活を心がけなければいけません」
●規則正しい睡眠が大切
そのためには、まず人間の体内時計に合った生活を送る必要がある。特に守るべきは、日々の睡眠時間だ。夜更かしを続けたり、週末に「寝だめ」をすると、体内時計を狂わせてしまいストレスを生む原因になる。酸化ストレスは、睡眠時に分泌される成長ホルモンによって除去され、傷ついた細胞が修復される。また、睡眠導入時に分泌されるホルモン「メラトニン」は、ビタミンCよりはるかに強力な抗酸化作用を発揮する。
「寝るタイミングは一定でなくても構いません。起きる時間から逆算して、7時間ほど寝るようにしてください」
●抗酸化作用の高い食品の摂取
抗酸化作用が高い食品も積極的に摂りたい。カカオの含有量が75%以上のチョコレートや、ビタミンCが豊富な野菜や果物、海藻類は酸化ストレスを緩和してくれる。
●ビタミンCが豊富な野菜を。サプリメントはビタイミンCとEの両方を摂取
「ビタミンCは、ビタミンEもセットで摂取することで吸収がよくなります。サプリメントをのむ時も、ビタミンCとEの両方を摂るようにしてください」
●軽めの運動を習慣化
きつい筋トレを無理してやるより、ウオーキングなどの軽めの運動を習慣にするのもいい。運動によって筋肉に酸化ストレスを与えると、それに対抗するため、全身の抗酸化機能が活性化するからだ。
「一時的に酸化ストレスが生まれますが、トータルでは抗酸化作用が勝つ。これを『ホルミシス効果』と呼び、長寿をもたらす要因として注目されています」
付け焼き刃ではなく、毎日の生活の積み重ねが、34才、60才、78才のタイミングであらわになるということだ。
教えてくれた人
中村康宏さん/虎の門中村康宏クリニック院長。予防医療とアンチエイジングに取り組む。
※女性セブン2020年2月27日号