人が生きづらい理由は〇〇されないから 哲学に学ぶアナ雪「ありのままで」幻想
どこかに『ハダカの自分』がいると考えている人がいますが、そんなものはありません。あるのは、すべて『誰かとの関係の中の自分』なのです。
ありのままの自分がいる、等身大の自分、ハダカの自分がどこかにいると考えるのは、不幸の始まりです。探したとしても決して見つかりません。ユクスキュルの言っていることは生物学でありながら、自分のこととして考えられる哲学なのです」
ありのままの自分でいることに憧れる人は少なくなさそうだ。だがそれは幻想だという。結局は、自分の存在というのは、誰かとの関係の中で成り立つからだ。
人が生きづらいのは、ありのままでいられなかったからではなく、他人から認められないから。『アナと雪の女王』でも、エルサが生きにくかったのは、認めてもらえなかったからだ(しかも自分の両親に!)。結局、大団円を迎えた後も、彼女を否定する人間が現れたら、また辛くなることには変わりがない。
誰もが他人を尊重できたら、自分を否定されることもなく、生きづらさも軽減されるだろう。となると、自分にできることは「ハダカの自分」になることではなくて、他人を尊重することに尽きそうだ。
◆取材講座:「哲学 ― 常識批判の基盤を形成するために ― 」(早稲田大学エクステンションセンター中野校)
文/和久井香菜子 写真/和久井香菜子(講座写真)、SVD、(c)Saruri、(c)Robert Kneschke、(c)Africa Studio / fotolia
初出:まなナビ