パニック障害 発作経験者が語る「気の持ちようで治れば苦労しない」
フォロワー 17万人突破 ツイッター主婦・ 深爪さんが女性セブン誌上に連載しているコラムシリーズ「立て板に泥水」。今回は、パニック障害についてだ。
満員電車に乗るのが怖くなった
「パニック障害」をご存じだろうか。最近では、パニック障害の苦しみを告白する芸能人やスポーツ選手もいるので、耳にしたことがある人も多いと思う。
「パニック障害」とは、突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、「死んでしまうのではないか」と恐怖に襲われ、日常生活に支障をきたしてしまう状態をいう。一種の心の病だ。
私もパニック発作持ちである。10年ほど前、それは突然起こった。
いつものように満員電車に揺られていると、駅と駅の間で急に車両が止まった。しばらく待てば動き出すだろうと呑気に構えていたのだが、5分経っても10分経っても一向に動かない。すると突然、耳の奥がわーんと鳴って息が苦しくなり始めた。心拍数がどんどん上がっていく。今すぐこの場から脱出しなければ死んでしまう、と本気で思った。手のひらには汗がにじみ、大声で叫びたい衝動に駆られる。窓ガラスを叩き割って外に飛び出したい。「助けて!」と叫びそうになったその時、「お待たせしました。発車します」とアナウンスが流れた。車両が動き始めると、今までのことがウソのように恐怖心が消えた。
それからというもの、満員電車に乗ることが怖くなった。また、アレが起きたらどうしよう、と考えてしまうのである。電車に閉じ込められたところで死ぬわけはないと頭ではわかっているのだが、自分の意思で身動きが取れない空間に閉じ込められると反射的に、「逃げられない」と思ってしまうのだ。他人にこの話をすると、「一体何から逃げるの?」と怪訝な顔をされる。しまいには、「気のせい。気の持ちようでどうにかなる」と言われる始末。
理論は通用しない「恐怖症」
かかりつけの精神科医によると、私の脳には、ライオンに遭遇した時のような緊急事態に分泌されるべき脳内物質がなんでもない時に出てしまうバグがあるらしい。体的にはライオンに遭遇している状態なのだから、「気のせい」などではないし、気の持ちようでどうにかなるものでもないのだ。
自分がこんな状態になってから、何かを怖がる人に対して、「なんでそんなもんが怖いの?」「死ぬわけじゃないんだから」「気持ちの問題」などという言葉はとてもじゃないが使えなくなった。
恐怖症というのは理論が通用しない。まして、根性でどうにかなるものでもないと身を持って経験したからである。
精神疾患持ちに「気の持ちよう」とアドバイスするのは、がん患者に「気合で治せ」と言い放つくらい無謀だと、私は思う。別に、「おまえら全員、精神病を理解すべき」と強要するつもりはない。ただ、自分の知らないこと(特に病気)に関してコメントする時には慎重にした方がいいよね。だって知らないんだし、ってだけの話である。
深爪(@fukazume_taro)
時事ネタやネットの出来事を日々つぶやいている主婦。著書に『深爪式~声に出して読めない53の話~』『深爪流~役に立ちそうで立たない少し役に立つ話』(ともにKADOKAWA)がある。
※女性セブン2019年11月7・14日号
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