《名医考案の》腎機能復活を目指す「尻上げ10秒」と「早歩き」 60代から始める“健康寿命をのばす”新常識
食事、消化、吸収、排泄という人の基本的営みを担う「内臓」は年齢とともに機能が低下しやすく、がんの罹患リスクも高まっていく。だが、日々の生活習慣で各臓器の老化をくい止め、機能を改善することはできる。そこで、腎臓を守り、復活させる方法を医師に聞いた。
腎臓を復活させる「尻上げ」と「早歩き」
腎臓も自覚症状が乏しい「沈黙の臓器」のひとつだ。
東北大学名誉教授でベストセラー『腎臓大復活』の著書がある上月正博医師が言う。
「腎臓は血液を濾過してきれいにし、毒素や不要物を体外に排出する役割があります。その機能が低下すれば体中を汚れた血液が回るようになり、細胞や各臓器の働きが悪化してしまう。他にも血液中のミネラル成分の濃度を適度に調整するなど、生命維持に欠かせない重要な機能を果たしています」
腎臓の濾過機能を担っている細胞がネフロンで、片方の腎臓に約100万個、左右合わせて約200万個ある。
しかし、ネフロンは加齢とともに減っていき、60代になると20代の約半分に減少。70代では3人に1人、80代になると2人に1人は腎機能が低下した「慢性腎臓病」になるとされている。24年の統計では日本の成人の慢性腎臓病患者は約2000万人にものぼる。
「60代は腎機能低下の大きなターニングポイント。ここで『腎臓リハビリ』を行なうかどうかで、腎臓寿命はもちろん、健康寿命も大きく変わってきます」(上月医師。以下「」内同じ)
上月医師が考案した腎臓リハビリは、食事と運動の2本柱だ。
「血圧が高くなると、ネフロンを構成する糸球体の毛細血管にかかる圧が上昇し、細かいふるいの役割をするタコ足細胞が剥がれて濾過機能の低下が進みます。まずは食生活の改善で高血圧を予防することが重要です」
腎臓病患者の食事制限には過酷なイメージが伴うが、「腎臓を復活させる食事法」はつらくない範囲で行なう。
「食事での塩分を控えることが基本になりますが、過度な減塩は必要ありません。味噌汁と漬物を控える程度で大丈夫。調味料は『かける』のではなく『つける』。香辛料や薬味を使い、食事の満足度を落とさずに塩分を減らしていくのがコツです。我慢しすぎず、アバウトなくらいでちょうどいいのです」
肝臓と同じく、糖質の摂りすぎは腎臓にも負担をかける。
「清涼飲料水やスポーツドリンクなどの甘い飲み物をお茶や水、ブラックコーヒーに替えるだけでも糖質を大幅に減らせます」
一方、注意が必要なのがミネラルのリン。体内で過剰になると細胞毒のように働き、ネフロンにダメージを与えることがわかっているという。
「肉類や牛乳、チーズなどに含まれる有機リンは、吸収率が低いのでそれほど心配いりません。しかし、ソーセージやハムなどの加工肉、かまぼこやちくわなどの水産加工品、カップ麺や冷凍食品、スナック菓子、プリンやゼリーなどに添加物として使われる無機リンは吸収率が90%以上。食べすぎは禁物です」
腎臓リハビリの中核「腎活性ウォーキング」
【1】あごを引き、正面を見て視線は遠めに
【2】背筋を伸ばし、肩の力を抜く
【3】腕を前後に大きく振る
【4】下腹に力を入れて胸を張る
【5】ひざを伸ばす
【6】つま先で蹴り、かかとで着地
【7】歩幅は広めに
らくらく筋トレ「ヒップリフト」
【1】仰向けになり、両手を肩幅に開いて、ひざを立てる
【2】5秒かけて口から息を吐きながらゆっくりとお尻を持ち上げて、その姿勢のまま10秒キープする
【3】5秒かけて鼻から息を吸いながらゆっくりとお尻を下ろし、【1】の姿勢に戻る
3回繰り返して1セット<1日2~3セット目安>
腎臓リハビリのもう1本の柱が運動だ。従来は「動くと腎臓に悪い」とされてきたが、近年ではむしろ適度な運動が推奨されている。
「運動によって糸球体の出口の血管が広がるため、タコ足細胞が剥がれにくくなります。血圧を下げる働きのある一酸化窒素や、活性酸素を無害化する酵素が分泌されることも、腎臓の毛細血管を守ることにつながります」
そこで上月医師が推奨するのが「ヒップリフト」だ。
仰向けに寝た状態から、口から息を吐きながら5秒かけてお尻を持ち上げ、息を止めずに10秒キープ。鼻から息を吸いながら5秒かけてゆっくりと下ろすだけ。
「筋肉量を増やし、全身の血行を促進することで腎臓の機能維持につながります。体への負担が少なく時間も短いため、楽にできるはずです」
そして運動の核となるのが、「腎活性ウォーキング」だ。図のように背筋を伸ばし、下腹に力を入れて胸を張るのが基本の姿勢。正面を見て視線を遠くに置きながら、腕を前後に大きく振り、歩幅を広めに歩く。
「目標は1日30~60分を週3~5回、1週間にトータル150~180分歩くこと。例えば1日30分を週5回行なえば目標をクリアできます。30分歩き続けるのがつらい人は、1日合計30分でいい。息が切れるか切れないかのレベルの早歩きが効果的です」
腎臓リハビリは「三日坊主にならず、継続することが何よりも大切です」と上月医師。
腎臓を守るためにさっそく取り組みたい。
◆教えてくれた人:東北大学名誉教授・上月正博医師
※週刊ポスト2026年9月18日号
