《肝臓専門医が明かす新常識》脂肪肝の原因は「脂」ではなく「糖」 休肝日不要、肉・揚げ物は我慢しなくていい理由
食事、消化、吸収、排泄という人の基本的営みを担う「内臓」は年齢とともに機能が低下しやすく、がんの罹患リスクも高まっていく。だが、日々の生活習慣で各臓器の老化をくい止め、機能を改善することはできる。内臓を守り、復活させる方法を肝臓の専門医に聞いた。
「あらゆる病気の出発点は肝臓にある」
そう話すのは日本肝臓学会専門医で栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅医師だ。
「肝臓は食事で得た栄養を代謝し、血液に乗せて全身の細胞に送り出すという重要な役割を担っています。また、体内に入ったアルコールや毒素を解毒して腸や腎臓を守り、消化を促す胆汁の生成によって心臓や血管の機能維持にも大きく関係している。生命維持の要とも言える臓器です」(栗原医師。以下「 」内同じ)
一方で肝臓は「沈黙の臓器」とも言われ、機能が低下しても自覚症状が出にくいことで知られる。
とくに注意すべきは中性脂肪が肝臓に蓄積する「脂肪肝」だ。
「脂肪の割合が肝細胞全体の30%を超えると脂肪肝と診断され、日本人の3人に1人、推定4000万人が脂肪肝だとされています。そしていま、世界の医療界では脂肪肝こそが糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、肝臓がんなど重大疾患のトリガーになっていると注視されているのです」
栗原医師によれば、脂肪肝の原因になるのは「脂肪」ではなく「糖」だという。
「血液中のブドウ糖は全身を巡り、細胞のエネルギーとして利用されますが、余剰分は肝臓でグリコーゲンに合成され、肝臓や筋肉内に貯蔵される。しかし多くを貯めておくことはできません。大量の糖質が入ってきた時にグリコーゲンの貯蔵庫が満杯の状態だと、糖質は肝臓で中性脂肪にされます。普段から糖質を過剰に摂取していると、ブドウ糖がどんどん中性脂肪に変換され、脂肪肝が進行してしまうのです」
脂肪肝によって糖質を代謝する機能が低下すると、糖質を摂取した時に高血糖状態になりやすくなり、糖尿病の発症につながる。
「脂肪肝を放っておくと肝臓から中性脂肪があふれ出し、血液がドロドロ状態になって血管の内壁に中性脂肪がこびりつきやすくなる。そのため動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります」
糖質の過剰摂取をいかに抑えるかが脂肪肝を遠ざける鍵となる。
「糖質制限」と聞くと厳しい節制生活を送るイメージがあるが、栗原医師は無理に我慢する必要はないと話す。
「できる範囲のことを生活習慣として続けることが大切です」
まず控えたいのが甘い飲み物だ。
「清涼飲料水やジュースなどは糖質が多く、液体なので吸収が早い。野菜や果物のジュースは濃縮還元で食物繊維が少ないものが多いので、固形のものを食べるほうがいいでしょう」
甘い缶コーヒーやエナジードリンクはさらに要注意だという。
「糖質だけでなく、カフェインも多く含まれている。カフェインが加わることで、肝臓で糖質が脂肪化される作用がより促進されやすいことがわかっています」
「脂肪肝」の5段階
使い切れずに余った糖質は肝臓で脂肪に変わる
【1】糖質を摂りすぎる
ご飯、パン、麺、甘い物などの糖質が、消化されてブドウ糖になる
【2】血糖値が上がる
インスリンの働きで血液中のブドウ糖が肝臓などへ取り込まれる
【3】肝臓に糖を貯める
まずグリコーゲンとして蓄えるが、貯蔵できる量には限界がある
【4】余った糖を脂肪へ
使い切れない糖を肝臓が中性脂肪に変える
【5】中性脂肪が蓄積
作る量が、使う・運び出す量を上回ると肝細胞に貯まり、脂肪肝になる
歯周病菌の影響
一方、肝臓に悪いと思われがちなお酒は、適量なら問題ないという。
「むしろ近年の研究では、適度な量の飲酒は脂肪肝の改善や予防につながるなどお酒が肝臓に与えるプラスの影響がわかってきています。アルコールを分解する際に肝臓内の糖が消費され、体内に蓄積した中性脂肪を減らす効果が期待できるのです。
適量には個人差がありますが、1日あたりの純アルコール量7~40gが体に良いとされており、ビールなら中瓶2本程度が40gに相当します」
酒を飲まない「休肝日」も不要だという。
「断酒する日を作ると、我慢していた反動で飲みすぎてしまいがちです。適量であれば毎日飲んでも問題ありません」
食事で糖質制限というと「米を減らす」ことに気が向きがちだが、「1~2口残す」だけでも効果があると栗原医師。
肉や揚げ物はとくに控える必要はないという。
「肉や揚げ物に多く含まれる中性脂肪は、肝臓で別の脂質に変換されるので実は脂肪肝とはほとんど関係ありません。私が推奨しているのは『オイルファースト』。脂質は血糖値を安定させ、中性脂肪の生成を抑えてくれるので、近年は食事の最初に肉類や揚げ物などの脂質を摂るほうが効果的だとされています」
食生活以外では「歯磨き」と「舌磨き」が大切だ。歯周病菌やその毒素が血液中に入ると、全身の臓器に炎症などのトラブルを引き起こすという。
「歯周病菌によって脂肪肝が進みやすくなることも報告されています。歯周病菌は就寝中に増えやすいので、起床直後と就寝前の歯磨きが大切。フロスも併用し、1日1回は舌磨きも行なって口内を清潔に保ってください」
◆教えてくれた人:日本肝臓学会専門医、栗原クリニック東京・日本橋院長・栗原毅医師
※週刊ポスト2026年9月18日号
