倉田真由美さん「新しいママチャリの課題」らたまね~&らいふVol.17
漫画家でエッセイストの倉田真由美さんは、15年乗り続けたママチャリを新調した。亡き夫の叶井俊太郎さん(享年56)の晩年の通院にも使っていた思い入れのある自転車だが、転んだことがきっかけで不具合が生じあえなく手放すことに…。新たな自転車に乗り換えて1か月が経ち、実感していることがあるという。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。夫の叶井俊太郎さん(享年56)の闘病から看取りまでを綴った書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
新しい自転車のこと
15年以上乗り続けた自転車から新しい自転車に乗り換えて、もうすぐ1か月経ちます。
前の自転車は漕ぐ度にギイギイ音がしたり、そのせいか少しペダルを漕ぐ際に抵抗を感じたりしていましたが、新車はスイスイ漕げるので快適です。ライトも何故か自動で点灯するし。
でも正直なところ、前より不便になった点もあります。前の自転車は古いだけあって見た目が相当ボロかったので、ちょっとやそっと鍵をかけ忘れても盗まれる心配をしなくてすんでいました。例えば近くのスーパーに行った時、大抵鍵をつけたまま駐輪場に停めて買い物をしていました。
「いやいや、古くてボロくても盗まれるかもしれないじゃないか」といわれたらその通りなんですが、事実、一度も盗まれたことはありません。
自転車に鍵をかける、鍵を外すというワンアクション、時間にしても動きにしても大したことはないんですが、これがあるとないとではかなり違うんです。更にこれに、かけた鍵をバッグにしまったり、バッグから出したりする動作も必要になります。更に更に、服にポケットがない時は、日常使いのバッグであるリュックサックを背中から下ろしたり、ファスナーを開け閉めしたり、再び背負ったりしなくてはなりません。
しないままでいた時期が長かったため、これが結構面倒くさいんです…。
ママチャリとはいえ新品ピカピカの自転車、鍵をかけずに置いていく勇気はありません。毎回、鍵をかけ、乗る時に外します。当たり前の行動なんだけど、「不便になったなあ」と思わずにはいられません。
今の自転車が前の自転車くらい経年劣化するには、長い時間がかかります。
新しい自転車にした工夫とは?
「盗られにくくなる工夫、しようかな…」
そこで真っさらな自転車に、シールを貼ることにしました。
「いらないシール、ない?」
リビングにいた娘に尋ねました。紙製のシールは濡れると剥がれてしまうのでダメですが、紙製じゃないものであればモチーフには一切こだわりません。
「えー、いらないシール?全部いるんだけど」
渋る娘に、
「わざわざ買いたくないからさ。何でもいいから、ちょっとだけちょうだい」
とねだると、娘は渋々自室の棚の引き出しからシールの束を出してきました。これはダメ、これもダメ、と一枚ずつ確かめながら、やっと「これならいいよ」と娘がくれたのは、キラキラ光る恐竜モチーフのシールでした。どことなく見覚えがあるシールで、娘がうんと小さい頃に百円ショップで買ったものじゃないかと思います。
「ありがとう」
「余ったら返してね」
特に使う予定はなくても、娘にとってシールは大事なもののようです。
早速、シールを持って駐輪場に止めてある愛車の下へ行き、フレームにペタペタ貼っていきました。でたらめに貼るつもりが、一枚貼るとある程度の秩序が欲しくなり、秩序を作ると妙に「自分の自転車」という愛着も生まれてきました。
うん、いい感じ。
前の自転車に抱いていたような特別な愛着はまだ持てないけど、こうやって少しずつ自分のものになっていくんだろうなと感じました。
ちなみに、「油性マジックでデカデカと名前を書く」という選択はできませんでした。それをやるとかなり防犯的には威力がありそうですが…まだまだ私も、見栄を張るというか、カッコつける部分があるのだなと自分の意外な一面を知ったような気もしました。
