介護中の座位と姿勢を保つコツ「適正な姿勢の見つけ方」<第2回>【福祉用具相談員が解説】プロが教える在宅介護のヒント」
介護保険を利用して、本人も家族も生活しやすい環境づくりの相談に乗っている福祉用具専門相談員。
暮らしの中でさまざまな困りごとが起こったとき、用具や設備を工夫し、生活しやすくする提案を行う専門家だ。
日常生活では食事、入浴、排泄など、多くの活動場面で「座る」態勢を維持する必要があるが、高齢になると疲れやすく、姿勢を保つことが難しくなって、活動に支障をきたす人も多いという。
介護ヘルパーの経験をもつ福祉用具専門相談員・山上智史さんに介護生活のヒント教えてもらうシリーズ、今回は、目的に適した座位と姿勢を保つコツを、聞いた。
目的に合わせて「座る」環境づくりをしよう
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「人によって違う活動」に適した姿勢を見つける
一般的に、座って何をするのか、その目的によって基本とされる良い姿勢の型があります。
例えば、食事をするときは「食べ物を飲み込みやすい」ことが目的で「基本姿勢」(注1)があり、とくに高齢者には嚥下機能が衰えている人も多いため、食べ物を誤嚥したり、窒息することがないよう注意する必要があります。
しかし要介護者は自力で基本の姿勢をとり、保つことが難しくなっている人が多いです。
介護ヘルパーさんやご家族が「基本姿勢」になるようにクッションやステップなどを使って調整しても、以下の理由で「食事がとれない」問題が生じることがあります。
・時間が経つと崩れてしまう
・窮屈で体が動きづらい
・食べ物をこぼす、残す
・時間がかかり、疲れる
すると周囲は、筋肉が衰えているために姿勢の保持が困難で、自力で食べるのは無理、危険などと考えて、「食事介助が必要」と判断してしまいます。
ちょっと乱暴な解説ですが、実際にこのような判断で、本当は「自分でできること」であるのに、自立が妨げられることも起こります。
実は、一般の人でも「基本姿勢」をとり続けるのは難しいのです。大抵は、適当に姿勢を崩しながら、自然と自分が嚥下しやすい姿勢で食べているでしょう。
介護が必要になった人も、それまではずっと、それぞれが「飲み込みがラクな姿勢」で食べ続けてきたのです。
人によって、目的によって、ラクに、安全に動ける姿勢は必ずしも基本通りではないと考え、介護をする人は、まずその人にとって目的が果たせる座位を見つけましょう。
なお、食事のときの適切な姿勢や、崩れ方、つらい姿勢などが分かれば、トイレや風呂場など他の活動シーンで座位を支えるときも応用できます(次ページのトイレ・風呂場の姿勢を参照)。
※注1:食事をとるときの「基本の姿勢」
介護をする上で「基本の姿勢」は見当として知っておく必要があます。食事介助をする場合は、まず「基本の姿勢」を整えることが安全です。
・ 背もたれがある椅子に背筋を伸ばして座る
・ 膝を90度に曲げたとき、足底がしっかりと床に着く高さの椅子を選ぶ
・ テーブルは肘の高さに
・ テーブルと人の距離はにぎりこぶし1つ分程度