倉田真由美さん「子犬と初めて過ごした夜の話」くらたまね~&らいふVol.33
漫画家の倉田真由美さんは、知人から頼まれ、生後4か月の子犬を預かることになった。好奇心旺盛なコーギー犬の女の子だが、子犬との暮らしは驚くことばかり。そして初めての夜を迎えることになり――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病から看取りまでを綴った書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
子犬を迎えた夜のこと「丑三つ時に…」
知人からコーギーの子犬(4か月)を預かった日の夜。「子犬だから、夜はたっぷり眠るんだろう」と勝手に思っていましたが、甘かったです。
犬にとっては知らない家だし、独りぼっちで寝るのは心細かろうと、リビングで座椅子を並べて犬のそばで寝ることにしました。興奮しているためか22時を過ぎてもなかなか眠る様子がなかった犬ですが、電気を消して暗くすると、やっと用意していた寝床のバスタオルの上で眠りにつきました。私も普段はもう少し起きているのですが、犬に付き合って早めに就寝しました。
しかし、安眠することは出来ませんでした。ゴソゴソ動いている気配で目を覚まし、犬の姿を探すと、トイレシートの上で排便しているのが見えました。ちゃんとシートでするの偉いなあと感心しましたが、時計を見ると夜中の2時過ぎで、こんな時間に?とちょっと驚きました。
子犬なので排泄の回数が多いのでしょうが、丑三つ時にもするのは想定外でした。処理しようと近づくと、犬が今出たばかりのフンの匂いを嗅いでいます。そういえば飼い主が、「たまに自分のう◯こ食べちゃうから気をつけて」と話していました。
「だめ!」
と声を上げ、慌てて犬を抱えて引き離しました。
何とか間に合いましたが、危ないところでした。急いでフンを処分し、濡れタオルで顔を拭きました。新しいトイレシートを出しながら、「これは結構大変だな…」とため息をつき犬を見ると、おもちゃを噛んで遊んでいます。当たり前ですが自分の始末が何も出来ないところは、人間の赤ん坊と同じです。かわいいけど、目が離せません。
手を洗い、犬を抱き上げて寝床に連れて行き「ほら、寝るよ」と声をかけて消灯しました。犬はすぐ寝息を立てますが、目が覚めてしまった私はすぐには眠れません。うとうとしたと思ったらもう朝で、もう一寝入りしたいと頑張りましたが叶わず、子どもや犬の朝食の準備をする時間が来てしまいました。
翌朝、お散歩へ…
バタバタで朝のルーティンを終わらせ娘を学校へ送り出した後、洗い物をして犬の散歩をしようと流し台へ向かうと、足が水たまりを踏みました。おしっこです。トイレシートでする時としない時があって、時折こうして脈絡なく床に水たまりを作ります。
私が雑巾で床を拭いていると、犬がその雑巾にじゃれつき邪魔をしてきました。
「ちょっと、これはやめてね」と言っても布を動かしているのが面白いのか、雑巾をガブガブ噛んできます。ついでに手も噛みます。邪魔だし痛いですが、笑えてしまって怒れません。床ワイパーにも同じように反応するので、掃除も余計に手間がかかります。
後始末や準備が終わりやっと散歩に出ました。犬連れの散歩は至福の時間です。そして普段歩いているだけでは決してないことですが、犬連れだと同じ犬連れの人や犬好きの人に話しかけられます。
「あらー、かわいい」
「まだ子犬ですね、本当にかわいい!」
公園には、犬を連れた人たちが数人集まっていました。私は飼い主のような顔で得意な気分で挨拶をして、公園を通り抜け住宅地をぐるぐる回りました。途中、犬は何度も座り込んだのでその度に待ったり、急かしたり、抱き上げて歩いたりしました。
帰宅すると、まだ朝なのにどっと疲れを感じました。眠れなかったのもありますが、やはり犬のいる生活は想像していた以上にハードです。特に子犬のうちは手間がかかるし神経を使うので、相当消耗します。
実際この翌々日、ほんの20分ほど犬を家に置いて買い物に行き戻ってきたら、抗議の意思表示なのかトイレシートをぐちゃぐちゃのビリビリに破いていました。それまでトイレシートにいたずらしたことはなかったので、置いていかれたことに怒っていたんだと思います。
数日後知人が犬を迎えに来た時は、情が移っていたので寂しかったですが、少しホッとしたのも事実です。
「またおいでね」
頭を撫でると、これでさようならだということを知らない犬は、笑顔で私を見つめます。無邪気な顔。かわいいなあ。
犬を飼いたい熱はなかなか治りませんが、現実の厳しさを知ることができたのはありがたかったです。今はまだ飼えないですが、いつか人生に余裕が出来たら飼いたいなあとは思います。
