看取り率6割、看護師の施設長が運営する介護付有料老人ホーム<後編>
ドールセラピーなどの新たな取り組み
高橋さんは施設長になってから新たな取り組みを始めた。その1つが「ドールセラピー」の導入だ。ドールセラピーはスウェーデンでは広く普及しているのだという。ライフステージ阿佐ヶ谷で使っているのはそのスウェーデンのルーベンズバーンズ社の人形だ。元々は教育的配慮を必要とする児童を対象として開発され、その後、認知症ケアへの効果が認められ、多くの高齢者施設で利用されるようになった。自分の好みに応じた形や大きさ、色の人形を選ぶことができ、大好きな人形を抱きしめることで落ち着きを取り戻せるのだそう。
「実際に、ここでお使いになっている方もいらっしゃいますよ。安心感を得ることができるようです」(高橋さん、以下「」は同)
高橋さんは他にも新たな取り組みを始めている。「自分らしく生きる」「地域の中で楽しく暮らす」「最期まで安心できる」「働くスタッフが向上心と誇りの持てる施設」という運営理念をあらためて作ったのだという。そして、その運営理念を基に介護力強化を進めている。
こちらの介護スタッフの6割以上が介護福祉士の有資格者で、勤続年数は平均7年と長い。専従の理学療法士による生活リハビリの提供、認知症専任スタッフの配置など介護サービスの充実にも力を入れている。さらに徒歩3分の距離に救急の機能がある総合病院があり、受診の付き添い、入退院の支援を無料で行っている。協力医療機関とは月2回以上の訪問診療を含め24時間の医療連携体制を確保しているそうだ。
「介護のケアをもう一度見直しています。運営に慣れてくると介護者主体になりがちなので、入居者本位の体制になっているのかを確認して、問題があれば是正しています」
今後は地域のコミュニティとの交流も活発にしていきたいと語る。実際に「阿佐谷七夕まつり」に入居者とハリボテ飾りを作って参加するなど、少しずつ地域との連携ができてきているようだ。
「生け花やアニマルセラピーなどのレクリエーションは外部の講師にお願いしているのですが、これからは地域のボランティアにお願いしようと思っています」
飛び込みの見学と体験入居の重要性
高齢者向けの施設を探す際のポイントと時期についても教えてもらった。高橋さんは契約前に体験入居を絶対にすべきだと話す。
「最初に電話をした時の対応で感じることも多いと思います。それと、飛び込みで見学に行った時の対応で分かることもあります。正当な理由があって飛び込み見学への対応が難しい場合はもちろんありますが、融通がきくかどうかを見分けるポイントになりますね」
「案内をする職員は、良いことしか言わない可能性が高いですよね。でも、実際に介護をするのは現場の職員です。そのギャップは、入居して体験しないと絶対に分からないんですよね。入居するご本人もご家族も、ケアの質をきちんと見極めてから入居を決めたほうがいいですよ」
施設を探し始める時期としては、「お手洗いが自分でできなくなった時には、もう考え始めたほうがご家族の負担を考えるといいと思います。お部屋や眠るところ、お手洗いを汚してしまう頻度が増えてきたら、介護のプロに任せる時期だと考えます。ホームヘルパーさんにお願いしても24時間いつでも来ていただくわけにはいきませんが、お手洗いは24時間のことなので目安の1つですね」とアドバイスをくれた。
施設長の高橋さん個人はもちろん、施設全体でも看取りの経験値は高い。看取りの時期には家族が居室に泊まり、そばにいることもできる。また、体験入居は最長2週間できるので、実際の部屋で過ごし、納得してから契約をすることも可能だ。終の棲家として検討してみてはいかがだろうか。
撮影/津野貴生
【データ】
施設名:ライフステージ阿佐ヶ谷
公式WEBサイト:http://lifestage-asagaya.com/
所在地:東京都杉並区阿佐谷北1-9-5
最寄駅:JR「阿佐ヶ谷駅」北口より徒歩4分
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:株式会社星医療酸器
敷地面積:1124.49平方メートル
延床面積:2095.77平方メートル
室数:43室(定員43名)
入居要件:原則として要支援、要介護認定者
構造:鉄筋コンクリート造地下1階地上4階建
開設年月日:2005年12月1日
料金:
●入居一時金(非課税)
【1】長期契約/標準プラン1380万~2680万円、月額減額プラン1716万~3016万円
【2】年契約/標準プラン262万~501万円、月額減額プラン346万~585万円
【3】月契約/月払プラン0円
●月額費(消費税込)
【1】標準プラン27万円
【2】月額減額プラン19万9800円
【3】月払プラン50万~71万円
※部屋タイプ(Aタイプ15~17平方メートルからGタイプ28平方メートル)によって、費用に幅があります。入居一時金、月額費用以外には、介護保険自己負担分やオムツなどの実費が必要となります。
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
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