世界のアンチエイジング食でがんに克つ|メキシコや地中海に長寿の秘訣あり
がんの発生率や罹患率、死亡率は国によって異なる。経済協力機構(OECD)の国別がん死亡率報告(2015年度統計)によると、人口10万人当たりの1年間の年齢調整したがん死亡数で、極端に少ないのがメキシコ(115人)。次にコロンビア、ブラジル、トルコ、コスタリカ、フィンランド、スイス、南アフリカ、日本(177人)の順。最も死亡率が高いのがハンガリー(282人)。理由はさまざまだが、その1つに「食事」と考える研究者も多い。
そこで今回は「世界のアンチエイジング食」を紹介。長年、食と病気との関係を研究してきた医師の福田一典さんに聞いた。
10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン治療等を行った本誌記者(59才・その後、再発なし)が、各種治療とともに真剣に取り組んだのが「食生活の見直し」。食事、運動、睡眠など日々の生活が、がん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートします。
長寿のヒントはアンチエイジングフードにあり
―─がん発生率が国で異なる理由は?
福田さん(以下、敬称略) 気候風土や医療、人種による遺伝的理由も存在するかもしれません。また南北の日照時間の違いもあるでしょう。日光に当たりにくい生活習慣をおくると、ビタミンDの生産量が低下し、乳がん、卵巣がん、悪性黒色腫、前立腺がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、腎臓がんなどの発生を増やすことがわかってきました。
加えて私は、がんの発生率に食事が関係していると考えています。例えば北極圏に住む先住民族エスキモーになぜか、がんが少ない。これは穀物を食べる習慣がなく、がん細胞を増やす糖質の摂取量が圧倒的に少ないこと。さらに魚油を多く摂ることも関係しているのではないかと、多くの研究者が注目しています。
―─がんが少ない国はどこですか?
福田 地中海沿岸の国々やメキシコがあげられます。地中海沿岸は循環器疾患、がんの発生率が少ないのですが、その理由の1つに食事があります。糖質が少なく、良質な脂肪や魚介類など抗酸化・抗炎症作用の高い食品を多く使った料理は、がん予防食としておすすめです。
また、メキシコは他国に比べて、がん死亡率が極端に少ない。その鍵となるのが「ライム」と「アボカド」です。
ライムは抗がん作用の高い「クエン酸」を多く含んだ柑橘類で、メキシコでは飲料や食事にライムを丸ごと搾り、健康増進やがん予防に役立つ10g以上のクエン酸をほぼ毎日使います。
アボカドは、「生命の源」と呼ばれるほど栄養価の高い果物です。含まれる脂質の65%は不飽和脂肪酸の「オレイン酸」で、善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化を予防する効果があります。
さらに多種類のビタミン、カロテノイド、カリウムやマグネシウムなど多くのミネラルや食物繊維、たんぱく質などが多い。これらアボカドの栄養と、ライムのクエン酸の組み合わせによって、がん予防効果を相乗的に高めているのでしょう。
──世界の健康食の特徴とは?
福田 がんが少ない国々の食事を見ると、抗老化作用のある食品をふんだんに使っている点が共通しています。ライム、アボカド、にんにく、オリーブオイル、ヨーグルト、果物、スパイスなど、抗炎症、抗酸化、解毒促進、血液循環改善などの機能をもった食品が多い。
このような食品を使った料理は、循環器疾患や認知症の予防にもつながり、寿命を延ばす効果があります。世界のアンチエイジング料理を取り入れ、健康維持に役立てください。
医師もすすめる世界の健康料理
福田さんもすすめる世界のアンチエイジング食。抗炎症、抗酸化、解毒促進、血液循環改善などに効果のある機能性食品をふんだんに使っているのが特徴だ。
●メキシコ料理
スペイン料理の影響を受け、ユネスコの食の無形文化遺産にも登録。ライム、アボカド、豆類、唐辛子など、抗がん作用の高い機能性食品を多く使った世界が認めるヘルシー健康食。
●カルド・トラルペーニョ
<材料>(3~4人分)
鶏手羽元…3~4本
玉ねぎ(4等分)…1個
水…750ml
塩・こしょう…適量
チリペッパー…少々
ライム…1個
<A>
ひよこ豆…100g
にんじん(一口大)…1本
にんにく(みじん切り)…2片
チポトレ(※)…2片
ローリエ…1枚
オレガノ…少々
バジル…少々
<B>
アボカド(5mm幅縦切り)…1個
モッツァレラチーズ(スライス)…適量
パクチー(みじん切り)…適量
トマト(細かく角切り)…1/2個
※チポトレは、薫製にした唐辛子を原料とするメキシコ料理定番の香辛料。インターネット通販で購入できる。
<作り方>
【1】鍋に水、玉ねぎ(4等分のうち3つ)、Aを入れて中火で煮る。
【1】【2】がぐつぐつ煮えてきたら鶏手羽元と塩こしょうを加え、弱火で約40~50分煮込み、最後に塩こしょう、チリペッパーで味を調える。
【3】残りの玉ねぎ(1/4個分)をみじん切りにし、Bとともにトッピング。ライムの搾り汁をかけて食べる。
●サルサソース
<材料>
トマト缶…1缶
玉ねぎ(みじん切り)…大1/2個
ハラペーニョ(青唐辛子。みじん切り)…1/2本
にんにく(すりおろし)…1/2片
ライム…1個(搾り汁)
塩…少々
タバスコ…適量
<作り方>
すべての材料を混ぜる。タコスの具、サラダなどにかけて食べてもおいしい。
●トルコ料理
アジアとヨーロッパにまたがり、東西のスパイスが豊富にそろう世界三大料理(ほかは中華、フランス料理)の1つ。トルコ発祥のヨーグルトを中心にトマト、オリーブオイル、豆類などを豊富に使う。
●パトルジャン・エズメ
<材料>(2~3人分)
なす(縦1/4に切る)…2~3本
<A>
無糖ヨーグルト…大さじ3
にんにく(すりおろし)…1片
オリーブオイル…大さじ3
塩…少々
レモン果汁…適量
トマト…1/2個
<作り方>
【1】なすを電子レンジで約5~6分温めてやわらかくする。
【2】なすのあら熱が取れたら細かく崩す。
【3】ボウルに【2】とAを入れて混ぜ、トマトと一緒に器に盛る。
●ギリシャ料理
地中海料理の代表格。オリーブオイルを多用し、コレステロール値を下げて心臓病リスクを軽減。「ホルタ」は茹でた青野菜にたっぷりと質のよいオリーブオイルをかけた料理。
●ホルタ
<材料>(2~3人分)
青野菜(ほうれん草など)…適量
<A>
オリーブオイル…大さじ3
レモン果汁…適量
塩…少々
<作り方>
茹でた青野菜とAを和える。
●ファヴァ
<材料>(2~3人分)
ひよこ豆…100g
玉ねぎ(スライス)…1/4個
にんにく(すりおろし)…小さじ1
オリーブオイル…大さじ3
レモン果汁…少々
塩・こしょう…少々
<作り方>
【1】ひよこ豆を煮込んでピューレ状にする。
【2】【1】が冷めたら、にんにく、レモン果汁、オリーブオイルを混ぜ合わせる。
【3】塩こしょうで味を調え、玉ねぎを添える。
●ブラジル料理
アサイーはブラジル原産の植物。ポリフェノールや鉄などのミネラル、リノレン酸、オレイン酸なども豊富に含んだスーパーフードだ。
●アサイーボウル
<材料>(3~4人分)
アサイーパウダー…小さじ3
無糖ヨーグルト…大さじ1
豆乳…50ml
バナナ…1/2本
<A>
バナナ…1/2本
キウイ…適量
ブルーベリー…適量
<作り方>
【1】アサイーパウダー、バナナ、無糖ヨーグルト、豆乳をミキサーに入れて撹拌する。
【2】Aをトッピングすれば完成。冷蔵庫で冷やしてはちみつをかけて食べてもおいしい。
※フルーツは好みでトッピングしてください。
●チュニジア料理
アフリカ大陸の地中海に面し、地中海諸国のさまざまな機能性スパイスで調理。野菜や果物、豆類、ナッツ、魚介類などを多く使うアンチエイジング食。
●ハリッサ
<材料>(2~3人分)
唐辛子(生)…10本
塩・こしょう…少々
<A>
パプリカパウダー…小さじ1
キャラウエイシード…小さじ1
コリアンダーシード…小さじ1/2
クミンシード…小さじ1/2
<B>
すりおろし・にんにく…2かけ
オリーブオイル…大さじ1
レモン果汁…小さじ1
<作り方>
【1】へたを取り除いた唐辛子とAをすり鉢やハンドミキサーで細かく砕く。
【2】【1】にBを加えて均一になめらかになるまでよく混ぜて、塩こしょうで味を調える。
●なすとズッキーニのハリッサ炒め
<材料>(2~3人分)
ハリッサ…適量
なす…2本
ズッキーニ…1本
オリーブオイル…大さじ1
塩・こしょう…適量
粉チーズ…適量
<作り方>
【1】なす、ズッキーニは食べやすい大きさの輪切りにする。
【2】フライパンにオリーブオイルを入れ、【1】を炒める。
【3】野菜に火が通ったら、ハリッサを加えて軽く炒め、塩こしょうで味を調えれば完成。粉チーズをかけて食べるとおいしい。
教えてくれたのは
医師・福田一典さん/1953年、福岡県生まれ。米国でがんの分子生物学的研究を行い、国立がん研究センターでがんの予防法を研究。西洋医学に漢方を取り入れた医療で食事指導なども行う。銀座東京クリニック院長。著書に『福田式 がんを遠ざけるケトン食レシピ』など多数。
撮影/茶山浩
※女性セブン2019年10月10日号
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