エルサレムはどこの国のものか?池上彰が解説
第2次世界大戦で600万人ものユダヤ人が虐殺されたことを受け、ユダヤ人社会には改めてユダヤ国家建国への思いが高まる。ユダヤ人たちは戦後、パレスチナに入植し始め、アラブ人と激しい衝突が起こる。しかし事の発端を生んだイギリスは、すでにパレスチナ問題を解決する力を失っていた。
1947年、国連のパレスチナ分割決議で、パレスチナの土地の56.5%をユダヤ国家、43.5%をアラブ国家とすること、そしてエルサレムは国連による永久信託統治とすることとなった。
イスラエルの独立はその翌年である。以降、イスラエルと周辺アラブ国家との間では幾たびもの中東戦争や数限りない紛争が起こることとなる。
イスラエルはエルサレムが首都だと主張し続けてきたが
「1967年に始まった第3次中東戦争によってイスラエルはエルサレムの全域を占領し、「分割されない永遠の首都」だと宣言しました。つまりエルサレムはすべてユダヤ人のもので、キリスト教、イスラム教と分割することはできないという宣言です。
イスラエル政府に首都はどこですかと聞くと、エルサレムだと答えます。イスラエルで発行されている地図帳を見ても、首都はエルサレムになっています。
しかし、このイスラエルの主張は世界的には認められていません。国連の分割決議に基づいて建国されたイスラエルの首都はテルアビブとなっています。
国際的に大使館はその国の首都に置くことになっています。ですから、日本大使館はもちろん各国の大使館はすべてテルアビブにあります」(同前)
しかしトランプ大統領は12月6日、エルサレムをイスラエルの首都と認め、テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移転すると宣言した。
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プロフィール:池上彰
1950(昭和25)年、長野県生まれ。ジャーナリスト。東京工業大学教授。慶應大学経済学部卒業後、NHK入局。報道記者や番組キャスターなどを務め、2005年よりフリーに。今さら聞けないニュースの本質をズバリ解説する。著書に『伝える力』『おとなの教養』ほか著作多数。2013年、伊丹十三賞受賞。
文/まなナビ編集室
初出:まなナビ