ウェアラブル端末が売れている理由|健康データの毎日計測を医師も推奨
月に1度の病院の検査より毎日計測のデータが大切
普段から血圧が高めの、50代のAさんは、人間ドックでは異常がなく、降圧剤のおかげで数値も正常の範囲内だった。しかしある冬の日、突然、脳出血を起こしたのだ。その原因は、“寒暖差”だった。Aさんの主治医、慈恵医大晴海トリトンクリニックの医師、横山啓太郎さんが言う。
「Aさんの協力のもと、24時間測定できる血圧計を装着してもらいました。すると、早朝安静時には問題のなかった数値が、寒空の下に散歩へ出かけた途端に跳ね上がっていたのです」
それにより、適切な処方は薬の服用ではなく、気温の低い朝は外出しない、風呂場は事前に暖めておく、寒いトイレではいきまないといった生活習慣の改善だったことがわかった。
「医療として意味があるのは、“何をしたら数値が変化するのか”というデータです。ですので、病院での月1回の検査より、自宅で毎日計測するデータの方が信頼できます」(横山さん)
起床後と就寝前の血圧測定を日課としている人は多いだろう。日本高血圧学会では、家庭血圧は朝と夜の1日2回、座位で、安静を保ってから測るよう推奨している。
だが、この“早朝、空腹、安静時”というルールは、動物実験などの研究結果を参考につくられたものだ。
「人間の生活リズムをきちんと考慮した上での最適なタイミングとは言い切れません。24時間測定できる“ウェアラブル端末(デバイス)”を用いた数値の方が、さらに信頼度が高い可能性があります」(横山さん)
ウエアラブル端末は世界中でブーム
「ウェアラブル端末」とは、体に装着して利用する電子機器のことを指す。腕時計型の「スマートウォッチ」が最も代表的で、テレビCMでもよく目にする「アップルウォッチ」もその1つだ。歩行速度や心拍数、消費カロリー、睡眠時間など健康に関する情報を測定し、スマホのアプリなどと連動して記録や分析できる機能も充実している。
世界的な健康志向の高まりとIT技術の発達により、近年、世界中で大ブームになっている。
総務省の「世界のウェアラブル端末市場規模の推移及び予測」によると、2015年に25.7億ドルだった市場規模は、2020年には36・2億ドルまで拡大すると予想されている。また、調査会社のIDC Japanは、日本国内のウェアラブル端末の出荷台数について、2018年の85万6000台に対し、2022年には124万8000台にまで伸びると予測している。
数千円のお手頃から。デザインも豊富
ビックカメラの広報担当・髙田雅人さんも、「売り上げは右肩上がり」と話す。
「4~5年前には1つのショーケースの半分しかスペースのなかった売り場が、今ではフロアの1コーナーを占めるまでに拡大しました。10万円近い本格派から、数千円のお手頃なものまであり、デザインも豊富です。客層は、男女問いません」
東京ビッグサイトでは、今年で6回目となる大規模イベント「ウェアラブルEXPO」(2月12~14日)が開催された。主催するリード・エグジビション・ジャパンのイベント担当者が解説する。
「これまでは腕時計型やメガネ型の端末が主流でしたが、衣類を使った“着るウェアラブル”や、つけていても邪魔にならない“指輪型”など、新たな形状の製品が登場しています」
ライフスタイルに合わせて、身につけやすいアイテムを自由に選べる時代だ。
※女性セブン2020年2月20日号
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