兄がボケました~認知症と介護と老後と「第89回 1日2回のてんかん発作」
ライターのツガエマナミコさんの兄は、50代で若年性認知症を発症してからも8年にわたりマナミコさんのサポートを受けながら自宅で暮らしてきましたが、現在は特別養護老人ホームに入所中。ショートステイ中に起きたてんかん発作がきっかけとなり、施設入所となったのです。施設でもときどき起こる発作をコントロールするためには、通院し、服薬が適量を見定めることが必要なのですが、なかなかその量が決まりません。しかも遠方にある病院への通院は兄の負担も大きく、頭を悩ますマナミコさんのなのです。
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兄の代わりに決断する難しさ
兄の施設からお電話がございました。
「てんかんの発作が今朝と昼すぎ、2回ありまして、ちょっと頻度が増えているので、また病院で診察していただいて、お薬を調整したほうがいいかなと思って……」と。
兄は3月に検査を受けて、お薬を増やし、4月まで経過をみて「血中の数値は良くなったので、これでしばらく様子をみましょう」と言われておりました。
でも、その後も月1~2回ぐらいは発作を起こしていて、施設のみなさまにはお手間をかけ続けております。いずれも10秒程度の痙攣で落ち着き、しばらくぼうっとした後は、いつも通りになるので身体への影響は少ないと思われます。でも一番心配なのは食事中に発作が起きて喉につまらせて窒息してしまうこと。発作は突然なのでスタッフさまにも予想は出来ず、兄への食事介助は必要以上に神経を使わなければなりません。最近は食事時間も長くかかるようでスタッフさまの負担が大きいのです。わたくしが介護スタッフでも、お薬でてんかん発作が治まるなら治めてほしいと思うでしょう。
というわけで、また病院を受診しなければなりません。ただ、入居前からずっと診ていただいていた病院はタクシーで片道1時間以上かかり、着いたら着いたで診察まで長い時間待たなければなりません。車イスから立ち上がることもできない兄にとって、往復計6時間もの通院はもう厳しいのではないかと思いまして、施設の看護師さまにご相談いたしました。「近場の比較的大きな病院でいいのではないか」と。すると、「否、でもここらへんの病院では専門医が週に1回しかいなかったり、検査もそれほど細かい数値が出ないと思うので、今までの病院の方がいいと思うんですよね」とのご回答。それでもわたくしが兄の体の負担を考え近場の病院を希望すると「近場の病院ではCTはあってもMRIの設備はないので、結局は元の病院に回されることになると思いますけど」とおっしゃり、それでもしぶしぶ了承してくださいました。近々、近場の病院に行くことになるでしょう。
できるだけ設備の整った病院で診ていただくほうが安心ではあります。けれど今後も発作の頻度が少し上がるたびに専門医の診察を受けお薬の調整をしなければならないのなら、このタイミングで近場の病院に変えたほうがいいと判断いたしました。
兄本人が「遠くの病院はしんどいよ」と言ったわけではありません。もしかすると兄は滅多にない長い外出を楽しんでいたかもしれません。「往復6時間はしんどい」と思っているのは、兄に付き添うわたくしの主観でございます。「兄がしんどそうだ」と思うのは、わたくしがしんどいからにほかならず、純粋に兄のことを思ってのこととは言い切ません。
確かに、この春、介護タクシーに乗って外の世界を見る兄はどことなくイキイキしているように見えました。だとしても帰る頃には車イスから落ちそうなくらい体勢が崩れ、居心地が悪そうでございましたから、やはり6時間の外出はしんどいそうに見えるのです。
兄は何も語らないので、わたくしが兄の代わりにいろいろなことを判断しなければなりません。それはとても難しいことでございます。後見人としても「本人にとって最適と思われる方法」を選ぶのが義務。大げさに言えば命を預けられております。
父が交通事故で死亡に至ったときも、母を自宅で看取ったときも、兄はもうあてにできない状態でしたから、これが初めての重積ではありませんが、「後見人」という役職がひとつ付くと、家族の感情とは別の、賢さや冷静さを持たなければいけないような気がして、父母のときよりも責任を重く感じております。
看護師さまがおっしゃるように、結局は元の病院に検査を受けに行くことになるかもしれません。でもそのときはそのとき。軌道修正しながら不器用にやっていくしかございません。兄をそれに付き合わせることになりますが、出来の悪い妹を持った運命だと思って諦めてもらいましょう。
後見人の初回報告書につきましては、先日下書きを司法書士さまにお送りしたところ、「追記、修正があります。郵送しましたのでご対応ください」というメールが届きました。しかしながら、まだ郵送は届かず、提出締め切り日まであと1週間と迫っております。
どんな追記と修正なのかもわからないのでドキドキしておりますが、「最悪は締め切り日に家庭裁判所に直接持ち込めばいいのだ」と開き直っております。
そんなこんながありまして、また施設の方に「大地震が起こったら施設ではどんな対応をするのか? 家族は何をするのがベストなのか?」をお尋ねするのを忘れてしまいました。次こそは必ず、この疑問を解消いたします!
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所
