地域に根ざし高齢者サービスの拠点となる特別養護老人ホーム<後編>
オープン間近の話題の施設や評判の高いホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
今回紹介するのは、特別養護老人ホーム「千歳敬心苑」だ。
千歳敬心苑
「千歳敬心苑」は開設20周年を迎えた東京・世田谷区にある特別養護老人ホームだ。前編では人材育成担当として現場を引っ張る山口晃弘さんに話を聞いた。今回は施設内の詳しい紹介と山口さんを招いた苑長の遠藤茂さんに話を聞いていく。
スタッフが高齢者の生きがいを支える
昼食後のひとときに施設内を歩いていて気づいたことがある。ほとんどの入居者が部屋から出て過ごしているのだ。山口さんによると、心身の機能が低下しないように、職員が部屋から連れ出しているという。もちろん、無理矢理ではない。入居者が部屋で過ごしていれば職員も手がかからないはずだが、積極的に声をかけているとのこと。こういった日々の取り組みが、心身の状態に与える影響は決して小さくない。
居室は木の質感を活かした内装で、個室、2人部屋、4人部屋の3種類がある。そして、ひとりひとりの希望にできるだけ寄り添うようにスタッフが生活の支援をしてくれる。
専任のマッサージ師によって、身体の状態に応じたリハビリを受けることができる。また、嘱託の内科医師、精神科医師、歯科医師が定期的に施設を訪問し診療を行っているという。
千歳敬心苑の介護職員の95%は常勤職員で各種の資格保有率が高い。特に国家資格である介護福祉士の保有率は80%以上で、資格取得希望者には施設が支援を行っている。
また、介護職員の働きやすさ、やりがいにもこだわりを持ち、福利厚生、親睦会、施設内外の研修なども実施しているそうだ。介護離職が問題になって久しいが、平均在職年数は6.5年と全国平均5年を上回っている。人材の能力向上と定着は、介護を受ける入居者にとっても快適さを増す要因になる。さらに人材育成担当の山口さんが入ったことにより、徐々に変化が見られるという。