生活能力に影響する60歳からの運動術をプロから学ぶ
「長さが簡単に調節できるから、柔らかい人は短いまま、かたい人は伸ばせばいい。個々の体の柔軟性に合わせられるし、身近で値段もお手頃なんて器具は、突っ張り棒しかないですね(笑)」
キック運動に使うボールは、テニスボールよりやや大きめで、やわらかいスポンジ製。サッカーボールよりかなり小さいから、集中しないと空振り(空蹴り?)するし、芯をしっかりとらえて蹴らないと真っすぐ進まない。でも、踏んづけても転ばないし、当たっても痛くないから安全だ。
ラダーと呼ばれる運動は、床に広げるとはしご状になる器具でおこなう。マス目に合わせて内・内・外、一歩二歩などとちょっと上級ケンケンパのようなステップを踏み、つま先までの足さばきの素早さ、正確さを向上させ、とっさのバランス対応力を鍛えるのだ。これは運動量が大きいだけでなく、ステップのパターンを覚えないといけないので、同時に相当な脳トレにもなる。いきなりやるとあたふた(汗)。
「ちょっとキツイ」と感じるタイミングで
村井先生のプログラムには、高齢者向けの講座ならではの“続く秘訣”が詰まっている。
「運動能力は個人差があるし、運動の種類によって得手不得手もあります。周りより劣っていると思うと恥ずかしくて運動するのがいやになってしまう。苦手なものばかりずっと続いても、いやになってしまうでしょう? だから、少しすると違う運動に変わります。ゲーム感覚で楽しく体を動かせるよう、棒やボール、風船やフリスビーなども使って、1時間半のなかで6、7種類の運動を細かく組み合わせています。競争するのではなく、自分なりの一番いいパフォーマンスを続けることが肝心。どんな人でも必ず運動能力が向上します」
「ちょっとキツイ」と感じるタイミングで、3~10分ほどの休憩と水分補給タイムをこまめに入れるのも絶妙。部屋の壁には、腰から下くらいの部分にクッション材が貼られ、万一転んでしまった場合のリスクにも気を配っている。
60歳までまったく運動をしてこなかった人も、それなりに運動をしてきた人も、平等にみんなが息を上げながら楽しそうで、村井先生の狙いがどんぴしゃハマっているようだ。
〔先生のココイチ〕苦手なものが続かないよう、さまざまな運動を組み合わせ、バラエティ豊かな1時間半。たとえば腕を上げるという動作も日常にないので、バンザイの姿勢だけでも意外とキツい!?
取材講座:「60歳からの体力再生健康体操」(中央大学クレセント・アカデミー2017年春期)
文・写真/まなナビ編集室
初出:まなナビ