在宅介護を頑張る人へ~漫画家&介護福祉士・國廣幸亜さんに聞く「介護職のホンネ」
それは認知症の人や障害がある人も同じだそうだ。
「認知症は、混乱したときに出る症状などがクローズアップされてしまい、思考力・判断力がなくなる、問題行動が続くなどと誤解されていますが、必ずしもそうではありません。
例えば子どもや孫のことを心配し、気遣っている方も大勢見てきました。我が子のことが認知できなくなっている場合や、顔を合わせればけんかばかりしている場合でも、長くご様子を見ているうちに、親としての心を持ち続けていること、それまでの親子関係やその方のお家の歴史をそのまま続けているんだなと、気づかされたことが何度もあり、そういったエピソードを漫画に描いています」
長年行ってきた作業の記憶は、認知症になっても残っている
今では、なるべくその人の「歴史」や「好きなこと」「大切に思っていること」が維持され、その人らしい人生を全うすることを支えるのが介護の仕事で、そこにやりがいがあるはずだと考えている。
利用者全員が認知症の診断を受けているという施設に漫画の取材で行ったとき、印象に残ったケアがあったと話す。
「利用者の人たちが、調理の下ごしらえや盛り付け、配膳を行っていたんです。上げ膳・据膳で食事を提供されることが、介護を受ける方にとって、必ずしも喜ばれたり、役に立つばかりとは限りらないんですよね。
家事や仕事で長年、行ってきた作業の記憶は『手続き記憶』と呼ばれ、認知症になっても残っている場合が多いと言われています。この記憶を忘れないような作業を、日常生活で続けるということは、機能の維持だけではなく、できないことが増えて不安になっているご本人に自信と安心を与えるという大切な役割があります。安心は何よりご本人の落ち着きにつながることだからです。
その施設では、もちろん職員が側で見守り、必要に応じて支えていましたが、その様子は、私自身もこんな介護を受けたいと思うようなケアでした」
介護中の家庭にたくさん接してきたる國廣さん。これまでの経験から、在宅介護へはどんなアドバイスがあるだろうか?