高齢者や介護中の食事に「カップラーメンはどうなの?」選び方や食べ方の工夫を管理栄養士が提案
高齢者の食事や介護食というと、味が薄く柔らかいものをイメージしがちだが、管理栄養士の川鍋仁美さんによると、デイサービスの利用者の中には「カップラーメンだけでお昼ご飯を済ませる」という人が少なくないという。利用者のリクエストで「カップメン・レク」を実施している介護施設も。意外とお年寄りにも人気が高いカップラーメンだが、食べるときの注意点や工夫について、川鍋さんに解説いただいた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。大学卒業後、総合病院に勤務し、介護食・嚥下食の献立作成や栄養相談に従事。現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートを行うほか、高齢者の栄養や介護食に関する記事を執筆。自身でも市販の介護食や宅配介護食を実際に試し、味や食べやすさを管理栄養士の視点で比較・検証している。介護する人もされる人も安心して食事を楽しめるよう、わかりやすく実践的な情報発信を心がけている。運営サイト「~管理栄養士がやさしく解説~いちばんやさしい介護食ガイド」(https://eiyousupport.com/)を運営。
栄養相談で話題に上る「カップラーメン」のこと
「ご自宅でのお昼は、何を食べることが多いですか?」
デイサービスの利用者さんに尋ねると、「カップラーメン」と返ってくることがあります。
高齢者の食事といえば、やわらかくて薄味で、栄養バランスの整った「介護食」を思い浮かべるかたも多いと思いかもしれません。でも実際には、カップラーメンを昼食にしている高齢者も珍しくありません。
「昼ご飯はカップラーメンでさっと済ませている」。そんな食事スタイルの背景には、日中ひとりで過ごす「日中独居」の生活スタイルが考えられます。
家族が仕事などで昼間は不在。朝のうちに食事を用意してもらっている人もいれば、自分で昼食を準備している人もいます。
調理が難しくても、お湯を注ぐだけで食べられるカップラーメンは手軽です。そして、味をしっかり感じられるカップラーメンは本人にとって「食べたいもの」であることもあります。もちろん高齢者にとって、毎日の食事で栄養バランスを整えることは大切ですが、誰だってたまにはカップラーメンを食べたくなる日もありますよね。
カップラーメンを食べるときに気をつけたいポイントや、無理なく取り入れるための工夫について、管理栄養士目線でご紹介したいと思います。
高齢者がカップラーメンを食べるときの注意ポイント
カップラーメンの特性に触れながら、高齢者が食べるときの注意ポイントを考えてみましょう。
むせ対策に「麺は短く切ってすすらない」
カップラーメンでまず気をつけたいのが、「麺をすする」という食べ方です。
年齢とともに飲み込む力が低下すると、以前は何気なくできていた「麺をすする」という動作が負担になることがあります。長い麺を勢いよくすすり、麺とスープを一緒に口の中へ入れることで、むせてしまう人もいます。「麺はやわらかいから大丈夫」とは限りません。
食べる前にキッチンばさみなどで麺を短くしておけば、長い麺をすすり込む必要がなくなり、箸やフォークで少量ずつ食べやすくなります。
ただし、麺は短くカットすれば誰でも安全に食べられるというわけではないので注意が必要です。食事中によくむせる、咳き込む、飲み込みに時間がかかるといった様子がある場合は、カップラーメンに限らず、その人の嚥下機能に合った食事になっているかを確認することが大切です。
食べる量を調整「小容量の商品も選択肢に」
カップラーメンは、商品によって食塩相当量が多いものもあります。そのため、食べる頻度や量には注意が必要です。カップラーメンには、一般的なサイズのほかに、ミニサイズなど小容量の商品もあります。そこで、「今日は食べたい」というときに、食べる量を調整する方法の一つとして、小容量の商品を選ぶこともできます。
ただし、小容量の商品は、その分エネルギーやたんぱく質なども少なくなります。商品を選ぶ際には、栄養成分表示を確認し、必要に応じてほかの食品を組み合わせることも考えましょう。
塩分が多いので「なるべくスープは全部飲まない」
カップラーメンで気になるのが、やはり塩分です。一般的なカップラーメンは、1食あたりの食塩相当量は約5g。そのうちスープに含まれる塩分は少なくありません。商品によって違いはありますが、スープを飲み干さないことは、特別な手間をかけずにできる塩分対策です。
高齢者にとっては「カップラーメンを食べない」のではなく、「麺を味わい、スープは残す」というのがおすすめです。また、商品を選ぶときには、パッケージの栄養成分表示を確認し、食塩相当量の少ないものを選ぶのも一つの方法です。
低栄養対策に「たんぱく質をちょい足し」
筋肉やエネルギーの源となるたんぱく質は、高齢者は積極的に摂ってほしい栄養素。しかしカップラーメンだけで済ませてしまうと不足しがちです。
75歳以上のたんぱく質の推奨量は、男性60g/日、女性50g/日なので、1食あたり20g程度を目指したいところ。カップラーメンの麺には卵などが使われているため、たんぱく質の量はだいたい10g前後。少し足りない分をプラス1品するのがおすすめです。
卵を1つ割り入れる、とろけるチーズをのせるのは手軽な方法です。また、コンビニなどで売っているサラダチキンはほぐしたタイプもあるので具としてトッピングするのもよいでしょう。
飲み物を牛乳やヨーグルトドリンクにしたり、デザートにヨーグルトやプリン1つをプラスしたりするのもよいでしょう。高齢者は、食事量が少なくなることで、エネルギーだけでなくたんぱく質も不足しやすくなります。「栄養バランスを完璧に整えよう!」と頑張る必要はありません。「まずはたんぱく質食品を一品プラスする」ことから意識してみるといよいでしょう。
なお、嚥下機能が低下している場合は、プラスする食品の硬さや形状にも注意しましょう。
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最近ではヘルシー志向が高まり、カップラーメン自体も進化していて、「高たんぱく」の商品も登場しています。高齢の親御さんが「カップラーメンばかり食べて心配…」という場合には、こうした商品を活用するのもいいかもしれません。
カップヌードルPRO 高たんぱく&低糖質さらに塩分控えめ/日清食品
味や食べ応えはそのままに16.8gのたんぱく質を配合(通常版は10.7g)。糖質50%オフ、塩分25%オフを実現。
エネルギー292kcal たんぱく質16.8g 307円(税込)
https://www.nissin.com/jp/product/items/12975/
BASE RAMEN(R)鶏ガラ醤油ラーメン/BASE FOOD
ビタミン&ミネラル、たんぱく質や食物繊維など33種類の栄養を摂れる。鶏ガラ醤油のコクと香りも楽しめる。みそ味もある。
エネルギー307kcal たんぱく質16.7g 443円~
https://shop.basefood.co.jp/products/deli/baseramen/torigarashoyu
野菜不足も気になるところ
カップラーメンだけでは、野菜不足も気になるところです。ねぎや青じそ、みょうがなどの薬味をのせるのは手軽ですがあまり量が摂れないので、冷凍野菜を電子レンジで温めてカップラーメンに混ぜるという方法もあります。しかしカップラーメンは手軽に食べられるのがメリットなので、あまり手をかけたくはないですよね。
カップラーメンをお昼に食べた日は、朝食や夕飯で野菜を摂るようにするなど、3食の中でバランスを取れるとよいかもしれません。
また、野菜や果物に多く含まれるカリウムには、体内の余分なナトリウムを体外に排出する働きがあるので、カップラーメンで塩分を取り過ぎたと思ったら、その日のうちに野菜や果物を摂ることを意識しましょう。
「今日はカップラーメンが食べたい」そんな気持ちも大切に
高齢者の食事を考えるとき、私たちはつい「栄養バランスのよい食事を用意しなければ」と考えます。もちろん、それも健康を維持するうえでは大切なことです。でも、食事には栄養を摂ること以外にも、大切な役割があります。
それは本人が「食べたい」と思えることです。
介護食は、「身体にいいものを食べてもらう」ことだけが目的ではありません。その人が、自分で食べたいものを選び、できるだけ安全に、おいしく食べられることも大切なことだと思います。
管理栄養士としては、カップラーメンを毎日の食事として積極的にすすめるわけではありません。ですが、高齢者の「食べたい」という気持ちを、年齢を理由に諦めずに、どうしたら安全に無理なく楽しめるかを考えながら、食べる人の気持ちに寄り添って介護食を考えていけるとよいですね。
