アサーティブな人が心がけている「話し上手になる」4つのコツ
相手を尊重しながら、自分の言いたいことをその場の状況にあった適切な方法で表現する──その方法を学べるのがアサーティブ・コミュニケーションだ。前回の「アサーティブな人が心がけている「聴き上手になる」4つのコツ」に続き、神奈川大学公開講座「素敵な自己表現・アサーティブ・コミュニケーション」から、研修のプロ・喜多朋子先生(Manner-Bo Alliance株式会社)が指導する話し上手になるポイントを、神奈川大学人間科学部2年の佐藤優衣記者がレポートする。
1.自分の気持ちを整理してから表現する
「話したいことはヤマほどあるのに、なかなか相手に伝わらない、聴いてもらえない」そういう人に多いのが、思いつきでだらだら話してしまっていることだ。熱意を持って長時間説明しても、「で、話の要点は?」などと訊き返されるのがこれにあたる。
アサーティブ・コミュニケーションで大切なのは、相手を尊重すること。相手の大切な時間を使うのだから、その時間を無駄にしないように簡潔明瞭に話したい。そのためには、話す前にまず自分の考えや気持ちを整理することが大切だ。
面接やプレゼンテーションでは、限られたj時間内で内容を伝えようとしても、思いついたことから話してしまい、言いたいことが伝えられないうちに時間オーバーしてしまう、あるいは前置きが長く、なかなか結論に至らない、そのような人も多いだろう。
「何が言いたいのかわからない」、「で、要点は?」などと切り返されないために、喜多先生は次の2つの文章構成法を紹介してくれた。
2.導入結論→理由→具体例→最終結論のPREP法
PREP法は4つのステップから構成される。
(1)POINT 導入結論
「~に関しての結論は~です」
(2)REASON 理由
「なぜならば、~であるからです」
(3)EXAMPLE 具体例
「と申しますのは、具体的には~です」
(4)POINT 最終結論
「ということで~です」
この4つのステップの頭文字を取ってPREP法と呼ぶ。「PREP法」は最初と最後に結論を伝えることが特徴だ。
講座では、短時間に話をまとめるトレーニングとして、「1分であなたが勧めるものを伝えよう」という課題が出された。好きなテレビ番組、好みのレストラン、続けている健康法、何でもよい。何かをとりあげ、「私のおススメは〇〇です」「なぜならば……だからです」「具体的には……です」「ということで、私のおススメは〇〇です」を1分以内で話せるようにまとめ、2人1組で発表し合った。
この場合、例が具体的であればあるほど、相手に伝わりやすい。1分間に話す文字数は380文字程度にまとめると、間を取ることができ、相手に伝わりやすいという。また、1センテンスが長いとわかりにくいので、目安としては1センテンス30字~40字くらいに収まるようにすると、相手も理解しやすい。
しかしながら、PREP法でネガティブな内容を伝える際は、あまりに簡潔すぎて、相手にストレートに伝わってしまいがちだ。そのため、ネガティブな話をする場合は、話し始める前に「お忙しいところ恐れ入りますが……」、「少しお時間よろしいでしょうか……」など、一言気遣うクッション言葉を入れることが大切だという。
3.要約→詳細→要約のSDS法
もうひとつが「SDS法」と呼ばれるものだ。これは3つのステップから成る。
(1)SUMMARY 全体(要約)
「本日はお話したいことが3点あります。
(2)DETAILS 本論(詳細)
「1点目については……です。2点目については……です。3点目については……です」
(3) SUMMARY 全体(要約)
「以上のように、1つ目は…、2つ目は…、3つ目は…、以上お話したいことはこの3点です」
「話が終了した」と思っていると、「言いたいことがもう一つありまして……」と、次から次へと話が拡大してしまう人がいるが、「SDS法」であらかじめ伝えたいことの件数を決めておくと、そういうことが避けられる。
PREP法とSDS法、どちらを使うかは、その時々の状況や相手によって判断しながら使い分ければよいだろう。
4.相手を尊重し、自分の気持ちに素直な表現を心がける
話すときは相手の状況、反応に配慮することが大切だ。
心遣いを表現するクッション言葉も大いに活用したい。例えば「お忙しいところ申し訳ないのですが……」の一言があると、忙しい相手の状況に配慮している気持ちが伝えられる。忙しくてあまり時間をとれない相手であれば、話を始める前に「3分ほどよろしいですか?」など所要時間を明確にすると、相手に集中して話を聴いてもらいやすくなる。
語尾は「……してください」といった命令口調ではなく、「……してもらえますか」といった依頼形で話すことで、よりアサーティブになる。話し終えた後には「時間をとってくださってありがとうございます」と、感謝や労りの言葉を伝えるとよい。そうすることで、次の会話に繋がりやすくなる。
気をつけたいのは「すみません」という言葉。
ノンアサーティブ(受け身的表現)の人は事あるごとに、前置きとして「すみません、……」を多用する傾向がある。しかし「すみません」には「ありがとう」と「申し訳ない」という両意があるので、言葉はしっかり使い分けるのがよい。
喜多先生の説明は感情豊かで語彙もバリエーションに富んでいて、具体例がとてもわかりやすく、90分の講義がまったく苦にならなかった。本で読むのとは違い、実際に講義を受けるとよく理解できる。「言いたいことが言えない」悩みがすっと解消された。
◆取材講座:「素敵な自己表現「アサーティブ・コミュニケーション」──言いにくいことを素敵に表現する」(神奈川大学公開講座/みなとみらいエクステンションセンター)
◆講師プロフィール:喜多朋子(きた・ともこ)Manner-Bo Alliance株式会社
電気メーカー、情報コンサルティング会社にて総務・採用・秘書業務、社員教育を経て、講師として独立。現在は研修、大学非常勤講師として活躍。実務経験に裏付けられたビジネスマナー、接遇、キャリアデザインの指導には定評がある。秘書技能検定、サービス接遇検定の面接審査員にも従事している。
取材・文/佐藤優衣(神奈川大学人間科学部2年)
初出:まなナビ